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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
315.チート!アーティファクト!

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

『コユキ! スリングじゃ! それで良い、充分じゃぞぇ!』

ライコーの声がいつも以上に明確に聞こえた、これも身に帯びた効果なのだろうか? コユキも素直に言う事を聞くのであった。

「『聖魔弾スリング』」

ズドドドドドドドドドドドドドド!!
パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ――――

「!! っ! スゴっ!」

『じゃろ?』

コユキが驚き、ライコーが偉そうに返すのも当然だろう、先程の鎌鼬ウインドバーストで十数匹しか倒せなかったのだが、下位互換のスリングで数十匹の蝙蝠を倒す事に成功していたのだから。

 続けてライコーが言葉を掛けて来た。

『綱の効果だけでこんな感じじゃぞえ? 麿の物理攻撃力倍化が加わったら更に倍! 都合四倍じゃからのぉ! どうじゃ? 試してみるか? お前の魔法+物理の技、鎌鼬ウインドバーストを、ぬふふ』

コユキは答える代わりにスキル名を叫ぶのである。

「『鎌鼬ウインドバースト』」

スパッスパッスパッスパッスパッスパッスパッスパッスパッパパパパパパパパパパ!!

 同じ技なのに今回は切れ味鋭く、空を覆った黒い塊を容易に切り裂き、気持ち良い陽光がコユキを照らすのであった。

ササササっ!

「んっ?」

 太陽の光が降り注いだ瞬間、不自然な移動音が聞こえてきて、コユキの研ぎ澄まされた耳がその音を捉えたのであった。

「加速(アクセル)」

木立の影をこそこそカサカサと移動している存在の前に移動したコユキは思わず口にしてしまったのである。

「うっわっ! キモっ!」

 無理も無い。
 木立の裏に回り込んで両手を広げその行動を妨げたコユキの前に有った物は……
 腰の辺りで無残に切り離された下半身、腸の断面も鮮やかなまま動き続けている数十の人間の半身であったのだから……

 コユキの頭の中に二つの声が響いた、最初の声は可愛らしい美少年風味、続いたのはヤマデ○さんポイ渋メの卜部うらべのものであった、二人が告げた言葉はこうである。

『あれ? おばさん! これ悪魔だよ? ほら良く見てよ! 人間の上半身に蝙蝠の翼、細長くて尖った吸血用の鋭い舌、その母体がこいつ等下半身なんだよ! えっと、昔討伐したよね? ねぇ季武すえたけ? こいつ何て言ったっけか?』

『こいつらは確か『マナナンガル』だな? 腰斬刑ようざんけいに処された罪人の魂をよこしまな存在に利用されているんだったか? んなあ、コユキちゃん! 死霊使いが関わってるみたいだぜ? タチが悪いぜ、弱点を攻めなきゃエンドレスループに嵌りはまり込んじゃうぜ! 何とかしないとな……』

「むうぅ」

『弱点かえ? 平安の御世では…… えっと、どうしたっけ? 確かぁ、そうじゃ! ニンニクと塩、更に灰を混ぜ合わせたものを切断面に塗るんじゃったのぉ!」

「ニンニクと塩と灰? どれも持ってないわよ! 他に無いの?」

『じゃったら、下半身を切り刻むことで上半身の動きが止まるのじゃったのうぅ! そうじゃそうじゃ! 丁度目の前じゃ! コユキよ、ユーやっちゃいなよ!』

コクリと頷いたコユキは落ち着き払った声で言うのであった。

「オートマタ!」

瞬間、ウインドバーストを止めてコユキの両手に戻って来た二本のかぎ棒は、主の下に戻れた嬉しさを主張するかのようにギラリと輝きを放つのであった。

コユキは呟く。

短刀ダガー

 ダガー? ツヴァイヘンダーの間違いじゃなくて?

 そう思われても仕方が無い。
 何しろ、以前より長く強靭そうな見た目を隠そうともしない二本のかぎ棒は、二メートルを優に超える長さで光彩を明滅させてヲォンヲォンさせ、キル! 的なヤバさを発散させ捲っていたのであった。

「加速(アクセル)!」

 姿を消したコユキは勿論、聖魔力で輝いていた刀身の瞬きすら視認させる事無く、次の瞬間マナナンガルの下半身の群れを通り過ぎたコユキの背後では、一体も残さずにバラバラ、所謂いわゆる細切れにされて崩れ落ちる数十体の肉片が散らばるのであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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