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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
665.力の根源

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

今回の話には、
『309.スキル名』の内容が含まれております。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。


 やり取りの中で名前が出てきたバアルが怪訝けげんな顔で聞いた。

「姉様兄様が消えない事は妾も嬉しいけどさぁ、そこまで享楽的になるほどの事があったのかい? 滅びを回避できる? 何でそう思ったのさ?」

 カーリーはまだ嬉しそうにほころんだ表情のままで答える。

「んふふ、アナタが言ったんですよバアル、天に帰る直前にね、『兄様さえ居れば、せめて真なる聖女コユキと聖魔騎士善悪が居てくれさえしたら、こんな徒手空拳としゅくうけんで挑む事は無かった物を』ってね、ちなみに続けたアスタロトの言葉はこうでした、『消滅したアートマンにすがってもせん無いことだ、今は命を捨てて星にじゅんじよう』と…… 最後に当時最強の魔神となっていたサタナキアが叫んだのです、『恐れるな! 我等はコユキと善悪から力を受け継いだのだ! 最期、その瞬間まで生命の光を輝かせるのだっ』とね…… 前の回では既に居なかった、コユキと善悪の生存、そして前の回で悪魔達のアドバイザーであった光影と良好な関係を築いている、これを聞いても私のヤッホォーがオーバー過ぎると思いますか? 智将ちしょうバアル?」

 幼女姿のバアルは顎に手を置いて黙り込み、アスタロトはいまだ再生途中でグズグズなサタナキアに目を向けるのであった。
 対してコユキは一層ハテナの色を濃くしながら呟くのである。

「アタシと善悪が居れば、か…… ルキフェルって一体…… 皆が期待しているルキフェルの能力って何なんだろうか?」

 横に並んだ善悪が呆然ぼうぜんとしながら同じ様な呟きを漏らしたのである。

「ルキフェル…… 通り名は『中性子星ニュートロンスター』か……」

 コユキがこの声に大声で喰い付いたのである。

「え? ニュートロンスター? って何なのよ? 善悪!」

「ええっとね、昔ルキフェルがオリジナルだった時に他の悪魔たちから呼ばれていた二つ名でござるよ? そう言われていたんだってよ」

「ニュートロン…… はっ! 中性子星…… そ、そうかっ!」

「な、何でござる? 何か判ったのでござるか?」

「う、うん、多分なんだけどさ――――」

 その後コユキが一所懸命早口で説明した内容は、周囲の悪魔や家族達、頼りの善悪にもほぼほぼ理解度ゼロの内容だったのである。
 かくいう私、観察者も話の半分、いいや全体的にチンプンカンプンである。
 リピートを繰り返した結果薄っすらと理解出来たと思う……

 多分、だが、ルキフェルは元々中性子星ニュートロンスターと自称していたが、恐らくクォーク星だったのではないか、という予想から始まっていた。

 中性子星より遥かに重量が大きいクォーク星であり、ストレンジ物質を含んでいたのでは、と仮定した上で、ルキフェル程の強大な魔力、又は生命力、別の言い方をすれば中性子量を持つ天体でありながら、重量崩壊をせずに個を保ち、さらには一柱の神、又は悪魔として堕天し、受肉し、アートマンとして存在し続けていると言う事は何らかの手段で自らを構成しているストレンジ・レットを制御しているのだ、とか何とか言っているようだ。

 また、しかしたらストレンジ・レット自体が強大な力の源泉なのかもしれない、とかも言っていたが難しすぎて良く判らなかったのでここでの詳しい説明は割愛せざる得ない事をご理解いただきたい。

 私同様、諦めてウンザリとした顔を浮かべた面々の前で尚、コユキは説明を続けていた。
 コユキは言う。

「だからストレンジ・レットって中性子星の内部に存在しているのよ! んでその周囲を囲んでいるのはハイペロン、所謂いわゆるバリオン、フェルミオンなのよ、中性子星でありながら崩壊を防いでいられるって事は、恐らくだけどΣシグマ崩壊とΛラムダ崩壊、それにΞグザイ崩壊をΩオメガ崩壊へと誘う事で相互依存的な関係を維持しているからなんじゃないかな? 良い? そもそもハイペロンて言うのはね、崩壊することを前提として――――」

 ふむ、わからん……

 ここに集った運命神も悪魔達も同様だったらしく揃って欠伸あくびを繰り返していたし、一部の恵体けいたい悪魔達に至ってはフンババから楽しい千本ノックを受けることに興じ始めている始末であった。

 頑張ってこの場に残っていた面々も面倒臭そうな顔でコユキに言う。
 まずはバアルであった。

「兎に角さ、光影に説明して貰おうよ! 難しい事を判り易く言ってくれる、それ位賢い人がいないと判らないってば、姉さまぁ」

「なっ! んだからさっきから言ってんじゃないのぉ! Ξグザイ粒子はカスケードなのよっ! だからね? Ωオメガの超電荷-2とバリオン数+1で――――」

 アスタロトがそっぽを向きながら言った。

「あーーーーー、もう良いよコユキっ! 後はみっちゃんに聞くからさぁっ! コユキって例えてくれないからなぁ、なぁ? これ以上説明するならコナンで言ってくれよ、それかポケモンで言ってぇ!」

「むむむむむぅー! 例えれば良いのね、えーっとぉ、そうだわ! いざって時だけじゃなくて江戸川少年が常に毛利さんの中に入って居て、と言ってもBL的な意味じゃなくてよ、そんで毛利さんが制御して謎解きを強制してるって所かしらね、どう? 駄目か…… じゃあねぇー、モンスターボウルがハイペロンで、捕まえたポケモンがストレンジ・レット、トレーナーがルキフェルって事よ、どうこれなら判ったでしょう? えー、これでも駄目なのー! じゃあ無理ね、諦めたわ……」


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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