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[読書感想]ランチのアッコちゃん

「泣きながらご飯を食べたことのある人は生きていけます。」
あるドラマの登場人物の台詞である。
この本には泣きながらご飯を食べるシーンは無いが、読みながら何故だかこの台詞が頭に浮かんだ。


小さな出版社で派遣社員として働く主人公・三智子は、四年間付き合った彼氏から一方的に別れを告げられたショックで食欲を失っていた。節約する為にいつも持参している手作りのお弁当も喉を通らない。


そんな三智子に対して突然声を掛け「一週間、ランチを取り替えっこしましょう。」と提案する黒川敦子営業部長(通称アッコさん)。
え、なんで?という三智子と読者の戸惑いもお構いなしにアッコさんは毎日淡々と、三智子の手作り弁当と交換にランチに行くべき場所が記された紙と千円札の入ったポチ袋を手渡してくる。

アッコさんは背中で語るタイプの上司だ。優しい言葉で励ましたり、相談に乗ってくれたりはしない。喋り口調に関しては素っ気なく感じるくらいだ。
しかしアッコさんの導くランチのお店はどれも刺激のあるもので、アッコさん自体も生き生きとバイタリティーに溢れている。そんな毎日のランチで少しずつ三智子の気持ちが上を向いていく。

元気が無い時こそ、美味しいご飯を食べるべきなのかもしれない。
美味しいご飯が身体を癒し、心を潤し、新しい思考に導いてくれるのだ。
人生に疲れたらまたこの本を開こう。
そして美味しいご飯たちに励ましてもらおう。


ランチのアッコちゃん
柚木麻子
双葉文庫

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