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「推定相続人の廃除」って何?【今から始めよう!生前整理】

「子どもたちのうち、長年家庭内暴力を奮っていた次男だけには遺産を相続させたくない……」
「長年浮気ばかりして、まったく家庭を顧みず迷惑ばかりかけていた夫には遺産を渡したくない……」
など、「自分が死んだら、この人には絶対に私の遺産を渡したくない!」と、考えている方も中にはいらっしゃると思います。

通常、どのような事情があったとしても、
法律で認められた相続権は発生します。
また、「○○には遺産を相続させない」という遺言書を残したとしても、
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分が認められます。
つまり、遺産を相続することができるのです。

ただし、条件付きではありますが、
ひとつだけ、相続人にならないようにする方法があります。
それは、「推定相続人の廃除」という制度です。
この制度は、将来相続人になる予定の推定相続人から相続権を奪う、つまりは、相続から外すことができる制度です。
なお、この制度の対象者は、「遺留分を有する推定相続人」(被相続人の配偶者、子とその代襲相続人、父母、祖父母)となるので、遺留分を有さない兄弟姉妹は対象外となります。

この制度を使うには、所在地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
そして、被相続人が生前に行う場合は、「生前廃除」といいます。
申請を受けた家庭裁判所は、申請をした被相続人はもとより、申し立てをされた相続人本人などの関係者から話を聞き、事実確認を厳正に行ってから審判を下します。
申し立てが認められれば、廃除が成立し、相続権が奪われることになります(遺留分も請求することができなくなります)。

また、「推定相続人の廃除」は遺言でも行うことができます。この場合は、「遺言廃除」といいます。
この方法では、被相続人の死後に相続が開始された後、家庭裁判所に廃除を申し立てる手続きを、遺言執行者が行うことになります。

生前のうちに安心しておきたいと願うなら、死後に審判が下される「遺言廃除」より、「生前廃除」を実施しておくほうが良いでしょう。

ただし、実際のところ、「推定相続人の廃除」が認められる確率は、決して高くありません。
特に、「三男は嫌いだから」「長女はほとんど実家に帰ってこないから」などといった感情的な理由だけでは認められないでしょう。
虐待や重大な侮辱、著しい非行などにあたる事実が必要です。

また、「推定相続人の廃除」は、取り消すこともできます。
例えば、長年親に家庭内暴力を奮ったうえ、財産まで持ち逃げした息子を推定相続人から廃除したとします。
その後何年か経ち、すべてを改心した息子が戻ってきて、深い反省と謝罪をした結果、親がその息子を心から許して和解しました。
その場合、廃除を申し立てた被相続人(この場合は親になります)が「息子をまた相続人にしたい」と、家庭裁判所に「推定相続人の廃除の取消し」を申し立てることができます。
これもまた、被相続人が生前に行うことができますし、遺言で手続きをすることもできます。

以上が、「推定相続人の廃除」の大まかな内容になります。
ただこれは、最後の手段だと思いたいです。
その前に、一番望まれることは、
「生前のうちに心から許して仲直りできること」です。
事情にもよりますが、家族間での心のわだかまりがあれば、
元気なうちに後悔しないように話をすることで解消できればと願います。
心の整理も、大切な【生前整理】です!

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