堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
122.遠征 恩賜 上野動物園

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 ホテルを出てコユキは上野動物園まで続く、湖畔を一人歩いていた。
 不忍池しのばずのいけの中には、色取り取りのスワンボートが浮かんで、お客さんの訪れを待っていたが、今のコユキには白鳥ちゃん達に答える事は出来ないのだ。
 
 思わずコユキの口を吐いて出た言葉は、

「もう、よしおちゃんも来れれば良かったのにな~ ……ちぇっ! つまんないのぉ~」

であった。

 本人が目の前にいない時には、存外に素直なコユキの姿を再発見の瞬間であった。
 まぁ、面倒臭い事には違いが無い、小娘でもあるまいに面倒な事この上ないデブチンである。

 そんな甘酸っぱい酸味を帯びたコユキでも、歩き続けていれば、普通の人と同じ様に上野動物園へと辿り着く事が出来た、良かった良かった。
 コユキはおもむろにスマホを取り出して善悪に定時連絡を入れる。

”アタシコユキ、今上野動物園の正門前にいるの”

 慌てていたのだろうか、時を置かずに続けざまに、もう一度ラインを送ってしまった。

”アタシコユキ、今あなたの後ろに、いるのおおおおぉぉぉ!! ”

間も何も考えずに、一回だけ突然送った偽メリーさんは、当然の様に何の驚きも与える事は無く、

『はいね、がんばってね』

という、定型文以下の超塩い返信を、善悪に送らせてしまったのであった。

 スマホで時刻を確認すると、出発前にオルクスが特定した顕現時刻まで、まだ一時間以上の余裕があった。
 コユキは東園の動物達を流し見しながら、目的の西園カバ舎へと向かうことに決めた。
 ゆっくりと向かってもかなり早めに着いてしまう事になるが、顕現と同時に祓うはらうに越した事は無い。
 三十九歳にもなって、今更物珍しい動物など見当たらなかったが、健気で純粋な彼等の姿に癒されつつ、歩を進めるのであった。


『ふぅ、俺の方は終わったようだ…… ユイはどうだ? 』

『うん、うちも終わった? かな…… 力が溢れ出してきたよ』

『そうか、なら、早速救世ぐぜをはじめよう、早いに越した事は無い』

『だね♪ 急いては事を仕損じるっていうもんね♪ 』

『……いや、それは、ま、まあ良い! 下がっていろよ』

そう言うとジローは昨日と同様に、後ろ足で立ち上がった後、両足でコンクリートの壁に向かって倒れこむのだった。


「「「キャーっ! 」」」

「た、たすけてー! 」 「バケモノだぁ────! 」

「!! 」

 ゾウ舎の向いで、腕を組んで物思いにふけっていたコユキは、人々の叫び声で我に返った。
 ここにあるリボンを模した、動物達の鎮魂碑、その横に掲げられた、過去の悲劇に思いを馳せている間に、随分時間が経過してしまっていたようだった。

 スマホを取り出して時刻を確認すると、案の定、顕現の予定時刻を越えた所であった。

「くっ、しまった、罠だったのか! 」

 どんなパラノイアか知れないが、コユキは本気で口惜しそうにしている、困ったものだ。
 とは言え、

「こうしちゃいられん! 急げ────! アヴォイダンス」

辛うじてまともな思考が残っていたようである、一安心だ。

 カバ舎の方向から、入園客がなだれをうって逃げてきていた。
 その人の波を縫う様に、残像を残しつつ、グングン進んだコユキは、二体の巨大生物の目の前も、音も無く通り過ぎていく。

 通り過ぎた先の細い通路を左に入り、周りに人影が無い事を確認すると、おもむろにツナギを脱ぎ始めた。
 脱いだツナギを丁寧に畳んで、アライグマのキャップをその上に重ね、スマホと財布をツナギの折り目に隠してから、植え込みの中に潜ませた。
 それはそうだろう、都会は恐い! これは全田舎者共通の認識なのだから……

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