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『ブランドフューチャーフィット』と外部不経済

今日は個人的に新しく提唱したい概念について書きます。その概念とは、タイトルの通り『ブランドフューチャーフィット(Brand Future Fit)』です。略称はBFFですかね。

今回はブランドフューチャーフィットについて、どうゆうことかという点と、なぜ意識していかなければいけないのかという点を考察してみます。

※こちらいつもの通りですが、完全なる個人的な見解です。「ファイナンス編まだ?」と思っている方、すみません、途中まで出来ているのですが下書き状態です笑。もう少々お待ちを・・・

◆ブランドフューチャーフィットとは何か?

ブランドフューチャーフィットとは、「未来社会に適応したサプライチェーンの構築およびプロダクトやサービスの提供、そして生活者への当該ブランドの認知獲得および理解の促進活動」です。

もう少しシンプルに言えば、「未来にフィットしたスキーム・プロダクト・メッセージ」を作ることです。

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スキームの中には生産ラインや流通、関連企業との取引だけでなくHR領域なども含まれ、ダイバーシティ・インクルーシブネスなどの実践であったり、あらゆる面での体制構築が対象となります。また、プロダクトに関してはプロダクト自体の持つ性質や、消費のされかた、その後の循環などについても対象領域となります。そしてメッセージという部分では、その未来にフィットしたブランドについての理解を生活者からしっかりと得る事が大事で、ブランド体験やコミュニティ形成などのコミュニケーション領域も含まれます。

この大きな3領域に対して一貫して未来にフィットした姿をイメージし実行していくことが、ブランドフューチャーフィットの活動といえます。

ブランドフューチャーフィットの目的は、中長期的な社会との関係性構築、つまりステークホルダーから信頼を獲得し、経営活動をしやすくすることです。関係性構築による利点などは『経営×PRを考えてみた』も含めてご確認ください。(ファイナンス編、組織編は急ぎます・・・汗)

中長期的な関係性構築に向けて、なぜブランドフューチャーフィットに取り組むべきか、という点について次章で記載します。

◆なぜ必要か? ⇒ 外部不経済の変化

なぜ必要か、というと外部不経済の変化が影響しています。経済学を学んだ人などは聞き馴染みがあると思いますが、まずは外部不経済について簡単に説明します。

経済活動の便益や費用が取引当事者以外に及ぶことを外部性と言います。外部にプラスの影響を与えれば外部経済、マイナスの影響を与えると外部不経済となります。ものすごく簡単に例えると、家の中で電話で怒鳴ってケンカをしている分には外部性はありません(当事者間の問題です)が、これがカフェで大声でケンカをしていれば周囲の客は不快になり(他の客が迷惑を被る、カフェから客がいなくなる等)外部不経済です。(実際は全体最適に対する市場原理による非効率性や過剰供給など細かい話ではありますが)

外部不経済の例として必ずあげられるのが公害です。企業の経済活動によって公害が発生しても、自由市場における実際の取引には影響はありませんので、何もしなければ被害は拡大していきます。それに対し、この公害に対して規制や税などルールによってコントロールするようになります。市場に介入することによって、対象の経済活動が外部性も含めた最適な状態とするためです。それによって内部化が進み、外部性を抑えることができます。二酸化炭素の排出や工場廃液など、公害に関する領域でこれまでも様々な取り組みがあります。逆に外部経済となるようなものへの補助金などのプラスの介入もあります。(このあたり気になる人は内部化やピグー税・ピグー補助金などいろいろ調べてみてください)

本題に戻りますが、この外部不経済について、これまで公害など目に見えて被害がわかりやすいもの(短期的な負の影響が大きいものなど)が対象となっていたり感覚的にそう感じたりしています。この外部不経済に対する対象や感覚が、今後は遠いものや見えづらいもの、持続的なもの、中長期的なものに変化していくと考えています。

まず、対象という意味でみると、例えばSDGsであれば2030年までの目標として世界で合意のとれたアジェンダであり、日本ももちろんそれに合わせて取り組みを行っていきます。そういう意味では、それに沿った形での経済活動に変化させていくことは、これからの外部不経済を避ける意味では着手しなくてはならない経営課題といえます(着手しない場合、市場介入による負荷を受ける対象となり自由競争できなくなる。逆に着手することで介入による追い風が期待できる)。他にも、機関投資家などがESG投資を進めており、ファイナンス面であったり、他社との取引においても影響を及ぼす可能性があります。

また、感覚という意味でも、消費者・社会が、かつての公害を発生させていた企業に対して見方のように、未来にフィットしていない企業に対してマイナスイメージを持ったり、批判をしたりする可能性があります。経済活動だけでなく、PR視点でも関係性を悪化させ、中長期的な企業ブランドの棄損を生みます。

このように、短期的な目線での市場における経済効率性という観点ではなく、外部不経済という視点から中長期的な経営を見据えた際に、『ブランドフューチャーフィット』の実践が必要となるのです。

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◆どのように実践するか? ⇒ woke-washingしない

どのように実践していくと良いかを考えると、まずはとにかくウォークウォッシング(woke-washing)しないことが大前提です。ウォークウォッシングとは、社会意識のあるフリをすることです。環境意識があるフリであるグリーンウォッシングや、SDGsに取り組むフリであるSDGsウォッシングなど、そういった外面だけのアクションはNGです。ステークホルダーはすぐに見破りますし、かえって炎上などマイナスイメージになってしまうリスクもあります。

■ウォッシングとならないためには

冒頭にブランドフューチャーフィットの説明をした際の3要素、スキーム・プロダクト・メッセージのうち、メッセージやプロダクトだけを変えようとすると危険があります。例えば、「私たちは環境に配慮しています」というメッセージや、「プラスチックを使用していない〇〇」というプロダクトを対外的に発信・提供していた場合に、サプライチェーンをみてみると工場では多くのプラスチックや有毒ガスを排出していた、というケースです。これは実際に消費者に接点のあるところだけ(外面)を変更しただけで、スキーム面では対策がなされておらず、本質的に企業として取り組んでいるといえない状況のためウォッシングとみなされてしまいます。フェアトレードなどもそうですが、サプライチェーンなどに注目すると企業によって差がみえやすいです。なので、スキーム・プロダクト・メッセージの一貫性が大事で、特に消費者との直接接点のないスキームへの意識を高めることは重要です。

■スキームでの実践ポイント

サプライチェーンや組織体制、パートナー企業などを見直します。自社のラインはもちろんですが、パートナー企業についてはこれまでは取引内容のほか財務状況や反社会勢力との繋がりなどで取引先を選定することが多いと思いますが、未来にフィットしているかどうかという社会的視点で選定していくことで実践できます。例えば、原料の輸入先で子供が過酷な労働をしいられているということはないかどうか、適切な賃金が払われているかなどもそういったポイントです。

組織体制という意味では、従業員とのコミュニケーション、採用活動なども重要なチェックポイントです。女性活躍推進を掲げCMでメッセージを発信した企業が、女性幹部が一人もいないということで炎上した事例などもあります。ここではMECEに列挙することは難しいですが、体制面についてとにかく全てのことに目を向けてみる必要があります。

■プロダクトでの実践ポイント

プロダクトでの実践では、プロダクトやサービス自体が未来に沿ったものであるか、環境負荷やジェンダー、ダイバーシティ、人権などの視点で、素材やパッケージ、プロダクトデザイン、アクセシビリティなどについて見直します。また、提供後や消費後についても目を向けていく必要があります。

プロダクトデザインは効率性から統計上多いパターンに合わせて規格が創られやすいですが、それによって排除されてしまっている人が多く存在します。また、統計に限らずバイアスによっても影響を及ぼしているケースが多いです。昨年のカンヌ事例などをみても、自動車のクラッシュテストが男性基準で行われることで女性ドライバーの被害が大きくなっていた問題に着手したVOLVOの事例や、IKEAやマイクロソフトなど障がい者の人でもアクセスできるようにするものなど、まだまだ気づいていない課題というのは多く存在します。まわりを見渡しても、日傘は女性が使うモノ、工具は男性が使うモノ、などでプロダクトデザインがされていることも多いでしょうし、そもそも男性、女性のような二分で性を捉える事なども見直すべきポイントです。様々な面で、バイアスをとって考えていくことが重要です。

■メッセージでの実践ポイント

メッセージで実践する際に一番重要なのはファクトベースであることです。獲得したいイメージ先行でつくるのではなく、まずはブランドパーパスに沿ったスキームやプロダクトなどのファクトがあり、それをスタート地点として認知や理解を促進するための表現を考えていきます。

そして、メッセージを策定する際にも注意が必要で、メッセージに対しても未来にフィットしているかどうかを意識する必要があります。そのためには受け手側として顧客だけでなくあらゆるステークホルダーを想定し、つくっていくことが重要です。例えばゼクシィの「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というコピーは個人的に非常に好きなのですが、「結婚しなくても幸せになれるこの時代」という部分で結婚をしない生き方の人や仕方なくできない人などの生き方も尊重し、そのうえで後半部分で結婚をする人(ゼクシィの顧客)を応援するというもの。これが、顧客だけを見て「結婚は最高の幸せだ」なんてメッセージを出してしまえば大炎上となります。結婚をしない道を選んだ人や仕方なく出来ない人、したけども離婚した人など、様々な人の目線(=社会の声)を受け取ったうえで、メッセージを作っていくことが重要です。

さらに、メッセージという部分ではコミュニティ形成まで含みます。発信して終わりではなく、しっかりとコミュニケーションを深めていくことで、より理解を促進することができ、未来にフィットしたブランドとして良好な関係を構築できます。

◆相談募集!気軽にお声がけください

今回のテーマである『ブランドフューチャーフィット』について、もし興味のあるかた(事業会社の経営者や事業開発担当者、広報担当者などなど関連しそうな方々)は、ぜひトライアルで一緒に実践してみませんか??個人的にもBFFを意識したスキーム・プロダクト・メッセージの開発を実践して事例をつくりたく、ご一緒できる企業さんがいましたらぜひ!(TwitterのDMでもFBでもコメント欄でも、何かしらでお声がけ頂ければと・・・)

まだまだ体系化されていない概念ですので、今後も個人的には考察を深めていきたいと思います。

※きむかずTwitterはこちら:https://twitter.com/kimkaz_


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