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あなたも私も「超人」になれるかもしれない

先日部屋を片付けていたら、夫が数年前に買ったという、「キン肉マンの図鑑」を家で見つけました。タイトルはキン肉マン「超人」

超人とは、キン肉マンシリーズに登場する架空の種族。文字どおり、人を超える能力を持つスーパーマン的な存在らしいです。

超人にもいくつかの勢力があり、主人公のキン肉マンが属するのは「正義超人」。類まれな力を人類を守るために発揮する、愛と平和の属性をもつ超人だそう。

正義超人って、実は現実世界にもいるかもしれない…私の中ではある方の存在が、頭に思い浮かんでいました。



「企画でメシを食っていく2021」(以下企画メシ)第5回は食の企画。ゲスト講師は株式会社ビビッドガーデン創業者であり食べチョク代表の秋元里奈さん

企画メシとは
「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと
コピーライター&作詞家の阿部広太郎さんが主宰する、企画の連続講座。毎回テーマに沿ったゲストをお招きしてお話を伺い、いただいた課題に挑戦していく。


企画メシから派生して生まれた、同じく阿部広太郎さん主宰の連続講座「言葉の企画」(昨年は言葉の企画2020として実施)の卒業生である藤本舞が、今回は講義レポートをお届けいたします。
前半は阿部さんとの対話形式で語られた、秋元さんご自身のお話から。

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起業家の秋元里奈さんが誕生するまで


神奈川県相模原市の農家に生まれた秋元里奈さん。慶應義塾大学理工学部を卒業後、DeNAにてwebサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げ、スマホアプリのマーケティング責任者を経験。
その後、起業を決意し、3年半勤めたDeNAを退社。2016年に一次産業ベンチャーのビビッドガーデンを創業されました。


行動力に溢れ、ポジティブで、外向的に見える秋元さん。大学では学園祭の実行委員として活躍されていたそう。ミスコンを企画するチームのリーダーを務めるなど、華やかな経歴を聞くとやはり元々行動力のある方だったのだな…と思ってしまいます。

阿部さん
「学園祭の実行委員の方って、行動力や発信力がある方たちが担当しているイメージがあるのですが…秋元さんは中学生や高校生の頃から、みんなで何かを形にするような活動をされていたのでしょうか?」


秋元さん
「なかったですね…全然なかったです。あったとしても誰かがやっていることに乗っかるくらいで。学園祭の実行委員も、やりたいと思って入ったというよりかは、友達に誘われて入ってみるか、くらいのかんじで。実際入ってみたらすごくおもしろかったのですが。」



秋元さんの著書『365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘』にも幼少期の性格について、つづられていました。

元々は「引っ込み思案で信じられないくらい内向的な子どもだった」「周囲の子たちとうまくコミュニケーションが取れず、遊んでいる途中で黙って家に帰ってしまうこともあった」そうで…元から積極的なタイプではなかったとのこと。

そんな秋元さんがどのように変化していったのか。
一番のきっかけはやはり学園祭の実行委員での経験だったそうです。

秋元さん
「約1年という長い時間をかけて企画し、本番を迎えて、目の前でお客さまが喜んでくれたり、自分が考えた企画にたくさん人が来てくれてすごく達成感がありました。1回目でその楽しさを感じて、3年まで続けてたというかんじですね。」

阿部さん
「就職活動は当時どういう考えをもってされていたのでしょうか?」

秋元さん
「元々、母からは銀行員か公務員になってほしい、安定した職についてほしい、と言われていて。最初は金融系を受けていたんです。安定しているのは間違いなかったのですが、たまたま誘われて行ったDeNAの説明会で衝撃を受けた出来事があって。

DeNA創業者の南場智子さんが「打席でバットを振り続けることが大事」とお話されていたのですが、入社1年目の人事の方がまさに打席に立って、自分が創業したかのような熱量で会社の魅力を説明していたんです。打席に立ち続ければ新卒1年目でもこうなれるんだ、と衝撃を受けたんですよね。」


3年で人は変わる、と学園祭の実行委員で実感していた秋元さんは、入社後たった数年でも打席に立てるイメージの湧いたDeNAへの入社を決意します。

阿部さん
「DeNAに入られて、新規事業を担当したい思いを持ちながらも既存サービスのMobage(モバゲー)の部署に配属されたとなると…どこかもどかしい思いはあったのでしょうか?」

秋元さん
「始めは正直ショックで、悔しい思いをしました。でも実際やってみると新しいことだらけで、やりがいを感じるようになりました。結局異動することになるのですが、ずっとここでやりたいと思うほどでした。」


がむしゃらに目の前の仕事に取り組まれていた、20代。起業のきっかけは異業種の人との交流だったといいます。

秋元さん
「3年目まではほぼ社内の人としか話していなかったのですが、本当にやりたいことが見つかっていないな…と思い、視野を広げるために外に出るようになりました。」


ある異業種交流コミュニティの中で実家が農家だと話すと「農地を使ってお祭りをやろう」との話が盛り上がり、実家の畑を見に行った秋元さん。

そのときに見た畑は荒れ果てていて、とても人を呼べるような状態になく、お祭りは断念することに。
これをきっかけに、様々な農家さんの話を聞きに行く中で「色鮮やかな農地を取り戻したい」という思いのもと、ビビッドガーデンを立ち上げます。

秋元さんの「すごさ」を紐解く


自分自身と向き合い、自ら変化し、前進し続けてきた秋元さん。ついには会社を辞めて起業まで…これまでのお話を聞いただけでも「すごい」の一言ですが、その「すごさ」の秘密はどこにあるのか。
一つひとつ紐解いていくと、私たちも参考にさせていただけるヒントがたくさんありました。

◻️リスクを言語化する

起業するにはリスクも多いはず。不安や心配を乗り越えてどう踏ん切りをつけたのか?という質問に、
「リスクを言語化してみることが大切。具体的に出していくと、不安は意外と最小限にできる」と秋元さんはおっしゃっていました。

私自身、仕事で新規事業を検討する中で会社の先輩から「なんで不安かわかる?何が不安かわからないからだよ」と言われてハッとしたことを思い出しました。

漠然としたリスクも、漠然としているから壮大な不安に感じる。しかし、言語化して整理していけば、一つひとつのリスクには対処法があるはず。
そう考えれば、むしろ同じことを続けていることの方がリスクな場合もあるのでは?
そんな気づきと勇気をいただきました。


◻️自分を持ちつつ、人からの影響はしっかり受ける

「食べチョク」のネーミング一つとっても、ご自身の揺るぎない意志を貫いてきた秋元さん。
一方で、人からのアドバイスや客観的なデータは徹底的に集め、周りからの影響はしっかり受けると言います。

DeNA時代にキン肉マンのお仕事を担当されていたときも、始めは興味が持てなかったキン肉マンをひたすら読み、キン肉マンが昔から好きな人たちを自分に憑依させることで企画をされていたとのこと。

また、企画する上で様々な立場で考えることも必要で、例えば「生産者」と「消費者」の立場がある場合。自分はどちら側に寄りやすいか?を意識し、そうでない方の情報を意識的に取りに行くと言います。
これは「クライアント」と「開発者」、「営業」と「デザイナー」などなど、どんな仕事をしていても参考になるポイントかもしれません。

◻️愛を力に変える

講義中に秋元さんが繰り返しおっしゃっていたのが「生産者ファースト」。
何よりも大きな「生産者への愛」が食べチョクを、ビビッドガーデンを、そして秋元さんご自身を形成しているのだなと感じました。

そんな生産者との信頼関係を築く上で秋元さんが大切にしているのは「自分自身を開示し、相手を理解する姿勢を見せる」こと。その具体的な方法については、後半で。


◻️「なんとかする」パッションを持つ

ここ1、2年で急成長した食べチョク事業。
その裏にはコロナ禍による生産者からのたくさんのSOSの声があり、食べチョクとしてもパンクしそうになりながらも注文を止めることなく、サービスを継続し続ける判断をしたと言います。
全ては生産者のため。「なんとかするんだ」という情熱が、秋元さんを、そして食べチョクメンバーを、突き動かしました。どれだけ能力や技術があっても、最後に問われるのは情熱なのかもしれません。

秋元さんと自分自身を紐付ける


後半は、事前に企画生に出されていた(企画メシでは受講生のことを企画生と呼びます)課題について、秋元さんからフィードバックをいただく時間。

「農業(漁業)を志す人が増えるために食べチョクができることを企画してください。」
のテーマの元、企画生一人ひとりが自分自身の経験や周囲に聞いた話をヒントにしながら、自分ならではの企画を提出していました。

秋元さんからは「血が通ったリアルな現場の声をもとにした、思いの乗った提案が印象的だった」とのコメントが。

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そして最後の質疑応答。次から次へと質問の手が上がっていく様子を見て、秋元さんからの学びを「自分自身に活かしたい」という企画生一人ひとりの熱い思いが伝わってくる気がしました。

その内容を、いくつかご紹介します。

Q.信頼関係を築くために「自分を開示すること」が大切とおっしゃっていましたが、自分を正しく知ってもらうために気をつけていることは?

秋元さん
特に初対面の人は壁があるので、相手の話を聞く流れで自分の話をするようにしています。
自分の話を聞いてもらうスイッチを入れてもらう、というか。

あとは、自身の発言と行動が伴ってるか?は意識しています。言ったことが嘘にならないように行動して、時間をかけてでも信頼を積み重ねていくようにしていますね。
Q.決めたことをやり抜いてきた秋元さんが、心がけている「マイルール」はありますか?

秋元さん
モチベーションを保つために、自分がモチベーションが上がることを正しく把握しようと心がけています。私の場合は生産者さんからの手紙を読み返すことで「生産者さんのために」の気持ちを見失わず、がんばるモチベーションを保てています。

自分はなぜ生きているのだろう?
自分だからこそできることをして、貢献したい。
そう考えたときに、他にやりたい人が少なく、
自分が思いを持って行動できる領域が一次産業でした。

「なぜ今これをしているのか?」は常に考えるようにしていますね。


そして最後に、阿部さんから。

Q.秋元さんは「企画する」ことについて、どのように捉えられていますか?

秋元さん
企画は一番最初のタイミングが大事。
最初にどれだけの思いと熱量があるか、によって
最後の到達点が変わると思っています。


超人は別次元の人ではない


類まれな力を人類を守るために発揮する、愛と平和の属性をもつ超人「正義超人」。

行動力やコミュニケーション力を発揮しながら生産者への愛を力に変え、誰にも負けない情熱を持って一次産業を守り、変えようとされる秋元さんの姿を、思わず重ね合わせてしまいました。

しかし、「超人」も紐解いていくと、一つひとつの小さな意識や意志、愛の積み重ねでできている。そんなことを今回の講義から教わりました。

別次元のすごい人なんだ!と決めつけるのではなく、秋元さんのお話から私たちも参考にできることは数多くあります。

実は私たち誰もが「超人」になれる可能性を持っているのかもしれません。

仕事で新規事業の立ち上げをしている私は、誰も歩んだことのない舗装されていない道を歩む日々で、力のない自分に落ち込むことも多いです。どんな困難もするりと乗り越えられる超人への憧れを持ち続けています。

しかし、そもそもどこまで情熱を持って本気になれているのか?秋元さんに自信を持って言えるほどにがんばれているのか?と、講義中、自分自身にひたすら問い直していました。



思いを持って、行動して、積み重ねて。
少しでも世の中に貢献して、生きる意味を見出せるように。

いつか超人に、なれるように。

自分自身も歩んでいこうと思います。


「超人」秋元さんのことを、お母さまの気持ちを想像して表現した一曲を、最後にご紹介させてください。

Song by 企画生 Sho-koさん


レポート:藤本舞(言葉の企画2020)

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