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気だるさと、チルの解剖

なぜもこう、「気だるさ」というのは
かっこよさというか、チルを演出してくれるのか。

私の好きな曲に、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」がある。
歌詞、曲調、PVなどなどシャレ散らかしているのだが、
何がこんなに惹かれるのか。
Suchimos、iri、Indigo la endなどなど、
いわゆる正統派な感じではなく、
湘南とかでいい風ふかしてそうな、ちょっとだけタイムスリップしたような
雰囲気を醸し出す歌手のチルさ。

だいたい女性が惹かれちゃうのも、
気だるい男なのだ。
優しい人がいい、かっこいい人がいい、知的な人がいい、とか女は言う。
しかし、結局、条件を満たしているどころか、足りないところが多いのに
「気だるさ」を身に纏う男に惹かれてしまうのだ。
ちょっと面倒くさげに起き上がって、とりあえずキスをしたり、
興味なさげな目をしながらこちらの話をうんうんと聞いていたり、
焦点の合わない視線を宙に投げる仕草など。

タバコもその類だろう。
酒の場でワイワイと吸うタバコもあるが、
大概の場合、気だるさと一緒に煙を吹き出して、
その煙はより一層その場を、チルく演出することになる。

なぜ気だるさが場を、チルく演出させるのか

場のスパイスなのだろう。
おしゃれで耳障りのいい、のらせてくれる音楽。
でもそれだけじゃ足りなくて、
気の抜けたような闇をちょっと感じさせてくれるもの。
かっこよくて優しい理想に近い男性、
でももっと知りたいと思ってしまう沼をちらりと見せる人。
幸せな空間も、熱のある仕事の場もタバコの存在は
裏の部分を煙が運んでしまう。

美しく、切なものだけでは物足りず、
私たちの見ようとしない部分をスパイスとして運ぶ「気だるさ」。
これは場の雰囲気をこっそり、しっとり、侵食していって、
私たちは味をしめる。
このなんとも言語化しにくい、ぼんやり、惹かれてしまうものが
「チル」くなるのか。な?

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