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写真と民俗【遠野物語】

※この記事は約7分で読めます

どうもメダカです
初めましての方は初めまして
2019年9月から写真で始めて4年目になります。
今回は妖怪の里こと岩手県・遠野市に行って来ました。


妖怪の里 遠野

遠野って知ってますか?
岩手県遠野市は佐々木喜善から聞いた話を柳田國男がまとめた、妖怪が沢山出て来る遠野物語の舞台で多くの妖怪が遠野に棲むとされ、妖怪の里と呼ばれています。

※柳田 國男(やなぎたくにお) 日本民俗学の開拓者で遠野物語の著者
※佐々木 喜善(ささき きぜん) 遠野出身の日本の民俗学者、作家、文学者

遠野の森
人間に興味深々な妖怪が
覗いてそうな雰囲気がありますね

遠野物語と遠野物語拾遺

【遠野物語】は、二種類有ります。
最初の【遠野物語】は佐々木喜善が語った事を柳田國男が文章化したもの。

【遠野物語拾遺】は、佐々木が柳田に書き送った原稿を、鈴木棠三が文章化したもの。

ここで注意が必要なのですが、遠野物語は遠野の逸話や伝承などを記した説話集で、
全ての話に妖怪が出てくるわけでは有りません。

※鈴木 棠三(すずきとうぞう)  日本の国文学者・国語学者で柳田國男の弟子

新版 遠野物語がオススメです
角川ソフィア文庫

5つのおすすめ

遠野に行って特にオススメだった5ヶ所を紹介します。

遠野市立博物館

小さいけど素敵な博物館です

ここはマストですね。
遠野の歴史から遠野物語に関する貴重な資料などが観れます。
まずはここに行きましょう。

令和5年度夏季特別展【遠野物語と呪術】
令和5年7月21日~9月24日まで開催中です。
博物館のメインはミュージアムショップ

おしら様(伝承園)


おしら様物語のイメージ写真

ある農家に娘がおり、家の飼い馬と仲が良く、ついには夫婦になってしまった。
娘の父親は怒り、馬を殺して木に吊り下げた。
娘は馬の死を知り、すがりついて泣いた。
すると父はさらに怒り、馬の首をはねた。
すかさず娘が馬の首に飛び乗ると、そのまま空へ昇り、おしら様となったのだという。
(遠野物語69話)

この話は【馬娘婚姻譚】という中国の民話がルーツとされています。
おしら様は蚕の神、農業の神、馬の神、女性の神とされています。
農馬と娘のお話なので三つはわかりますが、なぜ蚕の神なのかは謎ですよね?
それはおしら様は漢字で書くと御白様とも書くらしく、岩手は養蚕が盛んだった為、
イメージが結びつけられたと言われています。
(諸説あり)

※おしら様人形は伝承園と遠野市立博物館で観れます。
※おしら様(おしらさま) 東北地方で信仰されている家の神様

令和5年8月10日・追記
他の本で調べたところ、父親が馬を殺して吊り下げた木が桑の木であり、桑の葉は蚕を育てる時に餌として与える事から、おしら様が蚕の神としても祀られたようです。
またおしら様人形は桑の木で作られます

絵馬秘史 (NHKブックス) 幻の花嫁 6章絵馬の祖型は 142Pより

おしら様人形 
お祈りすると願い事が叶うと言われいますが
ぶっちゃけ呪術人形にしか見えませんでした
遠野博物館に展示されてる
蚕の綿で包まれたおしら様の頭
だから怖いって…

カッパ淵

カッパ淵

川に馬を洗いに連れていったとき、目を放した隙に、河童が出てきて馬を淵へ引き込もうとした。
馬は引き込まれまいと必死になって逃げた。
河童は馬の尻尾を離さなかったので厩まで引きずってこられ、
落ちてきたかいば桶の中に閉じ込められてしまった。
村人に捕まった河童は、「もう二度と悪さはしない」といって神妙に謝ったので、村人は可哀想になって河童を放してやった。
(遠野物語58話)

遠野物語でも特に有名なカッパのお話。
イタズラ好きのカッパとカッパを許す村人のおおらかさが上手く表現されていますね。

遠野の河童は赤色?
遠野の河童は相撲好きとか、きゅうり好きといった点では他の地方の河童と同じですが、
顔の色は緑色ではなく赤色です。
これには諸説ありますが、貧乏で赤子を育てられないので川に投げ込んだなごりだとも言われています。
河の童と書いてカッパ、名前の由来を考えると悲しい感じがしますね。

カッパを釣ると1000万円の賞金が出るらしく
一攫千金を夢見る若者達がカッパを釣り上げようと必死でした。

続石と泣石


続石
絶妙なバランスで乗っています

昔武蔵坊弁慶が仕事をするために、大岩を持って来て、泣石という別の大岩の上に乗せた。
そうするとその泣石が、「おれは位の高い石であるのに、一生他の大石の下になるのは残念だ」といって一夜じゅう泣き明かした。
弁慶はそれなら他の石を台にしようと、再びその石を持ち上げて、今の石の上に置きました。
泣石という名もその時から付き、今でも涙のように雫を垂らして続石の脇に立っています。
(遠野物語拾遺11話)

他にも遠野物語にはある男がこの続石のある山に登っていると、二人の男女が現れ道を塞いでいたので、男は刀を抜いたところ急に気を失い、
そのまま病にかかり死んでしまったという話も有ります。
この二人の男女は山の神でみだりに刀を抜いた男は山の神の怒りを買い、死んでしまったと言われています。

注意しないと通り過ぎてしまう、小さな駐車場に車を止めて、
そこから徒歩で15分程山を登ると泣石と続石が現れます。
熊が出るので注意が必要です。
僕はスマホから落語を流しながら山登りしました。

泣石
泣いてるようには見えませんでした

卯子酉様

遠野の町の愛宕山の下に、卯子酉様の祠がある。その傍の小池には片葉の蘆が生ずる。
昔はここが大きな淵であった、その淵の主に願をかけると、不思議に男女の縁が結ばれた。

また信心の者には、時々淵の主が姿を見せたともいっている。
(遠野物語拾遺35話)

卯子酉様(うねどりさま)と読みます。
卯子酉神社・卯子酉大明神とも呼ばれ、左手だけで神社の木に結ぶことができれば、恋人と結ばれると言われています。

恋愛成就のおまじないだけど…
見た目が完全にホラー🥶

無限に存在する遠野物語ゆかりの地

他にもいろいろ回ったので、どのお話に出て来るか探してみてください。
これから読まれる方は参考イメージにどうぞ

早池峰神社
荒川駒形神社
山口の水車
デンデラ野
とおの物語の館
柳田國男記念館
とおの物語の館と同じ敷地
白幡神社
六角牛神社
マヨイガ橋を渡り
森を抜けた先には・・・
ここは必ず行ってください
雨風祭りの藁人形
おしら様の馬を思わせる白馬
会下の十王堂
お堂に飾られた謎の面
岩手はジンギスカンが名物らしいです

まとめ・なぜ妖怪伝説は日本各地にあるのか?

カッパ伝説って日本各地に有りますよね。
昔から水難事故が多い川にはカッパ伝説があると言われいます。
これは川の近くに居た者がカッパに足を引っ張られて尻子玉を抜かれたとされていますが、
実際は妖怪の噂を子供に聞かせて、危険な川に子供を近寄らせない為に作られたお話とも言われています。
確かに「あそこは危ないから行っちゃダメ!」と言われるより、
「あそこには怖い妖怪出て拐われるぞ!」と脅かした方が子供には効果が有りますよね。
実際に妖怪が出ると言われる場所は危険な場所が多いです。
雪女なんか言わずもがな、冬の雪山は死と常に隣合わせの環境ですので、
みだりに山に近づくなというメッセージとも受け取れます。

遠野を車で走って感じましたが、遠野にはとても多くの川が流れています。
治水工事もあまりできておらず、今の時代より自然の力を上手くコントロール出来ない時代の東北では山々に囲まれ冬になると大雪が降り、
春の雪解け水によって流れが速くなった川は、非常に危険な存在だった事は間違いないでしょう。
そういった危険から身を守る為の番人として妖怪が利用されることはごく自然のとも考えられますよね。

現地に行くからこそ
見えてくることもありますね

こういった妖怪や鬼を使ったプロパガンダは結構よく有り、
鬼退治をする武士の伝説なんかはまさに武士のイメージアップの為に鬼が政治利用されています。

【ずんだもん】解説!鬼の歴史を教えるのだ!【妖怪/解説】

あなたの棲む地域には妖怪伝説は有りますか?
妖怪伝説と地域の特徴を調べてみると意外な接点が見つかるかもしれませんね。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
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参考文献

新版 遠野物語/角川ソフィア文庫
全訳 遠野物語/無明舎出版

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