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情弱ウォッチャー、スーパーの展示スペースを眺め続ける

人間観察をライフワークとしている私にとって、不特定多数の人が集まる場所は格好の観察場所だ。

世間で情報弱者が集う場所の筆頭はスーパーマーケットだろう。仕事終わりの19時から20時あたりに行く近所のスーパーで割引シールの貼られたお惣菜や弁当、刺身や寿司パックに群がってどれがいいかを真剣っぽく品定めして撮っていく姿を見るのは、日本社会の縮図を見ているようで面白い。

20%のシールが貼られたお弁当を、周りに店員がいないかキョロキョロと眺めているオバさん。安心しなさい。その20%シールはつい数分前に店員が貼ったばかりだから、30%とか半額シールが貼られるのは30分は先の話だ。

近所のスーパーは「火曜市」と題して火曜日が特売日なのだが、火曜日にいくと他の曜日よりもレジの行列が長くて「うわ、今日は火曜日か、しまった」と、火曜日とわかっていたらほかのスーパーに行っていたのにというプチ後悔をする。

そんな情報弱者が集まる近所のスーパーの一角に定期的にテナントが入れ替わる即売スペースがある。20畳ほどのスペースで、私が知る限りでいろんな商品やサービスの即売会や説明会が行われてきた。単発ではなく1〜2ヶ月単位で開かれるのでちょっとして支店ができるイメージだ。

思い出す限りだと、NTTドコモのサテライトショップ的なものあった。携帯ショップを訪れるお客のほとんどはネットでの手続きが苦手なITリテラシーの低い人たち。若い店員2〜3人がスーパーに来ているお客さんにバンバン声をかけて、プランや機種変更を促しているだろう。一時期と比べてましになったけど、携帯プランをショップ店員からちゃんと聞こうものなら大概の人が思考停止になって「まぁ、それでいいかな」と契約してしまう。

携帯ショップは7〜8年ほどは行っていない。端末はネットで買うし、プランもahamoが出た瞬間に変更してそれからずっとだから、スーパーの臨時ドコモショップに吸い込まれていくおじいちゃん・おばあちゃんを見るたびに「ahamoにすればいいのに」と思うけど、もっと高いプランとかをなんだかんだで契約しちゃってるのかなと思うと、なんだかやるせない気持ちになって、地下1階のスーパーから1階に上がるエレベーターに乗り込む。

ドコモショップがなくなってからしばらくして誕生したのがリユースパソコンの即売会場だ。官公庁から払い下げた型落ちのノートパソコンを格安で販売していた。値段は1万円台から4万円台まで、13インチから15インチのディスプレイで販売されているのでお得感があるように見える。

家電量販店でパソコンを買おうものなら10万円以上はするし、新品パソコンならそれなりの機能を積んでいる。がしかし、スーパー即売会で売られている中古パソコンのスペックはまぁひどい。HDDからSSDに交換はされていたが、CPUやOS3世代前ですか的ものばかり、当然ながらマイクロソフトのofficeは入ってなくて、それっぽい感じのオフィスっぽいソフトが入っていた。

このスペックなら確かに適正価格かもしれないけど、果たしてこれが情弱高齢者、IT弱者に売ってもいいパソコンなのだろうか?実機を試しながら若い店員の説明を受けているおっさんを横目にしながら、何ともやるせない気持ちになって地下1階のスーパーから1階に上がるエレベーターにきょうも乗り込む。

またしばらくデッドスペースの状態が続き、現在は高齢者向けの電位温熱治療器が売られている。展示スペースに10台ほどのマッサージチェアが並び、チェアの座る部分に温熱シートが敷かれ、治療器のつまみを回せば強弱がコントロールできるという代物だ。

無料体験できるとあって、連日高齢者が座って効くの効かないのかわからん治療器を有り難がって座っている。ちなみにネットで値段を調べたところ、1台50万円前後。お、これは簡単に手が出る代物じゃないぞ。

がしかし、この治療器の販売員が曲者なのだ。27歳男、東京出身。スポーツ歴、野球5年、バスケ20年。家族、父と母と姉。好きなもの、父が作るピーマンの肉詰め。「出会った方を健康、笑顔にしたいです!」

なんで私がこんなパーソナルな情報を知っているのか、取材したのか。んなわけない。展示スペースにデカデカと書かれているんだよ。そして「○○ちゃんと呼んでください」と。あれ、この売り方って完全に東京から来て頑張ってる若者を自分の息子的なポジション的に位置に据えようとしているやん。

自己紹介につづいて、こんなメッセージが貼り紙で貼られていた。

僕が入社したきっかけは家族です。小学六年生の時に母がケガで動けなくなり、家の中が変わりました。家族の会話も減り、家の中がギスギスし出して、、、、、家なのに居心地が悪くなり、とても悲しくてつらい気持ちになったことが今でも忘れられません。。。。

「健康で元気が何よりも大事!」という思いから健康産業を希望し、新卒で入社しました。1万人以上のお客様と出会い、たくさんの方が笑顔で健康になる姿を見てきました。それが何よりもやり甲斐で、何よりも嬉しいです!

1人でも多くの方にこんな治療があるんだ!と●●という治療器を知ってほしいです。

情弱展示スペースに貼られてお涙ちょうだい貼り紙より

これが本当かウソかどうかはさておき、こんなパーソナルベースがあるので、セールストークに特におばあちゃんが「うんうんなるほど」とうなずきを示しているのだ。しかも、貼り紙には「毎日でも来てくれて大丈夫です!」という心優しい貼り紙も。もうここは9月いっぱいはおばあちゃんたちのユートピアになってしまっているようだ。

販売員は今月末の閉店までにどんなクローズセールスを展開するのだろうさすがに何台売れましたか?と聞く勇気はないので結末は分からないが、10月以降にどんな情弱展示ブースが展開されるのか、秋の気配が感じられるころにまた報告ができるだろう。ぜひ楽しみにしていただきたい。






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