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奢侈品と必需品

眉間に皺を寄せて天井を見上げているおじいさん。下向き加減にスマホを凝視しているスーツ姿の男性。ただぼーっと真っ直ぐに何かを見つめている眼鏡をかけた女性。

区役所の待合の一コマ。

30人ほどの待ちだっただろうか。吾輩も御多分に洩れず、Twitterを見たり、妻猫にLINEを送ったり。人混みから離れたところで、吾輩の受付番号64が早く呼ばれないかと聞き耳を立てている。

遡ること5時間前。

本を大事そうに抱え、やわらかい表情の老若男女。

とある大型書店のレジ待ちの一コマ。

10人ほどの待ちだっただろうか。息子猫が気まぐれに選んだ12冊の本。右手にカゴを持ちつつ、左隣にいる息子猫が本の説明をしてくれている。待っている感覚はなく、あっという間に順番が来た。
余談だが、言葉の種類はそんなに多くなくても良いのかもしれない。息子猫の説明はシンプルで、それゆえに十分に伝わった。

話を区役所に戻す。

「64番のお客さま、64番のお客さま」。40分ほど待ったかもしれない。周囲の羨ましい視線に申し訳なさを感じつつ、やるべき事を終わらせ、そそくさと区役所を出た。

帰り道。本屋と区役所の待ちの違いは何だろう?と、ふと頭によぎる。本は奢侈品で、書類は必需品。奢侈品は好みで買うものだから、ワクワクする。必需品は買わなければいけないものだから、気持ちが乗らない。ちょっと乱暴な分け方だが、フレンドフーズのレジ待ちはどうなのだろう? と、頭の中で話が広がっていく。

 食品を扱っている以上、多くの商品が必需品。であれば、レジ待ちのお客さまは皆、不機嫌な顔をしているのだろうか。どうやら、そうでもなさそう。たまに、お客さまとスタッフの立ち話を耳にする。「麻婆豆腐に合う豆腐はどれがいい?」など、必需品に関する質問に対して、スタッフが嬉しそうに答えている。商品を仕入れた理由を言いたくて仕方がないのだろうか。答えの中に、スタッフのこだわりが見え隠れしている。

吾輩は、フレンドフーズ以外のスーパーにも、もちろん行く。では、フレンドフーズで買い物をするときはどういうときだろう? 改めて振り返ると、妻猫や息子猫が食べるものを買って帰ることが多い。こだわりが加わると、必需品も奢侈品に化けるのかもしれない。もちろん買って帰るものすべてが、妻猫や息子猫の好みに合うわけではないが、買い物中はワクワクしている気がする。「そうか、こだわりが感じられるものはすべて、奢侈品になるのかもしれない」。結論が出たところで家に着いた。

手を洗い、ちょっと休憩しようと横になると、息子猫が本を持ってやってきた。読んで欲しいのかなと思い、タイトルを見ると「SDGsほにゃらら」。「SDGsってどこで知ったん?」と聞くと、「学校で」と言う。知らない間に、子どもは大きくなっていくんだなとしみじみ。今度はちょっと大人っぽい食べ物でも買って帰ってみようかなと思いつつ、本を読んでいる途中で寝落ちしてしまった。

p.s. こだわりのない必需品ってココロは踊らないかもしれないけれど、本来とても有難いもの。余裕のないときは忘れがちになるけど、なるべく意識していたいと思う。
(※奢侈品、必需品の捉え方が間違っていたら、大目に見てくだされ…。ニュアンスが伝われば、うれしいです)

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