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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
239.妹たちの悪巧み (挿絵あり)

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 私は大声で公園内に響き渡るように言うのだった。

「リョウちゃん! 私だよ、リエだよ! お願い! 話しがあるの、姿を現して頂戴! ユキ姉の事でお願いがあるのぉ!」

 叫んで数十秒待つと、漸くようやくユラユラと蠢いて存在感を示す存在が公園の植え込みの中に一つ……
 ツツジだな、今回化けたのは深山ミヤマツツジであったようだ。

「なんだぁ~、リエちゃんだったのぉ~、ビックリしてぇ隠れちゃったよぉぅ~」

 言いながら、植え込みから一際大きく背を伸ばした人型の樹木。
 その樹木は徐々に全身を覆った葉やツタ、ツルを自分の体に集束させながら甘ったるい話し方で言葉を紡いだ。

「なんかぁ~、急に魔力? 聖魔力がこっちに来たなぁって思ったからぁ~、てへぇ、隠れてたんだぁ~」

「うん、ごめんね! それより悪巧みの相談よ! ユキ姉結婚大作戦って考えたんだけど! 乗る? リョウちゃん!」

「え、なにぃ? 面白そうねぇ~、聞かせてぇよぉ~!」

 何とかリョウコ、次姉じしの了解を得られたようだ、ふぅ、やれやれだね!

 ついでに言って置けば、私の次姉、リョウコのスキルは『ギリースーツ』。
 周辺の植物、植え込みなんかの見た目そのままに擬態して、生物反応を『植物』にしてしまう能力だ。
 旦那の陸上自衛隊隊長との親和性が非常に高い、はっきりいって上位互換、レンジャー的な能力だと思う。
 
 ただし、条件が厳しいんだよね。
 植物に擬態するためには、大地に地肌を触れていなければイケないらしい。
 その証拠に、今も脱ぎ捨てた靴下とパンプスをエイホエイホ言いながら履いているリョウちゃんの姿が目の前にある。

「なんか急に魔力? 聖魔力かぁ~、近付いてきたからぁ~、慌てて子供達守っちゃッたぁよぉ~、リエちゃんだったんだねぇ~、んでコユキ結婚させるのぉ、どうすんのぉ~♪ 聞かせてよぉ~」

よっし! 乗ったっ! 掛かった!

 内心で小躍りしながら、私はリョウちゃんがコユキにパソコンを買い与え無い様に何度も何度も念を押して、再びロードランナーを使い猛スピードで、大茶園のど真ん中に建つ実家へと戻り他の家族たちへの根回しをしたのであった。

二時間ほど過ぎた……

 リョウコが私の子と自分の息子を連れて、わざとらしいほどゆったりとした足取りで帰ってきたのだ。
 長姉ちょうしコユキが言った、ニヤニヤと嫌らしい表情をその顔一面に浮かべながら……

「リョウコぉぅ~! 待ってたのよん♪ ねぇ、お願い! パソコン買ってよぉぅ♪」

 イケるか? 大丈夫か? リヨウちゃん…… 頼む! 頑張ってぇ!

「えっ!? ぱ、パソコン? ああー、パソコンかー! えっと、高いからね、えっと高いよね? ちょ、ちょとぉ待ってよぉう!」

 へ、下手か? なんだよ! その大根振りは! いくら何でも酷くね?
 私は思うのだった、んがまだ願ってもいたのである、ナムサン、っと!

「あ、あのねぇ、家の旦那さん、えっと、うーんと…… 最近、給料減っちゃって~ぇ! アンマ、余裕ないとか有るとかぁ? みたいな感じでぽっくってえぇ~」

 ダメだ…… リョウコはそうだ! 嘘付けないタイプ、日本人にメッチャ多いタイプ、ってか血液型、流される属性、真面目がウリのA型であったのだ。

 やむをえん! 私が参戦して煙に巻くしかないか。
 そう思った瞬間、反射速度だけは鋭いユキ姉がリョウコの言葉に食いついたのであった。

「えっ! 給料が、減った? アンタっ家ってジエイタイ、親方日の丸なのに? んな訳ないわよねぇ? はっ!! 若しかしてアンタの旦那、とんでもない事しでかしたんじゃ無いでしょうねっ!! ま、まさか、児ポ法…… 違反とか? じゃ、ないでしょうね……」

 救いを得たようにちょっと阿呆目のリョウコが勢い良く言うのであった。

「そ、そうなのよぉぅ~! えっと、その『ジポホウ』違反でぇ~、減俸処分? ってヤツになっちゃったのよぉぅ~、家の旦那さん! んで、んで、お金無いのよねぇ~、ご、ごめんねぇ」

 コユキは表情を固めまくって言った……

「…………ねぇ、リョウコ…… アンタ自身は…… えっと…… うん! 本当にそれで良いの? 辛かったら言って良いんだからねっ! てか、言わなきゃ駄目よ! いつでも帰ってきて良いんだからね、ね!」

 愛する妹の旦那さんが変態だと理解してしまったコユキの脳内はパニックその物であった……
 一方児ポ法が何だか分かっていないリョウコは普通に、

「え? ウン大丈夫だけどぉ~、なんで?」

「…………あ、ああ、そ、そうなの? まあ夫婦の間のことだから、良いなら良いんだけど……」

「?」

 中々にズレている姉二人の会話であった、ギリギリセーフ。

ユキ姉はその後も、父ヒロフミ、母ミチエ、叔母ツミコ、祖母トシコの順に次々とパソコンを強請ってゆすっていたが、生憎あいにく私の打った先手のお蔭で、誰一人首を縦に振る事無く、終いには何をとち狂ったのか私とリョウコの子供たち、幼児の甥と姪にまで、買ってくれと頼む始末である、残念至極……

 ん? 皆に断られて落ち込むかと思っていたユキ姉なのだが、そんな素振は見せていない?
 アライグマのキャップを被ってどこかに出かけるのか?

 し、しまったっ! 根回しが洩れていたっ! よ、善悪ヨシオちゃんをぉぉぉ!

アヴォイダンス回避の舞

 スススススと残響が虚しく遠ざかる。
 私は膝を着き絞り出すように呟いた。

「くっ! 最早追いつく事は無理…… む、無念!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!



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