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お兄ちゃんへ

お兄ちゃんのことを思い出して眠れない。
お兄ちゃんが居なくなってからもうすぐ5年が経つ

いまどうしてる?
生きているの?
それとも、もうこの世にいないの?

この5年間で色々変わった
いつまでも実家や大切だった人達が在り続けると、思っていてはいけない

お兄ちゃんが20年間溺愛していた犬は死んだし
コロナウイルスが流行り出したし
私は専門学校を卒業して遠い地で働いているし
岩手のおじいさんは認知症になって要介護で
私は大切な人に出会えたし
秋田のおばあさんは大腸癌で今日から闘病生活だし

もっと色々細々あるけど
どうか生きていて

身分証も口座も服もリュックも遺書も全部置いてった人がまともに光の世界で生きていけるの?

あの高い崖から飛び降りて、2月の海に独り凍える間も無く内臓破裂で即死なんて本当に……考えただけで…

あのとき
私はお兄ちゃんが家族のグループLINEを退出したあの違和感を信じて電話でもしてみればよかった
あぁいつものことか。
と私なんかまったく心配していなかった。家族だからわかってる、なんて思い上がりだった
心の声は口に出さなきゃ伝わらないのに、ごめんなさい

通学中珍しく父から電話が入っていた
学校が終わって、東京メトロ千代田線
明治神宮前駅のホームでまた着信。
出ると、父の声は何か押し殺した様に、震えて

けいさつ…
から…
連絡があって……

人目など気にする隙間はなく
私は電話片手に泣きまくった
どうして!!!!!!!!
としか言えなかったけど、お兄ちゃんを追い詰めてしまったのは私なんだよね。ごめんね。

私も、お兄ちゃんが自殺する前に一度試したことがあったよ。高3の帰り道で、クラスのいじめとか入試対策の先生の私に対する態度が最低だったよ。
途方に暮れるほど雪の降り頻る夜道を歩いて歩いて歩いて、どこだか分からないけど遠くまで行って、あー、ここなら死ねる
と思った
でも雪の中に横たわっていたら月が眩しくて
小学生の頃に死んだ秋田のおじいさんが見てる気がして飛び起きて帰ったんだよ
私はいきたくなかったけど死ねなかった
入試対策のテキストはそこらへんで捨ててった

24歳になった今でも時々そんな思いに駆られるけど、私はお兄ちゃんがいなくなったから
自分から死ぬことが怖くなってしまったよ
周りの人達がどんな思いをするか知ったからね

今ならまだ全部あるから
これを見たらすぐ実家に帰って来てね

あみ

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