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#10 僕だもん!それ考えたの僕だもんんんんんん!!!!


2019年9月某日

北里アクアリウムラボは11月の学祭の特別展示にて、ヒカリキンメダイという変わった魚を展示する方針を決めた。後輩がその方針を打ち出した。

ヒカリキンメダイ

ヒカリキンメダイはその名の通り、発光する魚である。眼の下に大きな発光器があり、発光バクテリアを共生させている(写真の眼の下にある白い部分)。この発光器を反転させることで、光を点滅させる。

暗闇で見ると、非常に幻想的だ。

この幻想的なヒカリキンメダイを展示するという。私はこのプロジェクト自体には参加しておらず、単にアドバイスをする程度にとどまっていた。私自身、引退を間近に控え、最後の展示作りで精いっぱいだったからだ。


しかし、ある日とある記事(ナショナルジオグラフィック)を目にした。

その記事には、ヒカリキンメダイが群れを作る為に光っているのではないかという研究結果が記されていた。

「従来、魚は主に視覚に頼って群れを作るため、群れの形成には光が必要であり、だから夜間や深海で魚の群れがめったに見られないのだと考えられてきた」という。また、発光能力は獲物を見つけるため、または捕食者をあざむくために使用している生物がほとんどだと考えられている。

そんな中で、「群れを作る為に光っている」という研究結果は、非常に興味深い。

この記事を目にして間もなく、ヒカリキンメダイがアクアリウムラボにやってきた(現在はバックヤードにいるので展示していません)。完全暗室に搬入され、ラボスタッフみんなテンション爆上がり。ミニ水族館のスタッフである以前に水族館オタクである僕らは、ウキウキでヒカリキンメダイを観察していた。

その時、ふとあの記事を思い出した。

「彼らも光を使って群れを作るのだろうか・・・?」

偶然、蓄光機能を持つ腕時計を持っていた。

あっイケるんじゃね?と思い、サンゴ水槽で使用している強力なライトに腕時計をかざして蓄光、その後、ヒカリキンメダイに向けて腕時計をかざしてみた。すると・・・・・


うえぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?めっちゃついてくる!!!


ヒカリキンメたちは、私の光る腕時計の方へついてきた。嘘だろ?と思いながら、何回も、何十回も、時間をおいてさらにかざしてみた。何度でもついてくる。「あっ、これはガチだ」と思った。


その時、また思い立った。ひらめいた。「また」というのは、いつもそうなのだ。僕は深く考えて展示を作り上げたことはほとんどなく、ふとした時にハッとひらめいて作り上げることがほとんどなのである。そう、この時もいつものクセが出た。思いついてしまった。素直に感動だけしていればいいものを、このヒカリキンメダイの行動をそのままお客さんに感じ取ってもらえる展示を思いついてしまった。

そこで、後輩にナショジオのヒカリキンメダイ研究の内容を伝え、実際に僕の腕時計を用いてヒカリキンメダイの行動を見せた。

うぇぇえぇえええええ!?すげえええええええ!!!

全く同じ反応で笑った。そして具体的な展示案を提案した。


ヒカリキンメダイが蓄光の光に反応してついてくる行動に焦点を当て、蓄光塗料を棒の先に塗り、蓄光して光らせ、それをお客さんに持ってもらって水槽の前でかざしてもらう、という一種の体験型展示である。

パネルの文字で長々と押しつけがましくヒカリキンメダイの行動について紹介するより、この展示を行えば「ヒカリキンメダイは光る」「ヒカリキンメダイは群れを作る為に光る」ということが一瞬でわかるのだ。

こんな展示方法、恐らくどこの水族館でも行っていないだろう。というか、出たばかりの記事なのだから、まずないと言っていい。

僕はこのプロジェクトに携わっていなかったが、後輩たちは快く僕の考えた展示案を受け入れてくれた(というかめっちゃ気に入ってくれた)ため、このやり方で展示することとなった。

その後、後輩たちは、この蓄光塗料をヒカリキンメダイのイラストが描かれた棒の、発光器の部分に塗って使用した。ヒカリキンメダイの棒、略してヒカキン棒!

色々あったが、なんとか展示を作り上げた。


そして学祭当日、このヒカリキンメダイ展示は大好評を博した。正直同時に展示していたシーラカンス標本以上に人気だった。

この学祭、一般の方のみならず、水族館のスタッフさん、研究者の方など、いわゆる業界の方々もたくさん来てくださった。

その内の一人に、沼津港深海水族館の元館長さんである石垣幸二さんがいらっしゃった。沼津港深海水族館を立ち上げた一人でもあり、世界中の水族館等へ生体を提供する有限会社ブルーコーナーの代表も務めている。

水族館、生物オタクの某後輩ちゃんは大興奮。そのくらいの大物の方ということだ。

そんな石垣さんが、なんとFacebookにアクアリウムラボのことを書いてくださった。しかも、シーラカンスの記事と同時にヒカリキンメダイのことも書いてくださったのだ!!

なんてこと・・・ありがとうございます・・・!感謝しつつ、Facebookを閲覧させていただいた。さあ、なんて書いてあるのだろう・・・!わくわくしながら見てみると・・・・

シーラカンスについて(Facebook)

ヒカリキンメダイについて(Facebook)

今回特に気に入ったのがヒカリキンメダイの展示。光を利用し仲間とコミュニケーションを図るという情報を得て、手作りのヒカリキンメダイに100均で買った蓄光塗料を塗って水槽で泳いでいる仲間に見せたらどう反応するかをお客さんに体感してもらおうというもの。彼(学生)のアイデアだそうだ(Facebookより引用)

彼のアイデアーーーー彼・・・・・?

そこにはニコニコ笑顔の僕の後輩の写真が。僕が展示案を提案した後輩の一人だ。

さらに、

「1番良かったよ」と声を掛けさせてもらいました(Facebookより引用)

とも。


・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・



・・・・・俺えええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!

その展示考えたの俺ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


いや!!いや!!!!展示作るのは後輩の仕事だったから任せていたけども!!!!展示作ったのは誰かと言えば、後輩であることに間違いはないんだけどもォ!!!!!!


後に判明したが、別の後輩が、後輩だけでアイデアを出して作ったものだと勘違いし、石垣さんにそう伝えていたそうだ。

後輩たちもめちゃくちゃ頑張っていたし、当然賞賛されるべきだ。私自身、よくやったと何度も褒めた。後輩が褒められたのは素直に嬉しい。


でも!!展示を考えたのは絶対に僕です!!!!!!僕なんです!!!!!!


ヒカリキンメダイの展示は本当に大好評で、その日に来館者にアンケートをとっていたが、約120枚中90枚以上がヒカリキンメダイの絶賛で埋め尽くされていた。


多くの方にヒカリキンメダイを覚えていただけたこと、心に刺さるような展示を考えられたこと、それだけでも十分やりきったし、本当に誇れることだ。実際、このどの水族館でもやっていない展示案と、アクアリウムラボの展示をたった1年で大改造して、多くの方からお褒めの言葉をいただいたことは、ずっと私の誇りである。


もう十分やり切った、そう断言できる。

だが、ひとつ、心残りがあるとするのならば言わせていただこう。




ヒカリキンメダイの行動展示を考えたのは僕です。





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Aquarium staff/学芸員 仕事内容は一切話しません 映画と水族館中心で更新します

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