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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
328.坂田公時

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「キンタロ、さん?」

『うむ…… お前たち二人はこの公時きんときが守って見せよう…… 仮にあるじに弓引く事になろうとも……』

「え、なんで? どうしてそこまでしてくれるの?」

『…………』

 再び黙ってしまった公時に代わって腹帯から碓井貞光うすいさだみつ揄うからかう様な声を発した。

『こいつはマザコン気味でな♪ 自分のお袋さんにそっくりなコユキ様を守りたいんじゃないかな? どうだ、図星だろ! ポロロン』

『違う、そんなんじゃない…… ただ、分かるんだ……』

「え? 何が、何が分かるの?」

驚いたコユキに仕方なさそうに答える公時。

『い、いや、まあ、あれだ、我々が滅して人々にまつられた後、最初に聖域まで訪ねて語り合ったのが今の主様、神とも呼ぶべき存在であったのだが…… 神とは言っても人々が崇め奉る神では無くてな…… 何と言うか…… もっと太古の果てから存在している物、そう、我々は全員でそう感じてつかえる事を決めたのだよ、それから九百年…… 只流れ行く季節の美しさに目を奪われていた訳ではない、我々とて木石ぼくせきでは無いのだからな! 鉄の車が走り、巨大な重量の鳥が世界を狭くしていった。 人々は通信、電離層による反射に気付いて無線通信による相互理解に笑顔を見せている。 窒素充填じゅうてん法だったか? 命をギリギリで堪えこらえさせ食べて問題ないレベルで生かさず殺さず、人間、いや人だけがこの世界の幸せを享受、いいや独占する様を見続けていたよ…… 自分と似た生命体が他の全てを犠牲にして幸福を満喫する、その、醜過ぎる姿をな…… お前らの食卓に姿を現す生き物の声はな…… 殺して、せめて殺してくださいぃ、生殺しはやめてぇ~なんだよ? フリーズドライも真空パックも窒素入れるのもな…… そんな、自分勝手な人々の中で、俺はお前を知った! 主様が『弾喰らい』の鉛毒を消して俺の前に連れてきた時、アイツはメッチャクチャ感謝していたよ、でもな、同時に怯え捲くっていたんだ…… 主様が消えた後、仕える様に命じられた俺の前でも、アイツは怯え続けていた…… だが、お前と相撲勝負をして負けた後のアイツ、『弾喰らい』の取った行動はどうだったか? 怖れながらも自分の希望、連れて行って欲しいとはっきりと自身の望みを口にしたのでは無かったか! それも直接負けた『弾喰らい』だけではなく、縛りの存在しない外の野生動物まで、全てがお前に心酔してしまったのだ、それも嬉しそうに…… その時俺は、ペランペランしながら思ったんだよ、お前にグシャリと握られながら思ったんだ…… 又来たか? お前が神なんだなって…… 主様に会った時と同じ、いいや、それ以上の衝撃を受けた! 俺はお前に付いて行くと決めた! こいつらとは違うんだ! 俺の、この公時の忠誠を受け取って欲しい! コユキ、真なる聖女、いいや我が神よ! どう? だめぇ?』

「え、えっと? ど、どうすれば……」

 ここまでの無口キャラは何処へやら、急に一杯喋った公時にコユキは分かり易くタジタジしている、公時が言葉を続けた。

『それに、コユキ? お前の体付き…… 他人とは思えないが? 若しかして坂田とか滝登タキノボリとか言う先祖はいないか?』

コユキはハッと顔を上げて公時に言うのであった。

「え? 何で知ってるのん? アタシのお母さん旧姓滝登さんだよぉ? 何か関係あんのぉ? 富山出身だから関係ないよねぇ?」

『ビンゴっ! 俺は最後の戦に負けて富山に落ち延びたのだ…… そこで一族の血と膂力りょりょくを引き継いだのが坂田一族、一族の食欲と無限捕食(ユニークスキル)を引き継いでくれたのが滝登の一族なんだ! えっとこう言えば解り易いかな? 『喰えば喰う程、強くなる一族』とな? どうだ! 違うか?』

「た、確かに…… 食べないと力が出ないじゃなくて…… 食べれば食べるほど力が無限に出てくるって感じてはいたけど…… んはっ! 確かっ! 善悪ん家のお婆ちゃんって、家のお母さんと同郷の滝登さんから嫁いで来たとか何とか…… 聞いたことがあるわよ、うん……」

『はははっ、ほら見ろ! この娘と対なる戦士は揃って俺の子孫だ! 腹回りでそうでは無いかと思っていたのである! んだから、俺は裏切る! こいつとその、善悪だったか? 子孫を護る事に決めたわぁぁ! オマイラは約束守ってあの老いぼれ、『オハバリ』に従っておれぃ! 俺はお山の大大将! んあ? 文句あるかテメーラ?』

「え? ええ? いいの? キンタロさ、いいやご先祖様ぁ! そんな簡単にぃ? 」

『良いに決まっているだろう! 俺の可愛い可愛い良く肥えた子孫、コユキよ! このご時勢、メタボとか何とか、樽ドル? は? 只のデブじゃねぇかぁぁ! の時代に、良くぞ我が一族の特性を守り続けてくれたな~、コレ以降は俺がオマイラ可愛い子孫を守ってやるぞぉ! 痩せ細ること等ぉ、今後は一切無しじゃあぁ!!!!』

「うあ!! 格好良い、格好良いよ! ご先祖様ぁぁ~! ここより永遠とわに…… だよぉ!」

 会話に取り残された四体のアーティファクトは揃って同じことを考えていたのである。

『『『『アホラシ』』』』

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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