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「障害者に感動するのではなく、自分にも関係がある話だと感じてほしい」漫画家うおやま

Web漫画サイトで累計600万PVを記録し、SNS上でも「かわいい!尊い!ためになる!」と話題になっている『ヤンキー君と白杖ガール』。街のヤンキーと弱視の女子高生のラブコメ漫画だ。作者のうおやま先生は「障害者が頑張る話に感動するのではなく、自分にも関係がある話だと感じてほしい」と語る。本作を書いたきっかけや、ストーリーに込めた想いについてお話を聞いた。

ー『ヤンキー君と白杖ガール』を書いたきっかけについて、教えていただけますか?

この漫画を描こうと思ったきっかけは、親が弱視(ロービジョン)なので「弱視にまつわる色々なことを知ってもらいたい」とずっと思っていたからです。自分にとって弱視は身近な題材ですが、一般の読者はあまり知らない世界だと思います。

知らない世界を知ることができるということは、漫画を読む楽しさのひとつだと思います。だから、きっと面白い漫画になるだろうという確信のようなものがありました。

ーうおやま先生は普段、別のペンネームを使って商業誌で連載をされていますが、「ヤンガル」をWebで連載したのはなぜでしょうか?

早く世に出したかったので『ヤンキー君と白杖ガール』(以下「ヤンガル」)は出版社を通さずに個人でのウェブ連載の形をとりました。つまり、自分が勝手に描いてwebに載せたものです。商業誌とは別のペンネームにしようと思って「うおやま」という名義にしています。

いっぷう変わったラブコメとして「ヤンガル」を楽しんでもらっているうちに、いつの間にか、弱視が『知らない世界』から『馴染みのある世界』になっていってほしいと思って描きました。

ー弱視のユキコの日常についてリアルに描かれていると思いました。そのことが「ユキコは守られるだけの受け身の存在ではない」ことの説得力になっていると思います。なぜユキコの日常をリアルに描くことができたのでしょうか?

資料も多少は参考にしていますが大体は想像して描いています。読者の方から「なぜ想像でわかるのか?」と驚かれることが多いです。笑 けど「弱視の人」は「見える人」と全く違う生活をしているわけではないんです。

「弱視の人」も「見える人」と同じように、寝て、起きて、ごはんを食べているし、学校にいったり、趣味を楽しんだりしています。ベースは「見える人」と同じ生活です。ただし「見えにくさ」はあるから、その都度で工夫は必要になります。1巻では映画や雨、靴、醤油の容器などにユキコの日常の工夫を書きました。

ユキコは「弱視の人」ですが普通の16歳の女の子です。友達もいるし、恋もするし、普通の高校生です。その生活や気持ちが前提としてあって、そのうえで「見えにくさ」があれば「こういう場合どうするか…」と考えて描いています。だから、リアルな日常であるように描けているのかなと思います。

ーユキコに対して過保護になってしまう姉イズミの存在が気になります。ストーリーのなかで「ユキコの家族であることを放り出したくなる時がある」と語る姉イズミのキャラクターを作ったときに、うおやま先生が考えたことを聞かせてもらえないでしょうか?

姉イズミの回で一番描きたかったことは「イズミさんもひとりじゃない」と黒川が言うくだりです。イズミは「弱視の妹」と暮らすことで、妹の心配が生活のすべてになってしまっています。でも、イズミの友人たちにはそれを打ち明けられません。

自分も経験したことですが、日本の社会は「家族のことは家族で」という風潮が強すぎると感じています。このことは障害者の話に限らず、高齢者の介護、育児の悩み、虐待、DV、引きこもり等、様々な日本の問題に通じていることだと思います。しかし、家族はそんなに万能ではありません。

むしろ、家族だからよけいに客観視できなくなって、不安が増強されてしまう場合もあると実感しています。だから、イズミに対して「ひとりじゃない」と言ってくれる存在が必要でした。

大切なのは、家庭内に他人や福祉の助けなど外部の風が入って、自分の不安を減らせること、それがまた家族を大切だと思いなおせることだと思っていて、そのことを描きたかったです。

ー過保護なイズミのキャラクターを「母親」ではなく「姉」にしたのはなぜですか?

「親」ではなく「姉」にしたのは、単に漫画として、お姉ちゃんキャラがいたら楽しいなと思ったので・・・。笑

ーこの漫画を描くにあたって、うおやま先生が大切にしたことは何でしょうか?

いわゆる健常者が変わっていくお話になっているのは、意識したわけではありません。自然とそうなりました。私自身は「見える人」だから、見える人の側が考えて、変わっていく話のほうが描きやすかったんだと思います。

障害者が主人公の作品は、彼らががんばったり、苦しんだりする様子を読者が観客席から応援したり、感動したりするという構図が多い気がします。でもヤンガルでは、読者に「自分にも関係がある話だ」と思ってもらえるお話にしたかったです。

だから健常者が考えて変わっていく話でありたいし、共感できる普遍的なラブコメでもありたい。ユキコを「別世界の住人」ではなく「すぐとなりにいる女の子」だと思ってもらいたいです。それがヤンガルで一番大切にしていることです。

ー他のインタビュー記事で「こんな夜更けにバナナかよ」をうおやま先生がオススメしているのを読みました。私も大好きな作品です。「障害」に関連して、うおやま先生がオススメする映画や漫画があれば、他にも教えていただけないでしょうか?

あまり詳しくないのですが、海外の映画は「障害」をもつキャラクターの描写が進んでいる気がします。最近公開されたヒーロー映画『シャザム!』はご存知ですか?主人公の友達役として足の不自由な男の子が出てきますが、ストーリーの中で彼の「障害」が強くクローズアップされることはありませんでした。

邦画で足の不自由なキャラクターをだすと「障害者を出す意味」を、制作側も、視聴者も求めてしまうだろうと思います。そうではなくて、「障害者」も「マイノリティの人々」も、登場人物のひとりとして自然に居るような作品が、たくさん見られるようになるといいなと思っています。

ヤンガルも「障害者の物語」という括りにとらわれたくないと思っています。多くのひとに楽しんでもらえる作品になるように、引き続き描いていきたいと思います。

ーこの漫画は視覚障害者向けの音訳データを提供する「サピエ(視覚障害者情報総合ネットワーク)」にも登録されているので、視覚障害のあるひとも楽しむことができますね。2019年6月には『ヤンキー君と白杖ガール』2巻がKADOKAWAから発売されました。全国の書店で販売中なので、多くのひとに読んでもらいたいと思います。うおやま先生、ありがとうございました!


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フリーランスのライター・重度訪問介護のひと◉東京の多摩地区在住◉障害・福祉・介護に関するライティング◉社会福祉士・介護福祉士・修士(社会福祉学)◉人の中にある物語を聞くのが好き◉趣味はゴスペルとカレーの食べ歩き٩( 'ω' )و

コメント3件

漫画を描けるって凄いですね
僕も漫画描いてみたいです
やりたいことは、やってみればいいと思います。
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