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「子どもが環境を考えている裏で、大人が環境を壊している」環境問題に12年間取り組み続ける札幌市職員の原動力<前編>

「みんなの気候変動ゼミ・ワークショップ」は、「札幌市」、つまり自治体によって動いているプロジェクトです。しかし、そもそもどうして自治体が環境保全のプロジェクトを始めたのでしょうか。一体、誰のどんな熱意で走り始めたのでしょうか。

今回は、以前掲載したチーム紹介記事にも登場したオーガナイザー・佐竹さんに、当プロジェクトを始めたきっかけや根本的な想い、自治体ならではの進み方などについてお話を伺います。
(この記事は前編です。後編はこちらをご覧ください)

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─お話を聞いた人─
佐竹輝洋(さたけ・あきひろ)さん
札幌市役所、環境局環境計画課の職員。2008年から環境に関する教育や政策を担当。私たちが共に学ぶ空間をつくり、科学的なデータや統計資料を私たちに届けてくれる「札幌市・気候変動3兄弟」の長男。


「みんなの気候変動ゼミ・ワークショップ」を走らせたきっかけを伺いたいのですが、まずは佐竹さんの経歴からお聞きしたいです。どうして環境分野で活動されているのでしょう?

私が市役所職員になったのは2004年。大学が生物学科だったこともあり、技術職として入りました。最初の4年間はダイオキシンが川の水や土の中にどれくらい含まれているかを分析する仕事を経験しまして、今の部署(環境局環境計画課)に異動したのは2008年4月のことです。

最初のミッションは同年6月に、「こども環境サミット札幌」という、世界10カ国+日本国内20都市の子どもたちを札幌に集めて環境大臣に向けた宣言書を作ろうとするイベントの開催だったのですが、担当者は上司となる係長のほか、私一人でした。それで全ての国、全ての都市の子どもたちとの調整を行っていたので、残業時間もかなりのものでしたね(笑)。

「こども環境サミット札幌」を実施して分かったのは、国によって抱えている問題が異なることです。中国は水や大気汚染が問題になっていますが、フィリピンなどの途上国は上下水道がまだ完全普及していないので、そのあたりから議論を始める必要がありました。またドイツは環境先進国ですから、それこそ気候変動の課題に取り組むフェーズまで来ています。

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─国々によって状況がバラバラなのですね……。議論はスムーズに進んだのでしょうか?

当初は「文化や状況の異なる子どもたちが話し合うことはできるのだろうか?」と心配していましたが、我々の想像とは裏腹に、「環境問題」という枠組みを利用することで議論が可能になっていました。これはすごい共通言語だなあと思いつつ、しかしそのタネを作り出したのは誰だろうと思った時に、それは大人である我々なわけですよね。子どもたちが一生懸命に考えている裏で、いまでも大人が環境をどんどん悪化させている。そう思いを巡らせたとき、あまりに悔しくて泣けてきてしまって。生涯をかけて取り組まなければならない課題だなと思いましたね。

─その後の影響や流れはどのように?

2009年になり、「こども環境サミット札幌」の参加者の子どもたちにお礼のお手紙を書きました。すると、「サミットをきっかけにして学校の環境クラブで活動しています」とか、「これからも環境について勉強したいです」みたいな返事をたくさんいただいたんです。もう、なんというか、心が洗われるような気分でした。この瞬間をどれだけ作っていけるだろうか、と。

それからは環境教育を担当したり、札幌市の温暖化対策の計画づくりなどを行いました。その後、2015年になり国連でSDGsが採択され、これは札幌でもやるべきだ!と声も上げました。僕はたまたま「こども環境サミット札幌」というイベントをきっかけとして、気候変動やサステナビリティを意識するようになりましたけど、このSDGsをきっかけに多くの人に環境問題やサステナビリティについて考えてもらいたいと思って。

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─その想いが「気候変動ゼミ・ワークショップ」に繋がるわけですね。

はい。ここ10年間近く、東日本大震災などがあって日本全体の気候変動対策がなかなか進まない期間が続いてきました。札幌もそうです。2018年になってようやく始まった環境プランも、たくさんの人間が関わっているはずなんだけど、なかなか響いていかない広がっているようで広がっていない。どうしたら動かせるんだろう……としばらく悩んでいました。

僕が10年をかけてたどり着いたのは、「可能性は若い世代と企業にあるのかも」という仮説でした。去年あたりに札幌市内からSDGsに関心のある中学生や高校生が出始めたのですが、その中高生が「何かやりたいけど、何から取り組んだらいいか分からない」と動けずにいることを知りました。確かに、これまでの担い手は僕の同世代以上の人間ばかり。若い世代にとっては「質の高い学びやつながり」を得るのがすごく難しいことだと思いました。

環境活動は次の世代に受け継いでいかなければならないものですから、まずは人材育成事業が必要なのかもしれない……。そんなふうに考えていた中、ゆりさんやArt of Hostingに出会い、これなら動けるかも、なんかいけるんじゃないか!と感じられたことを覚えています。「みんなの気候変動ゼミ・ワークショップ」は、そうやってスタートしました。

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後編では、以上のような情熱を持って環境問題に取り組み始めた佐竹さんがどんな場所に向かおうとしているのかという「目的」、そして自治体の中でプロジェクトを進める際の「テクニック」を中心にお話を伺います。

「子どもが環境を考えている裏で、大人が環境を壊している」環境問題に12年間取り組み続ける札幌市職員の原動力<後編>


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