三日月

雨が持っていた

ぼくに足りない優しさは
雨が持っているんだ

なぜって
しとしと降りつづける
決してやむことのない涙

いつだって
通りすぎていった人たちを呼びとめる
透明な声

静かに
街の中へと降りていく
青い毛布

雨の優しさは
それと気づいた時にはもう遅い

今朝 ぼくの肩を濡らした雨は
遠い潮騒のかなたで風に変わる

小さなつむじ風になって
誰ひとり見ることのない
砂浜のアサガオを香らせる

優しさは いつだってゆっくりしてる
いつも遅れてやってくるから

見失わないように
追い抜いてしまわぬよう

この雨音に頬杖ついて
今日という日をゆっくり生きよう

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