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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
324.エニグマ ① (挿絵あり)

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 ギイィィィ……

 静々と開いた扉の影から姿を表したのは、何とビックリ、ビックリ人間の最初から存在したような人物、『まさか!! こんなに大きい人間がいたとはっ!! アルプスの奥地で発見! 巨大人類に迫るっ!』的な、如何いかにも関君が喜んで飛びつきそうなネタ元だったのであった。

 四メートルを越える巨体に負けないほどの巨大な鎌、デスサイズを背負った色男は、コユキに向けて言い放ったのである。

『よく来た、丸々肥え太った当代の聖女よ…… ここに来た限りは、我が問い質すただす事に答えなければ、生きて出ることは叶わぬが…… その覚悟は有りや、はたまた無しや?』

 なるほど、先に言わないで後になって引き返せなくなった所で条件を課してくるパターンか……
 どいつもこいつもゲームだったらクソゲーとか言われても仕方がない仕様だな……

 ここで、『あ、そう言うことならいいです、覚悟とかして無かったんで…… んじゃあ帰りますね♪』的に可愛く切り抜けようとしても、絶対ダメとか言うパターンのやつだろう!
 判っている、故にコユキは溜め息と共に答えたのであろう。

「あるって言うしかないんでしょう? さっさと話を進めましょうよ! アンタ貞光なんでしょ? アタシはコユキ! 今世の聖女、真なる聖女コユキよ!」

「そしてこの私こそがかの魔王カイムである! 別名、燃え盛る火炎の中より全ての答えを告げる者だ! なはっ、相性最悪だなあぁ? 残念でした碓井さんっと♪」

「ちょっとカイムちゃんキョロロン」

「おっと、キョロロン! だぜっ!」

 心強い事この上ない、確かにカイムは暖炉の炎やオキズミの中から、真実や未来の出来事を人々に教えてくれる悪魔であることは有名ではある。
 碓井貞光の問いに答えることなど容易ではなかろうか?
 ましてやこの場には口喧嘩に絶対の自信を持つコユキも共にいるのである、勝利し生還する事は間違い無いと思われた。

 巨人の貞光は口元を歪める様に引き上げると自信たっぷりの様子で言い放ったのである。

『覚悟ありと言う事だな、ならば問おう! 朝は四本足、昼は――――』

「人間でしょ?」

『くっ! 何故この難問を、そんな簡単に!』

コユキは面倒臭そうに答えた。

「んなの今時子供だって即答するわよ? アンタちょっと古いんじゃないの? まあ、兎に角アンタの負けね、とっととアーティファクトになんなさいよ、お腹も空いて来たし……」

『第二問! ジャカジャンっ!』

 えぇー! 複数問あるなんて最初に言ってなかったくせに、どうやら碓井の邪悪さが発揮され始めたようである。
 コユキとカイムは揃ってジトッとした視線で抗議の意思を示しているが、当の本人は気にするでもなくニヤニヤ笑っていやがる。
 ライコー達仲間はもう諦めているのか無言のままであった。

『今度は難しいぞ! ここに一つのパンがあります、回りは食べる事が出来るのだがどうやっても真ん中は食べる事が出来ない! 何故でしょうか?』

「答えはドーナツとかだと思うけど、アンタその問題瑕疵かしがあるわよ」

コユキ即答。
 貞光はコユキの言葉に驚いたようだ。

「へ? か、瑕疵?」

「そうよ! パンとドーナツは全くの別物よ! パンはイースト発酵、一方ドーナツはベイキングパウダーを使ってるのよ? 揚げようが焼こうがこの違いは絶対なのよ? お菓子か主食かとか言うけどそこじゃないの、だからパンは何の味付けしなくてもイースト菌が焼けた香ばしさと味わいでそのまま食べられるのよ、対してドーナツは甘くしたりしないとどうしてもつまらない物になってしまうのよ…… あんた等に馴染みがあるとすれば白米ともち米の違いかしらね? 全然違うでしょ? 次機会があったら出題の仕方に気をつけるが良いわ!」

 流石コユキ、料理もしない(出来ない)癖に良く知っていたものである。
 貞光はと言うと、若草色の狩衣かりぎぬの中から帳面を取り出して一所懸命書き書きしている、多分今の薀蓄うんちくを書き留めているのであろう、上を目指すやる気を感じる。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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