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smashing! そこにギャップがあるから

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司ともそういう仲。


側にいてくれと頼んではいないけど、設楽はいつも色々と俺の世話を焼いてる。ぱっと見誰も気づかないように。目立たないように。気配を消すのがうまくて、慣れた人間でもどこにいるのかわからない時もある。

「んじゃあねえ、トンちゃんも早く交代してなー」
「大丈夫です伊達助教、お疲れ様でした!」
「はーい」

昼勤からの夜勤連勤でしじょうに、いや、ひじょうにタイトでありましたねえここんとこ。でもお陰で週末までお休み。ムラのあるシフトだけど、慣れちゃえばけっこうどってことないんよね。東、トンちゃんから美味そうな手土産もらった。バターマシマシバタークッキー?名前からして期待度のハードルが上がるね。あとでハルちゃんと設楽と分けようかな。あ、設楽。あれ?そういや姿見えない。おしっこかもしれないよね。

「…おしっこでもうんこでもないです」
「いるならいるっていう気配をねえ」
「御意。さ、帰りましょうか」

いつのまにか真後ろにいたっていう。最近はもうびっくりしないようにしてるんよ、嬉しそうにしてるの癪じゃんね。駐車場の設楽のハマーが既に待ちきれない感じでピッカピッカ点滅してる。こんなとこから起こさなくても。

「雲母さん、田舎のほうですよね?」
「そう田舎田舎、俺んちのほう。ハルち夜になるって」
「田舎、で怒るかと」
「俺は田舎て言い方結構好きなんよ」

設楽の運転は加速も減速も緩やかでいい。見かけによらず意外に慎重派。「執事」の方のようですね、ハルちゃんがそう褒めてたっけ。ハラ減ったんでちょっと寄っていいですか?返事も聞かずに設楽はいきなり下がってく駐車場にIN。下ったね今。ベローンしたカーテンあったよね今。なんだよ飯食うって言ってなかった?

リニューアルされたばっかりとかなんとか、午前中からLのついたホテルで部屋選んで。入った途端にいきなり壁にドン状態で貪られる。さっきまで気配も消してて、紳士的な「執事」だった設楽に。なんだろうねこのクソギャップ。丁度腹のとこ、設楽のが痛いくらいで。手首を掴まれてそこに押し付けられる。


ああまだ午前中なのに、飯も食ってないってのに。跪いてそこを解放してそのまま喉奥に、めったにやんないその奉仕を、俺は何の抵抗もしないで受け入れる。なんて。

これも、ある意味、ギャップなんよね。



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