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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
695.デイモス衝突の日

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 それから三日間、様々な事柄について、事細かな指示を出し続けていたコユキと善悪、時々ルキフェルの絆通信で、すっかり寝不足になってしまっていた残留組は、やけに静かな、不自然な静寂の中で其の朝を迎えたのであった。

 NASAが控えめながらも発表していた、デイモス衝突の朝であった。

 前の晩から、それまで騒がしくて、仲間達全員が辟易へきえきしていたコユキと善悪からのお小言、時々フォローを入れるルキフェルの声が消えている事には気が付いていた『聖女と愉快な仲間たち』メンバーと『六道りくどうの守護者』、『オニギリ友の会』、『抵抗者レジスタンス』の面々は、自然と幸福寺に集結し、境内のそこかしこに腰を降ろして、所在無さげに膝を抱えて、只々、空を見上げ続けているのであった。

 美雪や長短ナガチカは、何度と無くコユキや善悪に絆による通信を試みたのだが、その全ては無言、応答さえして貰えていなかったのである。

 昼過ぎ、集まった人々に饅頭を配っていたグラに対して、四桐シキリ鯛男タイオが発した言葉が切欠きっかけとなった。

「いやいや、グラちゃん! ピザ饅って言ったでしょ? これってカレー饅じゃないのぉ? しっかりしてよぉ、全く、おっちょこちょいなんだからぁ!」

「だ、黙るんだどぉ、鯛男ぉ! 何か聞こえるどぉーっ!」

「えっ?」

 この鯛男とグラの声に一斉に黙り込み、耳を澄ませた人々が『存在の絆』を介して聞いた音声は次の通りである……

『ムルムル! 前に出過ぎだっ! ええいっ! 馬鹿者めっ!』

『ザガンっ! 右翼に回れぇっ! ここは我に任せよっ!』

『フルカスっ! 守備に徹せよっ! 妾は一旦戻り態勢を整える、それまで守るのだぁっ!』

『は、はいっ! お願いしますっ!』

『こいつ、狂っているのではないのか? こちらの隙をつくとは…… くっ! 一体どうすればぁー』

『一旦下がるのよ! ネヴィラスっ! アタシが凍らせて見せるから、う、う、キャァアーっ!』

『下がれ、俺の背中に居れば良い、サルガタナス、この命、失う事になろうとも、お前だけは守ってみせるっ!』

『パズス様っ! 好きっぃ!』

『ああ、俺も好きだ、くっ! い、痛いなこれは……』

『オリアス、彼奴の回転を止めよっ! 天体活動を阻害するのだっ!』

『はい、止められませんでした、如何いたしますか、アスタロト様?』

『むうぅ!』

『特攻、特攻あるのみぃっ! 我に続けぇっ!』

『ちょ、ちょっと待てってストラスゥっ! 考え無しに飛び込んでもどうにもならないじゃないかぁ!』

『良いな我が子等よ、これより我等は修羅に入る、親に会ったら親をほふれ、子に出会えば子を屠れ、仏に会いては仏を屠れぇぃ! 妾に続けぇぇぇ! 死のうは一条、夢の又夢ぇー!』

『『『『『バアルこそ我等が光ぃー、と、突撃ぃぃぃぃ!』』』』』

『ゼパル! 一旦皆を下がらせるんだよっ! ガープの軍団に牽制させなっ!』

『うぃっ! あれ? 姐さん? カイムの野郎がいませんぜっ?』

『何っ?』

『うおおおぉぉぉぉー! わ、我に続けぇぇぇぇぇ! 魔獣の意気地を見せるのだぁぁぁっ! こ、怖がるなぁーあぁ! きょ、キョロローーーン!』

『『『『『『キョロローーーン!』』』』』』

『あ、あの馬鹿っ!』

『大丈夫です姐さん、ベレトが併走して居ますぅ!』

『逝くぞ! モラクス』

『ああ、兄者!』

『駄目だわ、兄様たちぃ! 一旦戻って策を練り直しましょうよ、ねっ? そうでしょおぉ!』

『むむむ』

『ならばラマシュトゥ、最前線でデイモスを食い止めているシヴァとアヴァドン、アジ・ダハーカを見捨てるというのか? そんな真似は…… 出来る筈が無かろうがっ!』

『ぐっ……』

『下がれ、見ているが良い、我が子たちよ…… 今こそ我、ルキフェルの真価を見せてくれんっ! 最強の魔神王の力しかと見よ! 行っくっぞっぉ! 本気の本気だぁぁぁぁっ! 『ムッシュムラムラァぁぁぁぁぁっ!』『コユキも本気の本気よぉぉぉぉっ! 君に届けぇ、この想いぃ!』いざ、玉砕ぃっっ!』

……………………

 どうやらピンチらしい…………
 しかし、全員力を尽くして何とかしようとしている、それだけは地上の面々も感じ取る事が出来ていた。

 揃って息を呑んで見つめる空には、色鮮やかな光が瞬いては消え、又瞬いては消え、悪魔達がその存在を消し続けているのでは無かろうか?
 そんな風に感じてしまう明滅が、昼夜の区別無く地上に届けられ続けていたのである。


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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