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JW85 そして父になる

【綏靖天皇編】エピソード13 そして父になる


紀元前578年、皇紀83年(綏靖天皇4)4月、神八井耳命(かんやいみみ・のみこと)(以下、カンヤ)が死去した。

皇族や大臣の死を薨去(こうきょ)ともいう。

ここで、三人の家来が解説を始めた。

一人目は、椎根津彦(しいねつひこ)の孫で、志麻津見(しまつみ)の息子、大倭武速持(やまと・の・たけはやもち)(以下、モチ)。

次に、弟磯城(おとしき)の孫で、葉江(はえ)の息子、磯城太真稚彦(しき・の・ふとまわかひこ)(以下、フトマ)。

そして、剣根(つるぎね)の孫で、夜麻都俾(やまとべ)の息子、葛城久多美(かずらき・の・くたみ)(以下、クタ)の三名である。

家来たちの家系図

モチ「カンヤ様の御遺体は、畝傍山の北に葬られたと記録されちょるんやに。」

フトマ「しかし、二千年後は行方不明なんですよね?」

ここで、大王(おおきみ)の綏靖天皇(すいぜいてんのう)こと神渟名川耳尊(かんぬなかわみみ・のみこと)(以下、ヌンちゃん)が合いの手を入れる。

ヌンちゃん「畝傍山っちゅうたら『おとん』が眠ってる陵(みささぎ)や橿原神宮(かしはらじんぐう)がある山のことやろ? その山の北部っちゅうたら、かなり限られた地域になるやないけっ。それでも行方不明なんか?」

クタ「・・・と思いきや、陵墓(りょうぼ)であるとの伝承が残る地があるんや。」

モチ「じゃが(そうだ)。伝承地があるんやに。その名も八幡神社(はちまんじんじゃ)っちゃ。」

八幡神社1
八幡神社2
八幡神社3
八幡神社4
八幡神社5
八幡神社6
八幡神社鳥居

フトマ「えっ? 八幡神社って・・・八幡神(はちまんしん)を祀(まつ)った神社ですよね?」

ヌンちゃん「せやっ。わての子孫の十五代目、応神天皇(おうじんてんのう)を祀った神社や!」

クタ「その通りですぞ。ですから、最初は陵墓で、途中で八幡神社に変わったのでしょうな。」

ヌンちゃん「ちょっと待てい! 墓を神社にするのは、かまへんねん。せやけどもな、祀ってる人が違うんわ、おかしいやろっ!」

フトマ「長い年月の中で、忘れられちゃったとか・・・。八幡神を合祀(ごうし)したら、そっちの方が主要神になっちゃったとか・・・。」

ヌンちゃん「そ・・・そないな・・・。嗚呼、可哀そうな『カンヤにいやん』(´;ω;`)ウッ…。」

モチ「ちなみに、橿原市(かしはらし)の山本町(やまもとちょう)にある神社やに。」

なにはともあれ、神八井耳命は畝傍山の北に葬られたのであった。

そして、その翌年の紀元前577年、皇紀84年(綏靖天皇5)。

一人の男の子が産声を上げた。

磯城津彦玉手看尊(しきつひこたまてみ・のみこと)である。

父親は第二代天皇、綏靖天皇(すいぜいてんのう)こと神渟名川耳尊(かんぬなかわみみ・のみこと)(以下、ヌンちゃん)である。

ヌンちゃん「せやで。わても、ようやく人の親になったんや。」

ここで、大后(おおきさき)の一人、五十鈴依媛(いすずよりひめ)(以下、イスズ)がやって来た。

イスズ「大王・・・。問題が発生しました。」

ヌンちゃん「な・・・なんや? どこに問題が有んねん?」

イスズ「実は・・・『日本書紀(にほんしょき)』では、私が産んだことになってるんだけど・・・。」

そこに、もう一人の大后、川派媛(かわまたびめ)(以下、カワ)がやって来た。

カワ「そうなのです。『古事記(こじき)』では、私が産んだことになっているのです。」

ヌンちゃん「ま・・・また、不毛な争いを起こすつもりかいな?!」

ついでに、三人目の大后、糸織媛(いとりひめ)(以下、イト)もやって来た。

イト「此度ばかりは、残念ながら、候補から外れております。(´;ω;`)ウッ…。」

ヌンちゃん「イト・・・。そないなこと言わんといてくれぇ。」

イスズ「さて、大王。どっちが産んだことにするの?」

カワ「そうです! どちらが産んだのか、はっきりしていただかなければ、読者が困りまするっ。」

ヌンちゃん「だ・・・誰も困らへん。どっちでも、ええやないか。みんなの子ぉや!」

そこへ、大伴味日(おおとも・の・うましひ)がやって来た。

味日(うましひ)「大王! そんげなこつより、皇子(みこ)の名前解説が優先事項やじ!」

イスズ「味日殿! そんなことって、そんなこと無いと思うけどっ。」

カワ「そうです。大事なことにござりまするっ。」

イト「まあまあ、いいじゃないですか。読者のみなさんの判断にお任せ致しましょう。」

味日(うましひ)「では、誰が産んだか問題が解決したところで・・・。」

イスズ「味日殿!?」

味日(うましひ)「我が息子、稚日臣(わかひおみ)が名前について解説するっちゃ! ワッキーと呼んでくんない!」

ヌンちゃん「味日・・・汝(いまし)の図太い神経に脱帽やで・・・。」

騒ぎ立てるイスズとカワちゃんを放置して、味日の息子、稚日臣ことワッキーが解説を始めた。

ワッキー「ええ・・・磯城津彦玉手看尊(しきつひこたまてみ・のみこと)という名前ですが、最初の四文字『磯城津彦』とは『磯城の男』という意味やじ。」

カワ「では、やはり、磯城一族の出身である、私の子なのですね!」

イスズ「カワちゃん・・・。私も磯城一族なんだけど! ヽ(`Д´)ノプンプン。」

ワッキー「ええ・・・玉手看の方ですが、最後の文字『看』は『ミ』と読むことから、敬称であると考えられるっちゃが。」

ヌンちゃん「敬称? 敬(うやま)った言い方っちゅうわけか?」

ワッキー「じゃが(そうです)。いわゆる『御』と同じ扱いやじ。」

味日(うましひ)「御柱は『みはしら』、御心は『みこころ』と読むのと同じっちゅうことや。」

ヌンちゃん「なるほど・・・。それで、残った『玉手』は、なんやねん?」

ワッキー「この『玉手』が本名やないかと・・・。」

ヌンちゃん「なるほどなぁ。せやったら、今後、タマテと呼ぶことにしよか!」

イスズ・カワ・イト「いいね!」×3

するとそこに、ここにいてはいけない人物がやって来た。

奥阿蘇(おくあそ)にいるはずの天彦命(あまつひこ・のみこと)(以下、あまっち)である。

あまっち「大王! 次回もスピンオフなんで、来てしまったじ。」

一同「ス・・・スピンオフ?!」×6

次回、再びスピンオフとなる。

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