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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
651.サタナキアの腹心達

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「クゥッ、ニセモノ、ダッタ、クセニィー」

「それは謝るっ、本当に悪かった、ほれこの通りだ、だがな心配は要らぬ、オルクスよ喜べ、レグバから話を持ちかけられたのだ! ルキフェルのアートマンを我が引き継ぐよう、あの運命神達から指名されたのだぞ! 嘘から出た真、とは言わんが我、サタナキアはお前が信じていた通りの魔神王になるのだ! さあ、今までの事は水に流して再び共に歩もうではないか! 我が全幅の信を置くオルクスよ!」

「バッカッ! ソンナ、タンジュンナ、ハナシジャ、ナイゾッ! リエピダッ!」

「ほっ!」

 じゃれ合いの様にも見える二柱の追いかけっこを唖然と見つめていた一行の中で、アスタロトが呟きを漏らす。

「本当にルキフェル兄上瓜二つじゃないか…… 生き写し、だけじゃなくて魔力量も結構、いやいや、それ所じゃ無いぞあれ、我やバアルと同じ位あるんじゃないか?」

 この言葉にバアルも冷静に返す。

「正確には妾以上アスタ未満って感じかな、アヴァドンと拮抗きっこうしてて、コユキ姉様の半分位だね…… 以前はあんなに無かったと思うけど、モラクス、どうだい?」

 問い掛けられたモラクスは顎に拳を当てて思案しながら答える。

「ふむ、確かに…… もっとこう控えめな魔力しか感じませんでしたね…… なんでしょうか? んまあ、兎に角、兄者を止めて来ますね、このままじゃ話も出来無そうですし、おぉっ!」

 言いながらオルクス達に近付こうと歩き出したモラクスの前に、突然姿を現したのは三柱の悪魔であった。

「申し訳ありません、我が主に余人よじんを近づけないよう申し付けられておりまして、これより先にお進み頂く訳には参りません、どうかお下がりを、モラクス卿」

「アモンか…… それにプルスラスとバルバドス…… 下がらぬと言えばどうすると?」

「不本意ですが力ずくでお下がり頂く事になります、アムシャ・スプンタの皆様は主のお気に入りです、傷を負わせる事ははなは遺憾いかん…… どうかお引きくださいませ」

「ほう、面白い冗談をぬかす、お前あれだな、道化って奴だろう?」

 シヴァが目を細め、口元を挑発的に歪ませた。 
 アモンと呼ばれたふくろうの顔に狼の上半身、大蛇の下半身を持つ悪魔はシヴァに微笑を向けて答えた。

「貴方はアムシャ最強の魔王ですよね? 昔の噂なら知っていますよ、お強かったのですってねぇー、その頃は、うふふふふ」

 プルスラスと呼ばれたライオンの顔で熊にまたがった悪魔の前にはパズスが、バルバドスと言う猟銃を持つ狩人の姿の悪魔の前にはアヴァドンがそれぞれ進み出て対峙するのであった。

「パズス、シヴァ、アヴァドン、待て! 挑発に乗るなっ! 我々は戦いに来たのでは無い! 主の旅立ちに立ち会う為、それのみを目的としてこの極寒の地に戻ったのだろう? 堪えよ、堪えてくれっ!」

 モラクスの無念に満ちた声を聞いたパズスとシヴァは悔しそうな表情を浮かべて一歩後退あとずさったが、アヴァドンは未だ猟銃を構えたバルバドスから眼を逸らさないままで兄に答える。

「しかしモラクス兄、これは我々の強さに対する挑戦に他ならないだろう、こんな侮辱を看過かんかすれば我等兄弟の名誉は地に落ちる事は明白だろう、それで良いのか? 良い筈は在るまい! 我輩は引かぬっ! 誇りを捨てぬっ! 我輩は栄光に満ち満ちたアムシャのスプンタ、いいやスプラタ・マンユの一員なのだっ!名誉に対する挑戦からは逃げないっ! 我輩は太陽の牽引けんいん車、明けの明星、ルキフェル様を一心に追い続ける者であるっ! 逃げる訳には行かないのだっ! マラナ・タ!」

 この言葉を聞いたパズスとシヴァは先程一歩下げた足を再び進め、殺気の篭った視線をプルスラスとアモンの二柱に向けて固定させたのである。

 ポンッ! × 3

 一触即発っぽかった空気を一転させたのは、パズス、シヴァ、アヴァドンの肩に同時に置かれた三者のてのひらであった。

 その三者とは、魔神たるアスタロト、その兄で現役の神でもあるバアル、そして自称、魔獣神であるフンババの三柱である。
 
 アスタロトが額の第三の眼を見開きながらパズスに言った。

「すまん鉄壁よ、今回ばかりは譲ってくれい! このガキ、我を前にして力ずく? とか何とかほざいたであろう? 魔神の沽券こけんに関わる事態である! このアスタロトに一つ貸してはくれまいか、誠に済まぬが借りておく、な?」

 バアルは全身から灰色のオーラを噴出させた後、そのオーラをグニャグニャと全身に纏わせながらシヴァに語り掛ける。

「ごめんねシヴァ、さっきから君に話しながらこのキメラは妾に向けて殺意を送り続けて居たんだよねぇ、先にやらせておくれよ! もし妾がこのゴミにやられちゃったら敵を討ってくれよ、頼むよ、ねえ、良いだろう?」

 肩越しに振り返ったアヴァドンには巨大な魔猿、大体三メートル位に大きくなったフンババが渋めの声で告げる。

「アヴァドン、俺が先発しよう…… 俺が打ち込まれた時はお前に中継ぎ、いいやクローザーを任せたい、良いだろう? と言うかお前がこの『聖女と愉快な仲間たち』の守護神だ! ふふふ、後は任せた、って所だな♪」

 この三柱の神レベルの悪魔の言葉は殊の外ことのほか兄弟達の心に響いたらしく、頑固一徹っぽかったスプラタ・マンユの三兄弟は揃って数歩下がって道を譲ったのであった。

 ズイッ! × 3


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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