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私が読み聞かせ会をしないワケ②

①で
私自身が、読み聞かせ会、おはなし会で絵本を読むことがそれほど好きではないことをカミングアウトしました。

絵本の魅力や読む楽しみを伝えたいときのアプローチ方法も様々なやり方があるということです。読み聞かせ会ありき、ではないということです。

ここで
あまり絵本を読まずに子育てをしていて、子どもが年中(幼稚園)のときに園で行われた私の講演会に半ば強制的に参加させられたママが講演会のあとにくれた感想をご紹介いたします。
長文でした。以下、文章のままです。

「もう今すぐ息子を迎えにいって絵本を読んであげたいです。今までも読んであげたらよかったです。
人のせいにするみたいで嫌なのですが私が絵本を読まなかったのには理由があって、2歳くらいに通っていた集まりで毎回絵本の時間がありました。
うちの子以外みんな座って聞くのに、うちはダメでした。最初から座らなかったり、座ってもすぐ立ってしまいました。
絵本の時間が集まりの最後のほうで、いつも最後に嫌な気分で帰っていました。
それで絵本はうちの子には合わないと思ってました。今日の内田先生の話の中で、大勢が集まる絵本の会と家で親が読むのは全く違うことだと言ってて、目から鱗でした。
私が子どもに読めばいいということは知りませんでした。誰もそういう話はしてくれませんでした。途中で聞かなくなることは、意志のあらわれ、でいい事なんだと言ってもらえて泣いてしまいました。
今は幼稚園で先生が読んでるのをうちの子も座って聞いてるみたいですが、家でも読んであげます。今日はありがとうございました。」

これが、ママの感想です。
そして一例に挙げさせてもらいましたが、似たような内容の感想は度々あります。

挙げた感想は割と長めではありますが、まだ書きたりない感情があるなぁと読みながら感じました。(わかりました)

お子さんが小さい頃に泣きそうな気持ちで、その集まりから帰宅していたんでしょうね。
じゃあ、その集まりにいかなければいいと思いますが、ママ同士のお付き合いがあったり、行く場所がそんなにたくさんあるわけでもないし、子どものために集まりには行くべきだという義務感みたいなものもあったのでしょう。読み聞かせの時間以外は楽しかったのかもしれませんしね。
(このあたりについても話したいことはたくさんありますが、今日は省略)

皆と同じようにできないわが子に対して落胆の気持ちがあり、もしかしたら強く叱ることもあったのかもしれません。
同時に、皆と同じようにさせられない自分の子育てを責める気持ちもおきるでしょう。

そんな、背中にぐんと重いものを背負わせてしまった原因の一つが、「絵本の時間」だったのです。

さて、おはなし会で絵本を読む活動をしている方はたくさんいますが、まさか自分がしている読み聞かせの時間で悲しい思いを持つママがいるなんて考えてみたことはあるでしょうか。

おはなしの時間が皆に喜ばれていると思っているならそれは大きな間違いです。

講演会で出会ったママのことを先に例にあげましたが、実は私にも同じような経験があります。

幼い頃の息子は「良く知らない人の声」の中に明らかに受け付けない類のものがありました。
私は割と早くにその事に気がつける親でした。
私が観察力のある優れた母親だからというわけではありません。
単に、私自身にそういう特性があるためです。
言い方は悪いですが、声の好き嫌いが強くあります。
成長するにつれて、それをやり過ごす術も身につけてきましたので社会生活に支障はありません。
今、中学生になった息子も同様です。

幼い息子と参加した集まりにも読み聞かせの時間がありました。
私は、息子が聞くなら聞けばいいし、聞かなければそれでいいと割り切っていました。

ある日、読み聞かせが始まっても聞こうとしない息子と、読み聞かせの輪からはずれたところで2人で遊んでいると、ボランティアスタッフでしょうか、あるおばさんが近づいてきて、私にこう言ったのです。

「聞かないの?こんなところにいたら、読んでる人に失礼だから、あっちに座ってきて」

私は割とこの頃から、鋼の心臓でしたので、息子の手前、口に出して毒づくことはしませんでしたが、
内心「うるさい、ばばあ」と本当に不快な気持ちになったことを今でも覚えています。
もちろん、失礼結構、そのまま息子の気の済むまで2人で遊びました。

これが、私だから良かった?ものの、こんなことを言われたら言い返すこともできず、言われるまま嫌がる子どもと無理やり読み聞かせに参加するママがほとんどではないでしょうか。

こんなふうに参加して聞いた絵本が子どもの心の何に触れるのでしょう?

それが例え「子ども時代に出会っておくべき名作」と呼ばれるものであったとしても、何か子どもの心に残すでしょうか。

賢い子なら、早い段階から、その場をやりすごす術(座って聞いている姿勢を保つ)を身につけることもあるでしょう。
そんな術を見て、「絵本が聞けるようになった」と勘違いする大人もいるのではないでしょうか。

今挙げた例のほかにも、読み聞かせ会を好まない理由は様々あります。確実に言えるのは、子どもが本当に楽しいと思うもの以外の読み聞かせはなんの意味もないということです。

残念なのは、講演会の感想をくれたママ同様、絵本との出会いが読み聞かせ会やおはなし会で、ここで反応がいいか悪いかで、絵本が好きか嫌いかのジャッジをしてしまう親が少なくないということです。

これは私の考えですが、きちんと聞ける(最初か
最後まで聞ける)かどうかはさておき、おうちでママやパパに読んでもらうのが嫌いな子はいないと思います。
絵本のある生活がその子に馴染むまでにかかる時間や、親がその時間を大切に思っているかどうかの差はありますが、ママやパパに抱っこされながらの絵本の時間が嫌いだという子はいないです。

親に抱かれること、ことばを注がれることを求めない子はいないからです。

私や息子や例に挙げた親子さんのように、読み聞かせ会を楽しめない人間は、少数派なのかもしれません。
ですが一定数います。

また、読み聞かせ会が楽しいからといって、じゃあ家でも子どもに絵本をよんであげようかなと思って図書館で絵本を借りたり、書店で絵本を買う親は、子育て世帯のうちたいした割合ではありません。
絵本は、たまに読み聞かせ会に参加するくらいで良くて、その後は園に入れば先生が読んでくれるし、字が読めるようになって自分で読めるようになってから絵本は読むものだと思っている親が多いのが現状です。

私は絵本の力も、読んであげることで育まれるものがあることも信じています。
絵本の力を借りて、伝えたいことがたくさんあります。
その伝えたいことを伝えるのに、私は読み聞かせ会ではなく、講演会という手段を選択しました。

異論があるとは思いますが、私は断言します。

親から子に読む絵本の時間が何より楽しい。
子どもは親が読む声を求めています。
子どもにとって最も幸せな絵本の時間は、
パパやママが自分だけのために読んでくれること。

読み聞かせ会や私がする講演会も
その一助にすぎません。

私は、私ができる方法で、家庭での絵本の時間について話すことを続けます。
それが、私が読み聞かせ会をしない理由です。

2020.5.21
待ちよみ絵本講師
内田早苗

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