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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
373.猫の餌椀

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

『私の名はゲルド、北欧に生を受けた巨人族の娘です、この国まで流れ着いた後、美しく勇気ある若者に出会い、この地に、いいえ、このやしろに取り憑いた悪魔でございます…… この地で出会い愛した彼の名はシュリンカー、自らのサイズを自由に変える事が出来る格別の戦士でございます…… 力強き魔王、いいえ、魔神よ、どうかお目こぼしくださいませ、私の恩寵おんちょうと、彼の椀、貴方に敵対する者どもに針で刺された痛みを与え続け…… えっと、イライラさせる効果を持つ、『一寸法師の針』と私の『巨人化の小槌こづち』を差し上げますわ…… どうか! どうか、お許しくださいませ~、恐らくですが…… ルキフェル様ぁ~!』

 コユキは苦笑いを浮かべながら可愛らしい手のひらサイズの飾り小槌こづちを拾い上げると優しい声で話し返す。

「なるほどね、アンタを身に着けて置くとどうなるの? まさか巨大化出来るとかじゃないわよね?」

小槌が少し転がって返事をする。

『はい、巨人化します、一日一回十数秒ですけど…… あ! 服とか破れちゃうんで、すみません……』

「ふむ、中々使い所を選ぶ能力でござるな、んでお椀はどこに? 一寸法師、シュリンカーでござったか、見当たらないでござるよ?」

『彼はもう言葉を発する事も、姿を現す事さえ出来ず、今は猫の餌椀えさわんとして社務所で使われています、事情を話して譲ってもらうしか……』

善悪が思わず唸った。

「事情って言ってもどう話せば…… むむむ?」

コユキは泰然自若たいぜんじじゃくとして言うのであった。

「考えるより産むが易しよ善悪、そのまま言ってみましょうよ! 最悪キ印だと思われて同情してお椀くれるかもよ? なはは、ガンバ♪」

「くっ!」

『すみません……』

 言いながら拝殿前へと歩き出したコユキは数人の人々がゴミや吸い殻を拾い集め、境内を清めている事に気が付くと口にしたのであった。

「おおっ、捨てる馬鹿いれば拾う佳人かじんありってヤツね、前言撤回、捨てたもんじゃないわね豊中市民も!」

 言っているとこちらへと真っ直ぐ向かってくる人影が……

 差袴さしこ狩衣かりぎぬ浅沓あさぐつ烏帽子えぼししゃくまで持った完全装備の神職らしき人、偉い人だろうか白衣びゃくい赤袴あかばかまの巫女さん二人を伴って、コユキの目の前まで来ると静々と口を開くのであった。

「ご尊顔を拝し歓喜の極みでございますルキフェル様、覚えておられないとは存じますが、アンドロマリウスでございます…… そちらの二柱、ゲルドとシュリンカーは豊穣の神、残念ながらこの飽食の時代にいて神格を維持するほどの信仰を得ることは叶わず、このような仕儀しぎとなり、お手を煩わせる事となってしまいました…… 心よりお詫びを申し上げます」

「おおっ、悪魔だったのでござるな、えっとアンドレマリノスだっけ?」

「アンドロマリウスでございます」

「なるほどね、んでね、アタシ達アンタに頼みがあるのよ、えと、アンコロ餅ウリマスちゃん!」

「はい、もうなんでも良いですよ」

「猫の餌椀貰いたいんだけどダメェ?」

 コユキの気持ち悪い猫なで声を聞いたアンコロ餅ウリマスは大き目のお椀と二つの魔核、赤い石を見せながら言った。

「ご用意して置きました、それとこちらが二人の魔核でございます、皆様と共にあれば再び悪魔としての命を取り戻し、さらなるお役に立つことでしょう、どうぞお持ちくださいませ」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

■□■ SpecialThanks!! ■□■
大阪府豊中市 上新田天神社(千里の天神さん)様
本編に書かせて頂く事を快く了承して下さいました。
本当にありがとうございます!
感謝の気持ちで一杯です!
『千里天神チャンネル』是非皆さんもご覧下さい♪



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