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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
554.準備万端

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 翌朝、朝食の席でコユキは善悪に聞いた。

「善悪、今日の予定は? 特に無いんだったら次のレグバを迎えに行くけどさ」

 善悪は三角巾に割烹着姿で配膳しながら答える。

「午前中にアルテミス用のソフビが届くけど、そっちは拙者に任せて貰っても構わないでござるよ」

 コユキは表情をパァッと明るい物に変えて言った。

「おお、遂にアルテミスちゃんが復活か! 大事じゃないのよ、アセディア、イラ、グラ、犬っころ共の鎖、逃げれない様にけいの紐に変えて来ておいてよ、にひひ、楽しみだわん」

「口白…… 哀れな奴……」

 アスタロトはクロシロチロの味方の様だ。

 フェイトとフューチャーを振り返ってコユキは言う。

「次の神様って遠いの? どう?」

 フェイトが首を振って答えた。

「次は東、東京じゃよ」

 フューチャーが補足だ。

「レグバの名前はデスティニー、調布市の深大寺じんだいじの裏、植物園の中にいるよ」

「ほー、あのお蕎麦で有名な名刹めいさつね、何よ今度は割と近いじゃない、午後からでも行けそうだわね…… 善悪やっぱりアタシも口白が折檻せっかんされる所、じゃ無かった、アルテミスちゃんが復活する所に立ち会う事にするわね、立ち合い出産、いいえ立ち合い折檻よ!」

 折角言い直したのに…… 結果、折檻が見たいのが丸分かりであった、サディスティックだ。

 善悪も否は無かったらしく軽い感じで頷きを返し準備が整った朝食タイムになったのである。

「こんちゃー、あっ! お届け物です、大きいけど軽いですよ! 三個口ですんであと二つ持ってきますねぇ!」

 緑の衣装に身を包んだ配達員から荷物と伝票を受け取ったコユキは、善悪のスタンプ式ハンコでポチっていた。

 駐車場と庫裏を往復して三個の荷物を届け終えたゴブリンはゴブゴブ咳き込みながら戻って行った。 

 コユキが独り言を呟いた。

「変な咳だったわね…… オミクロン、いいえデルタクロンじゃ無いでしょうね? 恐ろしいわね」

 そう多少ナーバスになっていると善悪が手にロボットっぽいおもちゃを持って玄関へと姿を現したのである。

「あ、受け取ってくれたのでござるな、ありがとうでござった、んじゃ早速始めるのでござる! 本堂ねん」

 そう言うとロボット一つだけを手にどんどん歩いて行ってしまう。

 後ろからついて来たアスタロトとバアルが届いた荷物を一個づつ持つ姿を見たコユキは、仕方なく残った一つをぞんざいに持ち上げて本堂に向かうのであった。

「なによ善悪っ! アタシに運ばせるなんて随分偉そうじゃないのよ! 説明求むっ! よっ!」

 本堂に入るなり悪態をつくコユキだったが、言われた善悪はノーダメージらしく、落ち着いた口調で答えた。

「へ? ああ、軽いでしょ、それ! やなら置いてくれば良かったのに、んな事より、僕チンは今こっちの超合金に全集中だったのでござるよ」

 ほう、どうやら持って来い、そう命令されたと捉えたのはコユキの被害妄想だったらしい、とかく自意識高すぎなんだよね……

 肩透かしを食らって仕方なく段ボールを下ろしたコユキの事など気にも留めずに、善悪は自分の経机の上に慎重な動作で超合金のロボットを安置するのであった。

「ふぅー、無事運び終えたのでござる、まずは重畳ちょうじょう、重畳っと」

 コユキが興味津々な表情を浮かべ、善悪に歩み寄りながら聞いた。

「なんなの? アンタこんな感じの奴いっぱい持ってるじゃないのよ? これ特別なのん? プレミア付きとか?」

 コユキの無神経な言葉を聞いた善悪は、心底がっかりだ…… もう死ねばいいのに…… そんな冷え切った表情だけを全力で前面に押し出しながら答えたのである。

「は? 何言ってんの? コユキ殿! 見て分かんないの? これザンボッ〇3でござるよ? 宇宙から逃れて来た一族が東京、諏訪すわ、そして我らが焼津やいづ、良い? 地元でしょ、! 静岡県、殊更ことさら大井川流域に暮らしている、今現在、日本中から怒られ捲ってる、大井川流域、志太榛原しだはいばら地区に生きる県民の誇りでござろ? もうっ! 今まで何を見て過ごして来たのやら、で、ござるっ! 僕チンの部屋にブルーレイが有るから今夜にでも見ておくのでござるよ! そして泣くが良い! 本当っにっ! 本当に馬鹿なんだから…… もうっ、バッカッ! てな感じでござるよっ!」

 いつに無く譲らない気満々の善悪の勢いに押されてしまったコユキは、強気だったトーンを下げて不動明王張りに興奮している善悪に言う。

「えっ、え、そ、そうなのん? ゴメンだけど…… アンタ忘れてるかもだけど、アタシって女の子じゃない? ロボットとか案外見た事無い訳なのよ、分かる? 夢見る少女はあんまり見ないでしょ? 鉄の悪魔を叩いて壊すっ! とか言う女子って居なかったよね? んだから善悪、その焼津のロボットの事、無知蒙昧むちもうまいなアタシに教えてくれない? 教えてクレメンス、なのよぉー」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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