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第2回 美味しく、楽しく、自由に。

静岡県菊川市で「だれでも食堂」をおこなう村松小鶴枝さんの記事、完結編です。第1回記事はこちらです。

おおらかな時間

それとね、去年の8月には流し素麺をやったんです。お寺はお盆になると素麺を頂くのでね。いつも「だれでも食堂」はそうやってあるものを活かしてやっているんです。その日は120人くらい来ました。

ちょうど台風の時期でどしゃ降りで、流し素麺台は山門の屋根の下で組んだんです。だけど、こどもたちはずっとずぶ濡れで遊んでいましたよ(笑)。ごろごろ寝転んじゃって、びっしょびしょ。今はそういうことなかなかできないし、車も通らないからお母さんたちも安心してました。

他にもいろいろやったんです。駄菓子を全部10円で用意して、こどもたちがママんところに何回も行って「10円ちょうだい」って言ってね。あとは五平餅をやろうって言って、「あれ、五平餅ってこういう形してるよね?どうだっけ?」って試行錯誤しながらやったりねぇ。

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みんなが手伝ってくれる

五平餅はボランティアの人が炭火を焚いてやってくれたんです。竹の名人がいて、その人が竹を取ってきて火吹き竹を作ってくれたり。ありがたいことに、いつもそうやってボランティアの人が手伝ってくれるんですよ。

お餅を焼いたり、余ったご飯を焼きおにぎりにしたり、そういう面倒見の良いおじいちゃんおばあちゃんの役をボランティアの皆さんがやってくださるんです。「おにぎり、お醤油だけじゃなくてお味噌つけたのも焼いてみる?」って言ったり、なんか自然にね。

突然手伝いに来てくれる人もいます。ずっと様子を見てたけど、一歩踏み出せなくて、って人もいたり。シニアの人で少し余裕がある人がね、例えば料理好きの人が子供が巣立っちゃうと食べさせる人がいないから、料理を食べてほしいってことで手伝ってくれる人もいるし…。目的はそれぞれ違うし、それで良いと思うんですよね。

それから、こどもでもお手伝いしたいって言って、やってくれる子がいます。そういう子は働いてくれるわけだから、食事代の100円はもらわないようにしているんです。だいたい食べるのに夢中で、そんな子少ないんですけどね(笑)。

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だけどねぇ、ボランティアの皆さんに対しては、私の身勝手に協力してくれて申し訳ないなって思うことがあります。だから、マスコミに取り組みを取材してもらうことがあるんですけど、「私よりも手伝ってくれる皆さんを撮って」と言うんですよ。

だって「だれでも食堂」をやっていると、なんだか福祉に寛大な人だと思われるんですけどね。別に、私いい人じゃないんですよ。もともと、「食に困っている子たちをなんとかしなきゃいけない」って思った、ただの私の自己満足でやっていることですからね。

楽しいおせっかいを続けたい

私みたいに、ありがたいことにいろんな人に協力してもらわなくても、だれでも食堂を始めるのってそんなに難しいことじゃないと思うんです。近くの子どもたち2人でも3人でも、うちに来てもらってご飯食べさせるってことでも良いと思うんです。

始めるきっかけは人それぞれ、それで良いですよね。うちは私が勝手にやってるから、住職(村松さんの夫)も見てるだけで手伝わないですし(笑)。法事とイベントとだれでも食堂の3つが同じ日に重なった時は、忙しかったですね。でも、お寺で大勢集まることは慣れているので、料理をたくさん作るのは全然苦じゃないんですよ。

次回は8月24日の土曜日に、また流しそうめんやろうかなーってボランティアの人たちと話してるんです。だからね、あんまりお金かかってないけど、楽しいですよ。皆さんも良かったら来てくださいね。

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*編集後記*
村松さんに取材をしたのは暑い盛りになる前のことでした。その後、残念ながら8月24日の流しそうめんは予定が合わず…。編集部はお邪魔できなかったのですが、インターネットで当日の様子を探すと、静岡新聞の記事がありました。そうめん以外にも駄菓子屋やバザーなど、さながら夏祭りのよう。

「夏休みにどこもいけない子たちに思い出作らないとね!」と話していた村松さんの素敵なおせっかいは今回も成功したようです。
(書き手:工藤大貴)

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