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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
506.人間の核

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 トシ子が唸るように呟いた。

「普通の人間に核が…… 馬鹿な……」

 アスタロトが真剣な顔をして丹波晃に向けて言う。

「人間から出て来たと言う『核』持って来たか? そうであれば見せてみよ」

「あ、ああ」

 丹波が前に進み出てアスタロトに手渡したのは、悪魔達の核より一回り小さな真紅の透明な石であった。

「ダイヤモンドではないな?」

「グラファイトでもないみたいだね?」

 アスタロトとバアルは揃って頭を捻っている、想像した物とは違っている様だ。

「炭素である事は間違いないのか?」

 光影が前に進み出て二人に聞き、二人の魔神は一様に頷いていた。

 光影は言葉を続けた。

「良ければ俺が調べてみようか? 研究室に持って行けば色々調べられるだろうし、どうだ?」

 この提案にはバアルが答えた。

「そうだね、恐らく、トカゲの件も牛の話も同じ原因だと思うから、そっちの核と鱗も調べてみてよ、大体の見当はついているけどね、コユキ姉様が言った通り命が多過ぎてるんだとは思うよ」

 光影は不思議そうな表情を浮かべながら幼女の姿のバアルに聞くのであった。

「命、命か…… なあバアルさん、命って一体何なんだろうな? 俺も子供時代にこの寺の爺さん達から魔力や法力については教わったり、実際に修行とかもつけられたんだが…… アンタは命って物に詳しそうだ、ここにいるメンバーは皆、命って奴に係る人間が多いだろう? 後は入れ物、身体にもなるらしいフィギュアの制作に携わる人達だ、無関係とは思えん、一つ教えてくれないだろうか?」

「ふーん、別に良いけどね、命の専門家、『魂の牧童ソウルシェパード』の仕事かもね! でも妾より半年も前に来たアスタから教えられていないのかな? 善悪兄様、コユキ姉様?」

 バアルの疑問にコユキが答える。

「前に一度地球の成り立ちとか、登場した命の変異の理由だとか、自分がどれ程格好良かったとか言う話はしてくれたけど、命イズムに関してはお婆ちゃんとリヅパさんが欠損の無い完璧な形で引き継いだとか位かな? ああ、それも正確にはモラクス君に聞いたんだったわ、この脳筋には何にも聞いてないかもしれないわん」

「ええっ! 我結構話してたつもりなんだけどぉ!」

 アスタロトの声に答えたのは善悪和尚である。

「やんぬるかな…… 伝えたつもり、やったつもり、相手に伝わっていなければそんな物、何の意味も無いのでござるよアスタ、評価を下すのは自分では無く周囲でござる、今更やったもん的な主張しても無駄でござる! 全てはもうっ、遅いのでござるよ…… 南無……」

「そうか…… 無念だ…… 南無……」

 揃って偉そうな観音帽子を装備している為、手を合わせて祈る姿は中々サマになっているが、アスタロトは善悪の真似をしてふざけているだけである。

 バアルは横に並んでいるコユキと善悪、アスタロトに対して話し掛けた。

「はぁ~、んじゃ良い機会だから妾が少し説明しておくね、兄様、姉様、アスタもみんなと一緒に聞くと良いよ」

 言われた三人は素直にバアルの向かいに回り、他のメンバーと同様に腰を下ろしたのであった。

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