見出し画像

大学は、就職専門学校ではありませんよね!?

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■どの大学でも就活関係のチラシがやたら目につくのですが……

新型コロナウイルスの影響で、今年は人材採用でもオンラインを取り入れる企業が増えています。

つい先日、転職活動中の私の知り合いも、「オンラインで面接を受けた」と話していました。オンラインなら、長時間移動をせずに他都道府県の企業の採用面接も受けることができるので、お金がない学生も、時間のない社会人もメリットがありますね。

ただ、社内の雰囲気が伝わりづらく、出社してみたらイメージと大きく違っていた、というミスマッチを生まなければいいですが。

就職活動と言えば、最近では大学も熱心に学生の就職活動をサポートするようになっていますね。たまに大学での仕事もいただけるのですが、そういうときに学内を見ていると、就活イベントやセミナーのチラシ掲示がとても目に付くようになりました。大学がエントリーシートの添削や面接指導までやっているところもよく見かけます。インターンシップ支援を行う大学も多いようです。

私が就職活動をしていたのは2002年でしたが、当時はこれほど大学のサポートは充実していなかったように感じます。もちろん求人票やOB名簿などを閲覧することはありましたが、それ以外に大学主催の就活イベントやセミナーに出たという話は周りからも聞いたことがありません。

就職氷河期にはそれほど行われていななかった就活サポートサービスは、どうもリーマンショック後から盛んになったようです。

■手取り足取りのサポートは「個の時代」に逆行していませんか

さて、この手取り足取りな大学の就活サポート……。

私は少し違和感を覚えています。「就職に強い大学がウケる」ということで、こういう流れになっているのだと思いますが、本当にそれでいいのでしょうか。まるで大学が就職専門学校のようになりつつあるように感じてしまいます。

いや、私も、「じゃあおまえはちゃんと学問をやったのか」と言われると答えに窮するわけですが、少なくとも当時の大学はもう少し「学問の場」という雰囲気が強かったと思います。

当時はまだ「有名大学に入れば大企業に入れる」という神話が生きていたので、大学自体に何も目的意識をもたず入った学生も多かったはずですが、少なくともいざ身を置いてみたら、学ぶことの面白さにのめり込んだという人は多くいました。

バイトと部活と飲み会に追われて割と不真面目だった私でも、大学は「自分の興味のあることを学べるところ」であったし、実際に印象に残っている講義やゼミがいくつかあります。日本文学科という専攻も、就職のことは一切考えず「何を学びたいか」だけで決めました(就職を考えたら選んでいなかったかもしれません)。

何が言いたいかというと、大学をこれ以上、「就職のためのステップ」に過ぎない存在にしてしまっていいのかということです。

これからは個の時代と言われています。単に偏差値競争を勝ち抜いてきただけで個が埋没した状態では、社会に出たときにもただ企業の中で埋もれていく存在にしかなれません。そういう中で、大学が「いかに学生たちを就職させるか」に必死になっていても、未来がないように感じます。

就職専門学校として「○○会社に○人合格!」と学生をコマのように扱って数で競争していく(そして新たな学生を呼び込む)流れになっていくならば、もうそこは大学ではないと思います。

それよりも、大学では学生たちを「個人」として扱い、それぞれが学びを深め、その学びをいかに社会に役に立てていくかという成長の機会を与えてほしいと思います。単に趣味の学校でもなく、アカデミックな行為がいかに社会を変えることにつながっているかにも、学生たちが目を向けられるような大学であってほしいと思います。

本当に役に立つ、企業がほしいと思う人材は、個をきちんと磨いてきた人でしょうし、起業するなど個人で活躍できる人材も、そういうところから生まれていくはずです。

学生は、「先生や学校の言うことを聞いていればいいだけの生徒」ではありません。学生は学生として自立ができるような大学であってほしいと願います。

といっても、幸い私の周りには「大学でこんなことを学んでいる」と熱く語れる学生も多く、学習支援をしている中学生たちに好影響を与えてくれることを期待しています。

大人がその学びの話を聞いても、面白いと思えることが多く、社会に出たら素晴らしい人材になっていくだろうと思っています。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

▼大西さんご執筆の最新刊はこちらです。


いつも「未来の仕事屋」のnoteをご覧いただいて、ありがとうございます。サポートは不要ですので、そのお金でどうぞ有料コンテンツをお楽しみください!