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どうする?子どもの意固地への対処

私、心理職なんですが、幼稚園や保育園でも仕事をしています。子どもの行動観察をして発達状況を確認し、先生方にコンサルテーションをしています。その際、せっかくなんで保育のプロである先生方の技も、もらえるだけもらっちゃおうと努めております。

その中の一つをご紹介します。

幼児さんを看ていると、こんなことがあります。

子どもの自己主張が強すぎ、大人の言葉が耳に入らない。

これは切り替えの場面でよく見られます。
お片づけ、トイレ行くよ、お帰りのお支度。

ぜんぶ嫌です。イヤだったらイヤなのです。。とにかく今はしたくない。
(やる気が出なくてぼんやりしちゃう子もいますが、それはまた別の時に)

保育のプロの対処は3つ。
・魔法
・論点ずらし
・時間を味方に

1.魔法
大ベテランの魔女先生の技です。創作しつつ具体例を挙げます。

子「お部屋入らない!」
魔女先生「そうかー。じゃクマさんに電話するねー」
「はいモシモシ、クマさんですか。Rちゃんはお部屋には入りません。お庭にいるそうです」
→ここでRちゃんに向かって「クマさんわかったって」
→また受話器に向かい「クマさんは今日は何するんですか?…お歌うたうんですか。エビカニの歌ですか、いいですねー」
など、関係ないことを話して電話を切ります。

そして優しく「さ、行こっか?」…これでRちゃんは靴を脱いで準備を始めたのです。私には魔法に見えました。

2.論点ずらし
家庭場面に置きかえて例にします。
例)スーパーにてお菓子を買えと言う子。しかし家に買い置きがあるため買いたくない。「家にある」と言っても子には内容が入っていない様子

親「ラムネほしいのかぁ」子「買うの!ラムネ!」
親「このラムネは何味?」子「?」
親「これはプレーン、いつもの味だね」子「…」
親「あれ、ちょっと待って?ママ、何か思い出しそう」
「…あっ、これおうちにあるよ!」「おうちでラムネが待ってるよ」
子「!!!」
親「さ、早く帰ってラムネ食べようよ」
子「ウン」

3.時間を味方に
これは1と2にも絡みます。後述。

〜解説〜
なぜ上手くいくのでしょう。

ここでまず大前提を確認します。
→幼児の強い主張には、正面からいっても無駄
正面から圧をかけると、子どもの方も主張を強めます。強さと強さのぶつかり合った先はギャン泣きです。

「そっかぁイヤかぁ」と一旦受けることで、子どもの方は主張する必要がなくなります。気持ちが少し弱まります。

しかしまだここで大人が攻めるのは時期尚早。弱まった気持ちの維持を目的に、様子見の段階です。

様子を見つつ、時間をかけてもっと落ち着くのを待ちます。ここで魔法だったり論点ずらしだったり、その先生の個性が出ます。子どもに「え?どういうこと?」と思わせ、関心をこちらにもってこれるようにしています。

ここでの注意点は、言葉通りの態度をとることです。嫌味っぽくなるとよくありません。ベテラン魔女先生はフラットな雰囲気でクマさんに電話していました。もし『クマさんに言いつけるよ!』という気持ちで言ったとしたら、子どもの意固地スイッチは再びONになるでしょう。。

魔法と論点ずらしの共通点は、子どもの注意の矛先を変えているところです。クマさんやラムネの味の登場で「オヤ?」と子どもに思わせ、話の先がどうなるのか興味を引いているのです。子どもがそれまでの意固地な気持ちを手放し、話の展開に気が向けば、聞いているうちにいつの間にか穏やかな気持ちになっていきます。

↑だから、落ち着くまでにはある程度の時間が必要なのです。子どもの様子でまだだな、と判断したなら、園の魔女先生はクマさんの話をもっと引き延ばすでしょう。

また、3の時間を味方にするテクニックは割と経験の浅い先生でも使っておられます。細切れに声掛けし、時間をおきながら少しずつ心づもりをさせているのです。

もう一つ大事な点。さじ加減です。もしここで面白い遊びに誘ってしまい、テンションが上がると『お部屋に入る』に戻れません。例えばクマさんがバイクで今からお出かけという設定にしてしまうと、「ボクもお庭でバイク乗る」になってしまいます。
あくまでも目的は次の行動に戻すためなので。楽しすぎてもだめ、ほどよさが肝心です。他にも各声かけの際の調子の強さ、感情の込め具合。子ども一人ひとりに合わせて変えていらっしゃいます。プロの技でしょ?

保育士さんや幼稚園教諭の先生の地位は、もっと認められるべきだと思います。専門性の高いお仕事ですもん。

さてこの他、かんしゃくが強いお子さんには言葉が有効でないこともあります。感覚(視・聴・触)を使ったり、時間経過しかなかったり。長引くと付き合うのは大変ですよね。


あー、長くなっちゃった!
読んでくださってありがとうございます😊

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