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映画缶02「パリ・ルーブル美術館の秘密」

映画缶2本目

「パリ・ルーブル美術館の秘密」


巨大なことがとにかく面白い。
そして、そこにいちゃいけないのにルーブルの中をうろうろしている気分がたまらない。 『クローディアの秘密』みたいな感じ。夜の美術館にもぐりこんだコドモの気分になってくる。

わたしの見た限りでは、すべての言葉がひとりごとや会話の断片で、全編とおしてルーブルのなかを垣間見たり漏れ聞く感覚だった。靴音が高く響くルーブルのそこここで拾われる囁きは、膨大な展示品が見る夢からこぼれてくるようだ。

絵を掛ける作業員は、1cmのレベルで下げたり上げたりで一向に位置をきめないキュレーターに辟易してグチりあっている。 遠くから全体を見ながら指示を出すキュレーターは「あら、あの人たち萎縮してるわよ。しょうがないわ、あとから掛けなおしましょ」

わたしは、あらあら、と思いながら覗き見する。ちょっと!なんか割りとむきだしじゃないですか?

そんなシーンが、あっちこっちのポケットから零れるドロップを拾い歩くみたいに無邪気に楽しい。

「私達は一丸となり、平等に、プライドを持ち、敬意を払いあってプロデュースしているのです!」 っていう映画かと思ってたけど全然違った。そういうことは別に取りあげない、ま、問題じゃないっていうような手放し。キュレーターと職人のやりとりも、ヒエラルキー云々というよりは住む水域の違う魚のような感じ。偉そうだったりぐちったり、そんなことではお互いのプライドは傷つかないプロ同士で、どこにもみじめなひとがいない。だから生々しい言葉や態度がサラリと切り取られてもそれを興味深く覗いていられる。誰も傷つかないから怖くない。人々を丸ごと飲み込んで静まり返っているルーブル。最後に出た仕事人のポートレイトは本当にカッコよかった。

お気に入りは、美術館内の裏をローラースケートで届け物するシーン。
彫刻を整理しているシーン。
館内でピストルを撃って音響検査するカットの連続。まるで前衛映画の一部みたいだった。

「展示のやりかたはひとつじゃない。でも、我々はこれでもかというくらい展示して、客を疲れさせよう。一日でなど見られなくていい。私は、ルーブルは何度でも訪れて参照すべき偉大な書物だと思うからだ・・・」
このセリフ、ずっと覚えていたい。

※実は映画館の席で何度かうとうとしてしまったのですが、目覚めても目覚めてもわたしは美術館のどこか片隅にいて、それはそれで安らかな贅沢でした。

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