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日本国不安の研究を読んで20代の調剤薬局店長(薬剤師)が考えたこと

なぜ調剤薬局の青年がフェラーリを買えるのか? そのツケを支払うのは我われ患者である。

Twitterで炎上していたので、気になって正月に読みましたが面白く一気見してしまいました。
特にこれから調剤薬局に就職しようとしている大学生には必ず読んで頂きたい本です。
日本国不安の研究では現在の医療・介護の問題点について、データを用いて述べられており、その解決の糸口についても実例をあげてとりあげられています。
また調剤薬局業界が世間からどのような目で見られているかについても知ることができます。


調剤薬局で勤務して感じますが、医科・調剤・介護でなにが行われているか、問題点は何か、報酬体制はどうか等お互いに知らないことが多いのでないでしょうか?

本書では医療・介護の問題点について分かりやすく述べられています。 

例えば介護では、要支援へ必要な介護予防がされていないという問題について

大東市で要支援を‘’予防を目的にした総合事業‘’へと切り替えてそれを成功させ、介護費の削減に成果をあげた事例について紹介されています。
恥ずかしながら私も全くこの事例のことは知らず、勉強になりました。

本書はただ現状を批判するのではなく、問題解決の事例など解決への糸口が示されてあります。
ただ、調剤薬局に関して示されている章には、至極まとも点だけではなく、補足がないと読者へ誤解を与えかねない点があったので、補足をさせて頂きたいと思います。

薬局調剤医療費の闇

この章で述べられていることはとにかく調剤技術料が高過ぎるということです。
私も調剤技術料は高過ぎると思います。

しかし、調剤薬局業界は調剤技術料以外の報酬が少なすぎて、調剤技術料で稼いだ分を調剤以外の業務にあてている状態です。
例えば、本書でもとりあげられている、服用薬剤調整支援料というものがあります。
これは、6種類以上の内服薬が処方されているものについて、処方医に対して、保険薬剤師が文章を用いて提案し、内服薬が2種類以上減少した場合に算定できるものです。
本書では、これは1回1250円と高いと書かれています。
しかし、これを病院で行うと2倍の2500円が算定できるのです。これは本書ではとりあげられていません。

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また医科(病院・医師)では2種類の薬から合剤(2種類の成分が1つになった薬)への変更でもいい、減薬の効果測定をせず処方時の算定で良いなど、算定基準が甘いです。

さらに本書では調剤薬局での後発品加算は7割までジェネリック薬が普及した現状では廃止した方がよいと述べられています。確かに、後発品加算は徐々に減らしていくべきではあると思います。
しかし、その議論を行うならば、医科の後発品使用体制加算にも目を向けるべきですが、その点については述べられていません。
薬局での後発品の調剤割合が85%であれば、260円が加算されますが、医科では入院期間中の初回のみに限りますが、450円が加算されています。
医科での点数の記載がなく、調剤報酬だけの記載であれば読者に誤解を与えかねないので補足させていただきました。

そもそもなぜこんなにもジェネリックが普及したのか、その裏には後発品メーカーの努力ももちろんでありますが、調剤薬局の薬剤師による地道な努力があったからこそです。

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調剤薬局の薬剤師から開業医へ後発品を使ってもらうように説得に行くという話もよく聞きます。
しかし、未だに先発品しか使わない医師は多いです。

2019年3月からは個別の保険者データが公表されました。
国保組合の保険者平均は69%ですが、医師が加入している医師国保組合では平均61%と平均値を下回っています。

そもそも調剤報酬の膨らみの問題は調剤料なのでしょうか?

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上記のグラフを見ればわかるように、調剤料を含む技術料の増加より、調剤薬局で調剤されている薬剤料の増加のほうが問題だと感じます。(上記グラフはグラフのとりかたがいまいちよく分かりにくいので、もう少し分かりやすいグラフがあれば下さい)

薬剤料の増加にはC型肝炎治療薬などの高価だが画期的な薬剤が増えたためだと言われていますが本当にそうでしょうか?
新薬が出るとすぐに使いたがる医師もいます。新薬は大抵高価です。

また、現在医師不足が問題になっているなか、医師は処方権をどのように小さな形としても譲ろうという動きはありません。1分診察をして、今日もいつものお薬出しときますね。ならば、薬剤師にチェックしておくポイントを指示し問題がなければ薬を渡すようなリフィル処方せんの導入を行っていくべきではないでしょうか?下記のように薬剤師による処方によって、医療費が削減される可能性があるという研究も発表されています。

日本の薬局薬剤師が高血圧患者を対象にカナダの薬局薬剤師と同様の介入を行うと、25年間で20兆5500億円の医療費削減効果が見込めることが、岡田浩氏(京都大学大学院医学研究科健康情報学研究室)らのグループが実施した研究で明らかになった。カナダの一部地域では、処方権を持つ薬局薬剤師の適切な薬物療法の管理によって血圧コントールが改善することが示されており、日本でも大きな効果が期待できるという。

 カナダのアルバータ州では、薬局薬剤師が医師の指示のもとではなく、独立して処方権を持ち、降圧薬の投与開始や投与量変更などの薬物療法の管理を担っている。薬剤師が薬物療法の管理を行った効果を検証したランダム化比較試験「RxACTION」では、医師が処方し、薬剤師が投薬する従来治療群の収縮期血圧が11.8mmHg低下したのに対して、薬剤師が処方を行う薬剤師管理群では18.3mmHgと大きく低下することが示された。薬剤師は医師に比べてガイドラインを遵守する傾向が強いため、血圧値に差が生じたと考えられている。

 リフィル処方や処方のタスクシフトについて書くと長くなりそうなので、また別の機会に書きたいと思います。  


調剤薬局の業界にいて感じるのは高い理想を掲げ努力している薬局とそうでない薬局に差があるということです。
努力もせず、棚から薬を数えて渡しているだけの薬局は点数がとれないようにしていくべきです。

本書では調剤薬局における問題点の解決方法はあまり取りあげられていませんでしたので、

最後に高い理想を持ちこれからの薬局の見本となるであろう薬局について、3社ご紹介したいです。

1社目 きらり薬局

まだ世の中に在宅医療という言葉すら浸透していなかった時から薬を配達し、服薬指導を行って来られ、今現在も365日24時間対応で在宅医療の実施をされています。
また最近では日本で初の保険適用での遠隔服薬指導を実施されています。

https://kirari3.com/

https://ameblo.jp/kuroki0309/entry-12463780437.html

2社目 グリーンメディック薬局 

まず薬局の店舗デザインに目を引かれましたが、
予防トリアージセンターの取り組みが特に素晴らしく、糖尿、血中脂質(コレステロール/中性脂肪)、感染症などが調べられる採血検査や認知症検査の実施。乳ガン検査の関係医療期間への積極的な紹介などをされています。

http://www.greenmedic.net/sp/company/

http://www.greenmedic.net/preventivemedicine/

3社目 梅田薬局

日本初のロボット薬局で、
調剤の自動化、自動薬剤受取機、医療モール内の情報連携を行い待ち時間ゼロ薬局の実現に挑戦されています。

https://umeda-ph.com/

今回紹介させて頂いた3社以外にも、小児在宅医療に積極的に取り組まれている調剤薬局、服用薬剤調整支援を年間100回以上算定するなどポリファーマシー対策に力を入れている調剤薬局など、薬局業界に逆風が吹かれているなか活躍している調剤は多数あります。
コンビニより多い調剤薬局がこれからどうなっていくかが、超高齢者社会を乗り越える上で重要であることは間違いありません。


なぜ調剤薬局の青年がフェラーリを買えるのか? そのツケを支払うのは我われ患者である。

この文言からTwitterでは薬局経営してもフェラーリなんて買えない、医師はフェラーリに乗ってもいいが薬剤師はフェラーリにのってはいけないのか?
など薬剤師業界ではプチ炎上が起きていました。


フェラーリが問題ではなく、これからの超高齢化社会をどうのり切るかが問題です。

薬学部は4年生から6年生に変わりました。6年生になって調剤薬局のなにが変わったの?と国民の皆さんは思うと思いますが、変わるのはこれからです。
6年生の1期生はまだ30代前半で薬局ではまだ若手~中堅のポジションですが、調剤薬局業界の再編に向け皆努力しています。

私もまだ20代後半ですが、医療者として、国民の健康のために調剤薬局薬剤師として活躍していきたいです。急いで書いたので、読み辛い箇所が多数あったとは思いますが、ここまで見ていただきありがとうございます。

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