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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
271.軍団編成 ①

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 居間に近付くと中からはしゃぐ声が聞こえてきた。

「あははは、それがんばれナガチカ、マサヤに負けるんじゃないわよぉ! あーヤッパ駄目かぁ、マサヤ強いわねー! 褒めて欲しいの? ヨシヨシ、偉い偉い!」

「コユキ様、カツミが妬いてるみたいでしてよ! 巴戦ともえせん醍醐味だいごみは連続勝負でしたわよね? 早く取りましょうよ!」

「むう、これで通算十二戦目なのじゃ、まるっきり三竦みさんすくみじゃのぅ、この闘いを制するのは果たしていずれか! 手に汗握るわい!」

 あの声はグローリアとルクスリアだろう。
 恐らくコユキの暇潰しに付き合ってくれているのだろう、誰にも等しく母のように優しく接する『母性』のルクスリアと、コユキと善悪に対して絶対的な忠誠を誓う『忠節』のグローリアならば当然の事だろう、と善悪は思うのであった。

 室内に入ると案の定、コユキと老婆姿のグローリア、ピンクの顔色をしたルクスリアが車座に座り、床に置かれた毛糸の丸い土俵? の中で一所懸命に相撲を取っている編みぐるみの勇姿を見つめている所であった。

「おおぉ! マサヤが勝ったわよ! 今回の寺内最高優勝はマサヤで決まりだわぁ!」

「まあ!」

「遂に決着かえ! うむ、ナガチカもカツミも頑張ったが、やはりマサヤが一番取り口に多様さが見られたからのう、この結果も納得できるわい」

 小さな編みぐるみ三体は、十日程前にコユキが訪ねて来た際に持ってきた、お手製の極細毛糸で編まれた物で、コユキ曰く、『狂乱の迷宮』のメインキャラクター三人をモデルにしているらしい。

 この三体に、善悪が保管していた、以前秋田県八郎潟はちろうがたでコユキがアヴァドンと共に退治して確保してきた、コカトリスとバジリスクの極小魔石の中から、透明度が高く比較的大き目の物を選んで入れた事で、元気に動き回り、それこそ、相撲のルールくらいなら覚えられる位、知性も持つ様になっていたのである。

 今もどうやら勝利者らしいマサヤ、少しワイルドな感じの男前が、力こぶを誇示する様にフフンとやっていて、反して理知的な大人の美男子カツミ、可愛らしい美少年のナガチカは、がっくりと肩を落として土俵脇に膝を落としていた、そう、生きているのであった。

「お待たせでござる、コユキ殿、これを召し上がれぇ、でござるよ! にしても、編みぐるみ、しっかり依り代として馴染んでいる様でござるなぁ?」

「ああ、善悪! そうなのよ、これってさ、アタシの編みぐるみ軍団プラス善悪のフィギュア軍団なんてのも夢じゃないわよね? 魔界で集めた赤い石も一杯あるんだし、ね? ねね?」

 善悪が座卓に置いたデコレーションケーキに目を奪われながらも将来の軍団編成に目を輝かせるコユキに善悪は答えた。

「んーどうであろ? 魔界の悪魔達、レッサーデーモン達は元々アスタの家来でござろ? あの石使ってもチームアスタなんじゃないでござらぬか?」

コユキにフォークを渡しながら言った。

「むうぅ、それはそうか…… んじゃぁ、この子達を入れて全部で四十六体って事か…… 軍団結成の夢はまだまだ遠いわね…… まあ、それはそれとして」

パンっ!

「いただきますっ!」

「はーいどうぞぉ、召し上がれ~!」

 善悪に渡されたフォークを手に、特大ケーキをモグモグ食べ始めるコユキ。
 取り分ける用の小皿や、ケーキナイフが無いのはここ幸福寺では当たり前の風景、コユキ一人用のおやつだからである。

「うひょぉ、なにこれメッチャ美味しいじゃないの! 善悪、アンタ洋菓子レベルまた上がったんじゃないのん、ビックリだわ! 一日で食べるの勿体無いわね、これ半分持って帰ろうかしら?」

コユキ大絶賛、善悪も嬉しそうに言う。

「おお、それは重畳ちょうじょう! 心配しなくても、いつでも幾つでも作ってあげるでござるよ、無理じゃなければいっぱい食べていくのでござる」

「うん、善悪、あんがとね、ナハハ」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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