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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
383.サイレント・トリートメント?

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 コユキは落ち込んだまま廊下を本堂に向かって歩きながら内心で少なからず感心していたのであった。

――――あの至近距離で他人の目も気にせず接吻し続けるなんて凄いじゃないの、んでも元夫婦だから普通なのかな? んな事無いわよね…… それにしても中々に頑固に無視し続けて来るじゃないのよ! クソゥ、負けてたまるかぁ~、あの兄妹弟きょうだい達ならぎょしやすし、な気がする! やってやるわよっ!

 ぎりぎりでモチベーションを保てているらしい、恐らく恋愛経験が皆無な辺りもライフゲージの減少率に関係しているのでは無いだろうか。

 最早隠そうともせず、ドスドスと足音を響かせて入っていった本堂では、あの兄妹弟きょうだい、スプラタ・マンユの面々が思い思いの時間を過ごしていた。

 ラマシュトゥは畳の上に寝転んで大量の羊皮紙に向かって一心不乱に魔方陣を書き込み続けているし、その横ではアジ・ダハーカが次々生み出す緑の竜小型バージョンを、パズスが登場した瞬間に鉄盾で弾いているが、多分訓練か何かなのだろう。

 更に向こうにはアヴァドンが編みぐるみを相手に何やらやっているのが見えた。

 近づいて行ったコユキの目には、自分作の編みぐるみ、マサヤ・カツミ・ナガチカの迷宮トリオを隊長にした合わせて四十五体の様々な生き物をモチーフにした魔核入りのパペット達が日体大も顔負けの見事な『集団行動』を繰り広げていたのであった。

 残った一体は青いズボンを穿いた緑のカエルであったが、指揮官のつもりだろうか、アヴァドンの蹂躙の掛け声に合わせて、偉そうにホイッスルを吹いてやがる。

 感心した物の、さらに先で壁に向かってモゴモゴ低い声で話している中二病、シヴァの事が気になったコユキはその場を立ち去ってシヴァのすぐ横に腰を下ろして耳を澄ませた。

「『まだだ、鎮まれ、くっ、何とか持ってくれよ……』あれぇ…… 何か違うなぁ~、やっぱこっちかな? 『ふふふ、深淵の闇か、面白い、刮目かつもくせよ! 闇すらも破壊する我が力の奔流を!』 おおぉ、結構いいじゃないかぁ~、よし、メモって置こう♪」

 うん、予想通りと言えば予想通りだったな、コユキは見てはいけない物を見た様な複雑な表情をしながら、本堂の真ん中に目を移すのであった。

 そこには何のつもりかオルクスとモラクスの二人が、真剣な顔をして向かい合い、安木節やすぎぶし口遊みくちずさみ乍らながらドジョウすくいを演じる姿があった。

 かなりの稽古を積んだのだろうか、中々の腕前のようだ。

 最後の辺りは理解不能であったが、大筋ではあるがこれがスプラタ・マンユのメンバーにとっての日常、又は当たり前な修練の景色なのであろう。

 初めて目にした仲間たちの姿に感銘を受けたのか、コユキは諦めたように口にするのであった。

「分かったわよ皆、アタシの負けよ、降参するわ! ほら、シヴァ君! アヴァドンも~! 負けたって言ってるじゃないのよ! もう無視しないでよぉ! ?」

 コユキが声を掛けても目の前で手を振っても、誰一人反応を返してくれない。

 それ所か皆自分たちの事に集中しているのか、それぞれが更に訓練の難易度を上げて行っているようだ。

 具体的にはオルクスとモラクスは互いに修正点を告げ合いテイク2を踊り始めているし、アヴァドンの所は歩行から駆け足に変わっている。

 パズスとアジ・ダハーカは、

「ウオォォォ!」 「グゥ、まだまだまだぁぁー!」

と、実戦さながらの攻防を始めていたし、シヴァも同様で、

「『この封印か、これは貴様の為に施しているのだ、強くなり過ぎてしまうのでな』良しっ! 採用だ! メモメモ」

と相変わらず、ラマシュトゥは書き疲れたのかヨダレを流しながら畳に突っ伏している。

 ここまでの他のメンバーは兎も角、コユキと善悪を親の様に慕っているスプラタ・マンユがここまでシカトし続けられる物であろうか?

「まさか、本当に皆アタシの事…… 見えてないし聞こえてないんじゃぁ……」

 コユキが呟いた瞬間に被せたようにシヴァが口にした、両手を広げ顔を僅かわずかに上向けて放たれた言葉は、まるでコユキに向けて告げられたかに見えた。

「『我の前に現れた瞬間、既に貴様の存在は亡き者となった、世界に因って否定されたのだ』うほっ! 今日は調子が良いぞ!」

 コユキは背筋が凍り憑く感覚を覚えて大声で騒ぎだすのであった。

「何でよぉ! 皆気が付いてよぉ! アタシはここよぉ、ここなのよぉアタシはぁ! オーイオイオイオイ! オーイオイオイオイ! イッヤアァァァァっ! 嫌よぉぅ! 独りぼっちは嫌なのよおぉぅ! オーイオイオイオイ、オーイオイオイ――――」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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