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前髪を伸ばすのは決してあなたのためではなくて、

 オタクをすることに疲れた。

「嫌だ!嫌だ!もう嫌だ!」と思うのが、あなたではないことが嫌だ。わがまま。

 本人が原因なら良かった。本当に。それって本人の過失であって、それを見た私の過失でもあって、しょうがないよねと思うから。

でも、まあ、これって私が悪いのか。全部手に入れたい、全部見たいと思う私のせいか。


 9月。
チケットの当落が何件あるのか、それに伴った決済はいくらになるのか、特典の音源を聴くためにゲームの高いボックスを買って、来年のイベント楽しみと思ってCD受け取って、久しぶりのイベントがあって、だから物販もあって、遠征したくて遠征して、次の遠征のこと考えて、急に月末イベント決まって一週間で申し込めって、ランキング5位ね、IDつけて売ったらそりゃ売れるよ、イベントを申し込むのを渋って、まだあと何件申し込んでないっけ、先行上映会ね、わかりましたよ。



 ねえ、全部見たいよ。でも、それだけじゃ無理。私は私にだってお金を使いたい。オタクだって私にお金を使っているけど、そういうことじゃない。私は私のすべてを犠牲にしきれない。


 イベント先行抽選ID付きCDも、アニメの先行上映会も、なんかよくわからない急なイベントも、シークレットゲストも全部疲れた。全部全部疲れた。心が折れる。これは本人のせいじゃない。


 企業は利益を出さなきゃいけない。痛いほどわかる。でも、ちょっとやりすぎじゃないかと思うこともある。足元見られてるなって。コイツが出れば来ると思われてるのか、呼んだら出てくれるのかはわからない。でも、売り方は関係ない。ランダムもそうだし、IDもそう。一人がほしいのに、本当は一枚でいいのに。どうして、どうしたら、手に入るのか。


 思えば、あの日のシークレットゲスト2連チャンから心が折れかけていた。隠す必要あったのかって。あるんだと思うけど。もうずっとずっと疲れていたのかもしれない。


 それでも、好きだ。いや、好きじゃない。気が迷っている。気の迷い。気はおかしくなっている。顔はかっこいい。相変わらず、イベント後の肌と体の調子は良い。


 
 だけど、いよいよ、あなたの言う「ご無理のない範囲で」を超えた。お金はずっと超えてた。でも、心が超えた。


こんな時に前髪を伸ばし始めちゃった。髪型なんてどうでもいいって言ってたけど、前髪のない生え際が好きな話、覚えてるよ。伸びかけの前髪を見て、あなたを思い出すくらいには嫌いじゃないんだ。だから、興味を失うなら、外的要因じゃなくて、あなたがいい。その時は、前髪を切りながら、思い出すから。


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