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VTuber「リア」に見出したバーチャルユーチューバー像

序文

 9月27日(日)の夜、YouTubeの配信上でVTuberのライブが行われていた。
 VTuber「リア」の2周年記念ソロライブ。クラウドファンディングで目標額50万の四倍近い金額を集め、デフォルトの姿に加え「白」と「黒」のヴァージョンの3Dモデルを加えて彼女はライブに臨んだ。

 僕自身も少額ながらクラウドファンディングに参加。当日はリアタイで終始ライブを見せてもらった。
 VTuber界の大小どの「箱」にも属さないVTuberとしては今まで積極的に3D配信を行っているリアだが、今回は過去に比して滞りないモーションでライブを敢行した。それがなにより感動だった。
 クラウドファンディングの特典でライブのDVDも届くので、曲の視聴も含めてまた見返したいと思う。

 で、ここから下は僕の中の話。

VTuber界隈に、ふと感じる疑問

 VTuber界は、数年前に比べて非常に大きくなった。多くのチャンネル登録数を集めて注目を浴びた「VTuber四天王」含めた伝説のVTuberたちの勢いも昔の話とばかりに、初配信時点で登録数20~30万を集めるVTuberも続出し、さらにはキズナアイと輝夜月が達成した100万に、二人よりも早い期間に手が届こうとしている者もいるほどだ。

 しかしそのほとんどは、メインの活動を3Dのフルトラッキングではなく、Live2Dで行っている。
 バーチャルというより、むしろ動く絵に声を当てる「アニメーション」の形式に一機軸を加えたスタイルは、3Dよりも少ない機材で運用できることもあって、在宅勤務が推奨されるこのご時世においてはスタジオに赴くことなく活動できる利点が見いだされて一気にVTuber界のメインストリームとなり、ビジネスで大成功をおさめている。

 実際魅力的だし、僕もそれを楽しんで見ている。
 しかしふと思う時がある。

「これは本当に、僕が当初思い描いていた『バーチャルユーチューバー』なんだろうか?」

リアが他のVTuberと違うところ

 リアの動画や配信を見た人はお気づきだろうが、彼女の声は人の肉声ではない。歌声もまた人の声ではない。あえて名言は避けるが、人工音声のソフトを駆使して、演者の話す言葉を変換して生配信に対応させている。
 そして3Dフルトラッキングによる配信も週イチペースで積極的に行っている。

 「魂」となっている演者の人間味を極限までこそぎ落としたスタイル。本当に「リア」がそこにいると感じ取れてしまう。

 同じような配信をしている先駆のVTuberとしては「のらきゃっと」がいるが、それに続こうとするVTuberは自分が見る限りではあまり見ない。音楽系VTuberの「ミディ」がわりとこの系統に近かったが、喋りこそ人工音声だったが歌声は人の肉声だったし、人工音声変換がストレスに感じてついぞ前に肉声で話すようになった。あと自分が知りうる限りでもう一人、「チャンネル登録者の数だけポリゴン数が増えていくVtuber」もいるのだが、開発途上感が否めないうえに最近すっかり進捗動画もあがらなくなった……。

 だが視聴者は未来の技術や可能性よりも人の肉声を求めているのだろうか。先駆者のらきゃっとのチャンネル登録数はこの記事を書いている9月29日現在で8万人台、リアに至っては1.5万人程度。決して閑古鳥というわけではなく、配信や動画はたくさんのコメントで盛り上がっているが、なかなか知名度に結びつかない現状がある。

VTuber「リア」に見出した未来のバーチャルユーチューバー像

 それでも僕は「電子の妖精」リアの活動の向こうに、先進的なVTuber像を見いだせずにいられない。
 極端なことを言うが、肉声をあてた動くイラストは、バーチャル=仮想現実のイメージにすら程遠い、単に仮面を被った配信者だ
 しかしリアは違う。実際は裏で人が操っているには違いないが、その気配はすっかり削ぎ落とされ、確かにそこにリアそのものがいるように感じる。それこそ仮想現実に近い存在だといえる、と断じるのは言い過ぎだろうか?

 さらに彼女は仮想現実の存在ながら、その中で積極的に活動して視聴者に働きかける。活動開始初期は視聴者一人ひとりに甲斐甲斐しく声をかけ、視聴者が多くなると、一人一人の声掛けが難しくなったかわりにオリジナリティ溢れるグッズ展開や創意工夫をこらした配信イベントを行って、さも本人が現実に存在するような演出を行っている。……これはメインストリームのLive2D配信者ですらやれていないことだ。

 今のような演出も、視聴者が多くなるにつれ難しくなってしまうのかもしれない。
 しかしそれでも現時点で彼女はバーチャルアイドルとしてしっかり一つの道を指し示しているように思える。それはメインストリームの進むベクトルに逸れているのかもしれないけども、本来「バーチャル」の言葉でイメージできるVTuberの姿だと思う。

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