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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
412.マジックスパイクノイズ

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

今回の話には、
『383.サイレント・トリートメント?』の内容が含まれております。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。
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 居間に戻った一同は、壁から引き抜いてきた地蔵の周りに集まって観察を行うのであった。

「うん、やっぱり特別変な依り代を使っている訳では無いな…… 恐らくアレクサンドロスの遺骸の一部だろう、親和性も高い…… 『馬鹿』ではないようだな」

 アスタロトの声にモラクスが答える。

「確かにおっしゃる通りでしょう、しかしそうなるとこの馬鹿さが理解できませんね、以前はこんな感じじゃない、それ所かむしろクレバー過ぎる位だったんですよスカンダは…… まるで別人のようです、何故こんな事が……」 

「判らんのか兄上、混沌カオスの手先たる闇がスカンダの内にて広がりつつあるのだ、ふふふ、深淵の闇か、面白い、刮目かつもくせよ! 闇すらも破壊する我が力の奔流を!」

「ちょっとシヴァ! 今真剣な話をしているから黙りなさいな! アンタの息子の事なのよ、全く」

 ここだっ! そう考えたシヴァが以前メモったセリフを披露したが、いつもと同様にラマシュトゥに怒られている、ナイスチャレンジ。

 チャレンジャーの横で腕を組んで考え続けていたアジ・ダハーカが口を開く。

「恐らく、私の術と同じように分身を何らかの装備として身に着けさせ、使役しているのでしょうね、しかも監視と支配だけでなく心酔と陶酔に喜悦まで織り込んだ正真正銘の代物でしょう」

 コユキがデザート(?)の肉まんから口を離して意見を述べる、んが、食べる事を中断して何かをすると言うのはコユキ的には大変珍しい事なのである。

「装備か…… スカンダ君いっぱい付けてるわねぇ、一体どれなんだろね?」

 アジ・ダハーカは顎に手を当てながら視線を一瞬アヴァドンに移してからコユキに戻して答えた。

「アヴァドンの『支配者バシリアス』で任意の行為、例えば静止などを命令すれば、優先度にいて上位に当たる制約用の装備品からスパイクノイズが発生する筈です、長兄の魔力感知で捉えられると思います」

「面白い、では吾輩の力で愚かな甥、彼奴きゃつを使役する忌まわしき呪縛の正体を白日の下に晒してくれん、クフフフ」

「イイヨ」

 アヴァドンはやる気に燃えているようだしオルクスも異論は無いようである。

「アジ、パズ、チョット、キテ」

 話し方はいつも通りつたなかったが、なにやらアジ・ダハーカとパズスを呼んで打ち合わせを始めるという、普段見せない真面目さまで見せていた、頼もしい。

 スパイクノイズが、正確にはマジックスパイクノイズと言うべきだろう、恐らく自らの術に対する浸食者、アヴァドンを襲うだろうと考え、守備として善悪が後ろに付き、万が一の回復役としてラマシュトゥが居間中いまじゅうを油断なく見回して、スカンダの真横には寄り添うように『反射リフレクション』発動済みのアスタロトが体育座りではあったが、緊張した表情を隠そうともしないのであった。

 距離を取る為に居間の端まで移動された座卓では、コユキが実験的に作り出したロシア風饅頭、所謂いわゆるピロシキを前に、今回の試みで余剰人員と判断されたコユキ、モラクス、シヴァとアフラ・マズダの七人が必要人員たちと同様の緊張を顔に浮かべているのであった。

 忠節のグローリアが誰に言うでもなく呟く。

「見た目はまんまカレーパンじゃがのう……」

 ルクスリアも全く同じ風情で呟いた。

「これにトナカイとイッカクの肉でしたっけ、入ってるんですよね、何故そんなものを……」

 インヴィディアが嗜めるたしなめる様に言う。

「なんでぇなんでぇ、ビビってんじゃねぇよ! 詰まる所、肉まんの鹿バージョン揚げ饅頭風味プラス角持ちのイルカ肉入りって事だろぉ? 何でもねぇじゃねーかぁ」

 コユキが説明を加えた。

「そうよ! 別に変な物入れてはいないんだからさぁ、名付けて『コユキの気紛れきまぐれピロシキ樺太からふと風』よ、気紛れだから千切りキャベツと鮭の炙り皮、日本人らしさを忘れない為にカツオの塩辛にヒキワリ納豆、香り付けに大量のワサビとクラッシュ干しシイタケだって入っているんだから美味しい筈よ! さあ、皆食べて頂戴! そして素直な感想を聞かせてねん!」

 自分は食べないようだ、ズルい……

 ニヤニヤしているコユキに対して、毒見役に選ばれた九人は黙りこくり誰一人動き出そうとはしていなかった。

 重苦しい沈黙を破ったのは、見た目は老婆中身は五十代の少女(? )のグローリア、コユキと善悪に対する忠誠心により徳、大徳へと昇華を果たした彼女であった。

「アタシが最初に行こうじゃないか…… 何しろ、ふっ! 『忠節』じゃからのぉ、行かない訳にはいかんじゃろうて……」

 元結婚詐欺師のアヴァリティアが悔しそうな表情を浮かべつつ、慈善の特性ゆえだろうか少し悲しそうに聞くのであった。

「ぐ、グローリア殿…… い、言い残す言葉を…… き、聞いておこう……」

 グローリアは皺塗れしわまみれの顔を美しく変じて答えたのであった。

「…… 後は頼む! それだけじゃぞぃ……」

 その言葉を聞いたモラクス、シヴァ、アフラ・マズダは噛み殺した嗚咽おえつを漏らすのであった……

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拙作をお読みいただきありがとうございました!



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