ＪＷ６６３　国見をしよう

【景行征西編】エピソード34　国見をしよう

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦82年、皇紀こうき742年（景行天皇12）12月。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）の一行は、熊襲くまそを平定するため、襲国そのくに（今の鹿児島県）を訪おとずれていた。

地図（襲国）

筑紫行幸参加者名簿

ここは、鹿児島県の高屋宮たかや・のみや。

肝付町きもつきちょう北方きたかたの天子山てんしやま。　

地図（天子山：高屋宮）

えっさん「して、残党ざんとう狩がりは、順調にあらしゃいますか？」　

シロ「うむ。そうであろうな。」　

えっさん「そうであろう？　曖昧あいまいな物もの言いいにあらしゃいますなぁ。」　

シロ「詳つまびらかな伝承が無いのじゃ。仕方しかたあるまい。」　

おやた「ところで、大王おおきみ？　平定なされた地を眺ながめては、如何いかがにござりまするか？」　

シロ「ん？」　

百足ももたり「そのような伝承が有るのでござる。」　

シロ「そういうことなら、仕方しかたないのう。」　

野見のみ「して、どちらの山に行かれまするか？」　

シロ「山？」　

ワオン「平定した地を眺ながめる・・・すなわち、国見くにみするということは、山に登ることにござる。」　

シロ「では、伝承に従したがいて、叶岳かのうだけに登ろうぞ。」　

小左おひだり「こうして、大王おおきみは国見くにみをしたのでござる。」　

夏花なつはな「ちなみに、叶岳かのうだけという名も、つつがなく熊襲くまそを討うつことができたゆえ、願いが叶った・・・ということで名付けられたものにござりまする。」　

シロ「それでは、平定後の話になるではないか！？」　

夏花なつはな「まあ、そうなってしまいまするが・・・。」　

たっちゃん「して、それまでの山の名は？」　

夏花なつはな「それについては、何なにも書かれておりませぬゆえ、名が無かったのではないかと・・・。」　

ウナ「とにかく、山には、叶嶽かのうだけ神社じんじゃが建ちましたぞ。」　

叶嶽神社（鳥居と拝殿）

たっちゃん「社やしろが建ったのか？」　

ウナ「左様さよう。祭神さいじんは、大王おおきみにござりまするぞ。」　

シロ「我われを祀まつる社やしろか・・・。」　

モロキ「ちなみに、二千年後の地名で申もうしますと、鹿児島県肝付町きもつきちょうの南方みなみかたにござりまする。」　

地図（叶嶽神社）

するとそこに、一人の男がやって来た。

先に言っておこう。

三輪みわの君きみの大友主おおともぬし（以下、オート）である。　

系図（三輪氏：オート）

オート「大王おおきみ！　皆様方みなさまがた！　お久しゅうございます。エピソード610以来の登場にございます。」　

シロ「どうしたのじゃ？　汝なれが伝承に出てくるなど、聞いておらぬぞ？」　

オート「作者のオリジナル設定です。」　

舟木ふなき「おいじなう？」　

シロ「もしや、国中くんなか（今の奈良盆地）にて、何なにかあったのか？」　

オート「あったと言えば、ありましたし、無かったと言えば、無かったと申もうしますか・・・。」　

影媛かげひめ「悪いことでは、なさそうですね。」　

シロ「詳くわしく申もうせ。」　

オート「はい。実じつは、大王おおきみの兄君あにぎみ、五十瓊敷入彦いにしきいりひここと『ニッシー』様より、言伝ことづてがございまして・・・。」　

系図（ニッシー）

シロ「言伝ことづて？」　

オート「『ニッシー』様は、妃きさきを迎むかえたいとの由よし。」　

シロ「おお！　ついに、兄上も、妃を迎え入れる気になったか！」　

カヤ「どういうことですか？」　

シロ「兄上は、丈夫ますらおの道みちを歩あゆむと申もうして、妃を迎えようとはなされなかったのじゃ。」　

カヤ「丈夫ますらおの道みち？　それと妃きさきに、何なんの関かかわりが？」　

シロ「いつ、戦場いくさばで散ちっても良いようにと申もうされてな・・・。」　

カヤ「は？」　

ヤヌシ「『ニッシー』様は、自分が討死うちじにして、家族が路頭ろとうに迷まようことがあってはいけないと、考えていたなり！」　

カヤ「か・・・考えすぎでは？」　

いっくん「そもそも、作者の妄想やないですか！」　

カヤ「えっ？」　

シロ「まあ、良いではないか。」　

もち「じゃっどん、妃を『迎えた』ではなく、『迎えたい』とは、どういうことっちゃ？」　

シロ「言われてみると、そうじゃのう。」　

オート「実じつは、言伝ことづてには、つづきがありまして・・・。」　

シロ「うむ。聞かせよ。」　

オート「願わくば、大王おおきみと『やぁちゃん』様の許ゆるしをいただきたいと・・・。」　

シロ「ん？　我われと『やぁちゃん』？　許ゆるし？」　

やぁちゃん「私の許ゆるしも要いるのですか？」　

オート「『ニッシー』様が、妃に迎えたい御仁ごじんは、大王おおきみと『やぁちゃん』様の皇女ひめみこ、渟熨斗ぬのしこと『ヌーノ』様なのです。」　

系図（ヌーノ）

一同「ええぇぇ！！」×２０　

リトル「うぎゃう！　うぎゃう！」　

タケ「ふむふむ・・・。伯父おじさんが、兄にいさんになる、不思議・・・と申もうしておるぞ。」　

シロ「あ・・・兄上が、御所望ごしょもうなら、致いたし方かたあるまい。我われに異存いぞんはない。『やぁちゃん』は、どうじゃ？」　

やぁちゃん「大王おおきみに異存いぞんがないのです。私が、肯がえんじえぬ理ことわりがありましょうか。」　

オート「おお！　御二方おふたがたとも、かたじけのうございます。」　

こうして、一組の夫婦が誕生したのであった。

つづく