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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
237.馬子にも衣装

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 しかし流石はコユキである、目の前にあった会席料理は綺麗に消え去り、後はデザートが運ばれてくるのを待つだけだった。
 またまたマスクを着けたコユキは横に並んで座っている叔母ツミコと母ミチエに話しかけた。

「ねえ、おばさん、おかあさん、ここってお代わり禁止システム? なのん?」

「ちょ、馬鹿」 コソッ

「?」

 キョトンとするコユキと対照的に顔を首まで真っ赤にしながらオタオタする叔母と母。

「あはは! コユキさんはユーモアのセンスも抜群だよね! ははは、今の面白かったよ、傑作だ!」

「む?」

 真剣に身内と話していたのに笑われてしまい途端に機嫌が悪くなるコユキ、と言う事は胃の内容量が不足している事の証左なのだが、目の前の男はそれを知りはしなかった。

「父さんと茶糖さん! 僕コユキさんと二人で庭を見てきて良いですか? もっと色々お話ししてみたくて!」

「そうだな、どうですか、茶糖さん? ここは若い物同士で?」

「あ、ええ、そ、そうですね、そうしなさいよコユキ!」

 言いながらコユキのマスクを無理やり奪い取る叔母ツミコであった。

 ご飯の途中で散歩とかなんなの!
 内心で軽く切れながらも仕方なく草履ぞうりを履いて庭へと向かうコユキであった。

 その後姿からは、現在進行形で不機嫌メーターがグングン上がり続けていることが容易に見て取れ、こんな状態のコユキ相手に餌付け用の食べ物も持たずに散歩をするなど、コユキを良く知る者の目から見れば、自殺以外の何物でもなかった。

 最悪の事態に向かわなければ良いが……

 そもそもコユキみたいなもんが、なんでこんなちゃんとした席についているのであろうか?
 そこから話さねばなるまい。
 時間軸を数時間巻戻して観察して見る事にしよう。


 朝、漸くようやく早起き気味に頑張って照らしているアヴァドン、所謂いわゆるアポロンの『おはよう!』の挨拶よろしく、大茶園の早朝に響き渡る黄色い歓声は、些かいささかワザとらしかった。

「カ~ワ~イイ~!」

「うん! 似合ってるよ、良いじゃーん! 格好良いよユキ姉!」

 最初の甘えた様なのがコユキのすぐ下の妹、リョウコ、次の元気イッパイな声が下の妹リエの物である。
 因みちなみにリョウコは可愛い系、リエは綺麗系な人妻、子持ちの妹たちである。

 ボリュームマウンテン山盛りお肉さんのコユキは、真っ赤な和装、菊の模様をあしらった振袖に、色違いのこちらもあでやかな菊の帯に身を包んで恥ずかしそうに言った。

「えー変じゃない? 正直に言ってよねぇ~、他人の評価だけが正しい評価なんだからさぁ~」

 ふむ、中々に色即是空しきそくぜくう空即是色くうそくぜしき的な事を言ってんじゃないの?
 流石はこの近所で一番でかいお寺さん、『幸福寺』の住職、善悪と冒険者パーティー『聖女と愉快な仲間たち』を組んでいる聖女様らしいと言えばらしい、のである。
 因みちなみに専門は対悪魔戦という、ゴリゴリの攻略勢でもある。

「ね、ねぇ、リエ! もっかい見せて、あの写真!」

「はいはい、 ほら、 やっぱりこの人格好良いよね」

「むふうぅ~!」

 コユキにせがまれリエが開いて渡したのは、お見合い写真であった。
 そこに写って居たのは可愛らしくも頼もしい、白衣に身を包んだ青年医師のややはにかみ気味の美しい姿であった。
 今まで何度もお見合いの話しを受けたコユキであったが、ここまで話が進んだ(会うだけ)事はなかった。

 理由は大きな体と裏腹に、存外に臆病なコユキが色々ネガティブに考えを巡らし、常に屁理屈へりくつで家族たちをけむに巻いてきたからである、ドロン。
 今回がここまで辿り着いたのは奇跡の様な運命と言えよう。

 リエは思う、あの時甘やかさなくて本当に良かった…… と。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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