筋肉づくりのための食事

 筋肉が体重に占める割合は一般的に体重の40%とされており、筋肉は身体の最も多くを占める臓器である。筋肉は、その約80%が水分であり、残りのほとんどがタンパク質である。さらに、筋肉はキログラム重量あたり3~4gの遊離アミノ酸が、タンパク質合成と分解において重要な役割を果たしていると考えられている。したがって、筋肉は身体におけるタンパク質・アミノ酸の貯蔵庫の役割を果たしている。
 筋肉を維持するための栄養素としては、その組成からしてもタンパク質もしくはアミノ酸が最も重要であるが、筋タンパク質合成を強く促進する刺激としては運動が重要である。したがって、筋肉づくりを効率よく行うためには、タンパク質・アミノ酸摂取と運動をうまく組み合わせる必要がある。

1 摂取するタンパク質の質と量
 体づくりのためには、動物性タンパク質のほうが有利である。なぜなら、ヒトが必要とするアミノ酸を最もバランスよく含んでいるタンパク質のひとつに牛乳タンパク質があり、動物性タンパク質と植物性タンパク質のアミノ酸バランスを比較すると、前者は比較的牛乳タンパク質に類似しているのに対して、後者はそうでないものが多いからである。
 運動を激しく行う人では、1日あたり1.5~2.0g/kg体重のタンパク質を摂取することがすすめられており、この値は、一般の人の1.5~2倍にあたる。運動をした場合タンパク質の摂取量を増加することがすすめられる。一般の人の1日あたりタンパク質必要量は1.08g/kg体重と算出されている。
 タンパク質は食事から摂取すればよいが、不足する場合には、市販のプロテイン食品で補うことも効果的である。ただし、筋肉をつくるためには運動が必須。また、過剰に摂取したタンパク質は主に脂肪となって蓄積されるので注意が必要である。

2 タンパク質の摂取タイミング
 運動後なるべく早いタイミングでタンパク質・アミノ酸を投与すると筋肉づくりに効果的である。運動中は、タンパク質の合成は抑制される。運動によりタンパク質合成が増大するのは運動終了後であり、少なくとも24時間ほどは続く。ただし、運動終了2時間後に摂取するよりも、運動直後に摂取するほうが効果があるという実験結果がある。
 また、運動直後の摂食により、体脂肪の蓄積が抑制されることも認められており、運動直後の摂食は筋肉づくりと体脂肪減少の一石二鳥である。
 ただし、レジスタンストレーニングの場合は、運動直前のアミノ酸摂取のほうが運動直後よりも効果的だという実験結果が出た。したがって、レジスタンストレーニング直前にはアミノ酸食品を摂取し、そのトレーニング直後にタンパク質食品を摂取することが筋肉づくりに最も効果的な処方であると思われる。
3 タンパク質と炭水化物の相互作用
 摂取したタンパク質を有効に筋肉づくりに利用するためには、タンパク質と一緒に炭水化物を摂取することが必要である。タンパク質とショ糖を同時に摂取するとタンパク質の同化が促進されることが明らかにされた。ショ糖だけでなくインスリン分泌を刺激する糖質であれば同様の効果が期待できる。また、体内のグリコーゲンが枯渇した状態では、運動による体タンパク質の分解が促進されると考えられるので、グリコーゲンを蓄積した状態で運動負荷をするようにする。

効果的な筋肉づくりには、特に運動後の食事摂取のタイミングを重視しなければならない。実際に、運動トレーニング後30分以内にタンパク質と糖質を豊富に含む食事をとることがすすめられている。また、一般的に、ある程度激しい運動をすると「タンパク質と糖質」を食べたくなる傾向にあるが、これは、身体がタンパク質合成のためのアミノ酸とグリコーゲン合成のためのグルコースを欲求している信号であろう。

参考:「スポーツと健康の栄養学」2002年8月8日 下村吉治

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