喜界島リーフチェック2022
喜界島のサンゴ礁を100年後に残すためのモニタリング調査
2022年9月24日(土)、喜界島サンゴ礁科学研究所が喜界島・荒木にてリーフチェックを実施しました。ここではそのイベントの様子や調査結果について詳しくご報告します!
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「喜界島リーフチェック2022」
日時:2022年9月24日(土)
場所:喜界島・荒木、巨大ハマサンゴ周辺
天気:晴れ、気温30℃、水温27.8℃
主催:喜界島サンゴ礁科学研究所
協力:ヨネモリダイビングサービス、BSAC japan、コーラルネットワーク
チーム科学者:鈴木倫太郎、駒越太郎
調査員:土川仁、大塚慎二郎、大塚英理子、須賀千晏、依田純一、椛島賢斗
サポーター:安田仁奈様、久後亜希子様、赤井由紀子様
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リーフチェックとは、サンゴ礁の「健全度」を調査するための世界での統一手法によるボランティアベースのサンゴ礁のモニタリング調査です。調査方法は、毎年同じ海底の地点に側線を張り、側線に沿って決められた幅に生息する魚類や底生生物をカウントします。サンゴ研ではこれまでも研究者やスタッフによって、2018年から喜界島の荒木にある巨大ハマサンゴ周辺で調査を行ってきましたが、今年からその活動をより広く、一般のダイバーにも参加を呼びかけて調査が実施されました。また、調査の前日にはサンゴやリーフチェックについて知ってもらい、関心を高めてもらうことを目的に、サンゴ研の鈴木倫太郎研究員によるサンゴ礁の基礎知識の勉強会が行われました。
勉強会の後は、翌日に控えた調査の打ち合わせをします。ゲストとしてお迎えし、これまで数々のリーフチェックのご経験のあるコーラルネットワークの土川さんにご指導いただきながら当日の役割分担や調査の流れ、生物の見分け方などを打ち合わせしました。
そして迎えた調査当日。普段とは違う調査ダイブに少し緊張感が走っているようなワクワクしているような…
出港から10分もしないうちに調査ポイントである荒木・ハマサンゴの上に到着します。
着いてすぐは分厚い雲で雨もぱらついた喜界島。この後気温30℃の快晴になりますが、これも島らしい天気です。毎回荒木のポイントにつくと喜界島の階段状の地形がはっきり見えて感動します。喜界島はサンゴ礁が隆起してできた島。今でも成長を続け、島の中ではそれぞれで年代の違うサンゴ礁段丘が広がっています。海の多様性から陸上のサンゴの地質、そしてそこで暮らす人々の文化まですべての繋がりが実感できる世界でも稀有な島です。
そしていよいよ調査開始!まずは決められた地点にメジャーで100メートルの測線を張ります。研究員の鈴木倫太郎さん、メジャーをもってバックロールで海へ!よろしくお願いします!
この後は、魚類、底生生物、底質の3チームに分かれて、メジャーに沿って5㎡の範囲で記録していきます。魚類はチョウチョウウオ科やブダイ科など、商用や観光利用がされている種類の魚が測線の範囲内にどれだけいるかをカウントしていきます。魚はダイバーの泡で逃げるので、測線を張ったあと少し時間を空けて、一番初めに調査を開始します。ダイビングは浅場で1本、その後休憩を挟んで深場で1本の合計2ダイブで調査が行われます。
底生生物も同じく商用や観光利用が考えられる種をカウントするほかに、海底に沈んだゴミやサンゴのアンカー被害なども数えていきます。エビなど、夜行性の生物はなかなか見つからず、ついつい一生懸命探して時間を食ってしまうこともあるので、決められた時間内で調査をすることが肝心です。
底質は、海底のサンゴやソフトコーラル、岩や砂などの構成をポイントごとに記録して、その割合を出します。そのほか、サンゴに関しては属ごとの割合や白化の度合いも記録します。
この日の荒木ハマサンゴは若干の濁りが…透明度は20~25メートルくらいでしょうか。他の地域の海と比べたら贅沢ですが、喜界島ではこれでも濁っています。
あ!シャコガイ発見!シャコガイもリーフチェックの調査対象です。
2本目の終わり際、やっと日が差し込んで来て海もきれいになってきました!一気に透明度が上がります。
魚類チームは一足先に調査を終えてこのポーズ!
【調査結果】
ここからは調査結果です!2018年からの調査結果も含めて表にしたものをお見せします!
魚類と底生生物は、その日の海況によって数が変動しますが、今年もこれまで確認されてきた生物を見つけることができました。一方サンゴの食害生物であるオニヒトデはこれまで同様、喜界島の調査地点では確認されておりません。また海ゴミは、漁網も含め浅場で3つ、深場で1つ確認されました。
底質はこちらの通りです。前回の調査と比較して側線の若干のズレによる影響からか、サンゴが占める割合が大きく増えておりますが、海底におけるサンゴの被度が高いことが依然として示されております。底質の割合をグラフにしたものが以下の通りです。
サンゴの属ごとの割合は以下のようになりました。↓
それぞれ種類によって好みの環境が異なるサンゴたち。サンゴ研ではこれまでの調査で喜界島に150種類以上のサンゴがいることを確認し、今年の7月に喜界島のサンゴ図鑑を出版したところです。サンゴの種類からその海の特徴も考察できます。サンゴ図鑑の記事やご購入は以下から!↓
たまたま撮影した1枚。この写真の中にもたくさんの種類のサンゴが写っていてサンゴの被度が高いことがわかります。また、白化の割合は浅場で9.68%(9/93群体)、深場で4.04%(4/99群体)でした。
夏場に海水温が上昇すると、サンゴに共生している褐虫藻がサンゴの体内から抜けてしまい、写真のように白く骨の色が透けて見えます。今夏は他の海域でも白化が話題になっていますが、喜界島の調査地点での度合いは上記の通りでした。
調査測線は浅場と深場で映像としても残しておきます。データとともに毎年見比べることで海の変化を追うことができるようになります。深場はスタートとゴール地点を逆から撮影しているため魚が逆に泳ぎます。ご了承ください( ̄▽ ̄)
調査を監修したサンゴ研のチーム科学者からもコメントをいただきました。
・「昨年までの結果に比べ、造礁サンゴの割合が増えました。また、魚類のカウント数が減り、無脊椎生物はシャコガイ類が増加しました。造礁サンゴの割合が増加した点とシャコガイが増加した点については、若干の調査測線のずれがあったためにその影響も考えられますが、測線周囲の状況から海域全体に大きな変化は無いように見受けられます。
また、今年は琉球列島各地でサンゴの白化が確認されましたが、今回の調査では白化したサンゴ群体は多く認められませんでした。
調査結果と測線周囲のサンゴの状況も含め、大きな環境変化や人為的な影響を受けた様子はなく、全体的に健全な状況が維持されている様子が確認できました。」(鈴木)
最後に巨大ハマサンゴの前でサンゴ研の活動理念「100年後に残す」の旗を掲げて集合写真!今年も無事に調査を終えることができました。このように一般ダイバーや地元ダイビングショップ、企業様などと連携して調査を進めながらサンゴに関心を持ってもらいつつ、地域の海を守っていけるように今後も取り組んで行ければと考えております。リーフチェックは来年度以降も継続して実施していきますので、日程は未定ですが参加ご希望の方はお早目にサンゴ研までお問い合わせください!今回調査にご協力、応援いただいた皆さまありがとうございました!
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