フラグメンツ #61~70
#61
意味と無意味のあいだを
猛スピードで往復する振り子
チャンスは一回だけ
目を閉じて一発で撃ち抜け
真実はそこにある
#62
あんた気に入らない
ケータイの番号教えてやんない
待ち合わせなんかしない
偶然会ってもビックリなんかしない
手なんかつないでやんない
つまらない話に笑ったりしない
飲みになんか行かない
とりあえずビールしか飲まない
生中5杯で酔ったりしない
カラオケなんか行かない
行っても歌なんか歌わない
肩抱かれても動揺しない
唇が近づいても目をつぶらない
お時間10分前でも延長しない
ちっとも楽しくなんかない
でも帰らない
#63
ひらめきの向こう側に
ゆらゆらと飛び退る
からだごと弾け散り
にやにやと眺めてる
#64
お茶の時間になって
ぬるい紅茶と湿気たクッキーが
テーブルの上に無造作に出された
誰一人として
カップに手を伸ばそうとはしない
クッキーはどんどん湿気を帯びて
眠い午後が過ぎてゆく
#65
たぶん
わたしは
狂っている
狂っているから
こんなに
クリアなのだ
クリアだから
狂っていることが
よくわかる
なにがよくわかるかというと
わたしが狂っているということが
すごくよくわかるのだ
それぐらいクリアなのだ
なにもかもすべてがクリアだ
それほどまでに狂っているのだ
#66
きのう
真夜中に屋上で吹いた口笛
聴こえたでしょう
風がないのに
煙草の煙がゆらりとなびいたのは
口笛聴こえた合図でしょう
#67
ズボンズボンズボン
そして
パンツパンツパンツ
ふたたび
ズボンズボンズボン
なぜか
スラックススラックススラックス
かとおもえば
タイツタイツタイツ
でも
パンタロンパンタロンパンタロン
やっぱり
ズボンズボンズボン
#68
朝日には
希臘彫刻がよく似合うように
夕日には
神社の狛犬がよく似合う
#69
どこの誰だかわからない人から
うすきみわるいメールが届くんだ
うっかり開いて読んでしまって
レストランで隣に座った赤の他人に
突然口の中で咀嚼したものを
見せ付けられたような気分になって
ぞっとした
#70
真っ暗な宇宙を走る流線型
亡者の星横切って
灼熱の太陽をかわしつつ
鮮やかな軌跡を描きながら
宇宙の終わるところを
ただひたすらに目指して
ああ
コロッケが食いたい
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