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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
266.人類、悉く、やらかす

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「むぅ……」

 少しの間黙っていたコユキが唸りをもらしたが、何も寝ていた訳では無く、内心でポクポクポクと解決策を探していたのであるが、どうやらいつまで待ってもチ~ンが来なかった事を表しているのだろう……

 本堂中が重苦しく陰鬱いんうつなムードに包まれる中、善悪の嗚咽が響き渡り、絶望の終末感がパなかった。
 不意に、無理してんな、そんなガンバんなよ、と突っ込まれてしまいそうな明るい声を出すアスタロト。

「ま、まあ、そんなに悲観的にならなくても良いのでは無いか? だってそうだろう? そもそも終末予言なんて奴は兄上がルキフェルだった頃に考えた最悪のシュミレーションだった筈だろ? 回避するためにニヴルヘイム、コキュートスで長い年月を思索に割いた兄上が指摘した、『予兆』が現れていないのならば、過度に心配する必要は無いのかも知れんぞ! 全て杞憂きゆうに終わる事だってあるだろう?」

 トシ子婆ちゃんもこの論に乗ったようだ。

「なるほどね、流石はアスタ、マイダーリンよね♪ ねえ、それでコユキや善悪がルキフェル時代に言ってた『予兆』ってどんな感じだったの?」

 忘れてしまったのだろう、当事者の筈のコユキは真剣な表情で聞き入っているし、善悪も泣き止みポカンと口を開いて注目していた。
 みんなの興味が集中した事で、アスタロトは自信を増した感じで堂々と言うのであった。

「ああ、幾つか聞いたんだが、大地震と大津波、大雪や集中豪雨なんかの異常気象、後は今迄とは明らかに規模が違う森林や草原火災、とかだな! そんな事が目立つようになると確実に破滅の第一段階に入ったと見て良いそうだ」

 コユキとトシ子、善悪は首をガクッと折り曲げて自分の足を見たまま固まっている。
 モラクスが落ち着いた声で聞き重ねる。

「第一段階と言う事はその後の兆候もあるんですよね?」

アスタロトは頷いた後説明を続ける。

「そうだ、破滅へは大きく分けて三つの段階があるそうだ、第二段階は世界的な疫病の蔓延、それに合わせて蝗害こうがい所謂いわゆるイナゴの大発生、飛蝗ひこう化だな」

 コユキ達三人はもう両手で頭を抱えて小さく震え出していたし、冷静に見えたモラクスも本堂の床に両手をついて動かなくなってしまっていた、所謂いわゆるorzってやつだ。

アスタロトは更に言ったのである。

「第三段階、まあ、最終段階になると、地上に魔獣が溢れ出し始めるらしい…… 魔物や悪魔じゃなくて魔獣だな。 それまでの常識が通用しない位にデカくて凶暴、その上魔力まで使って無差別に攻撃してくるようになったらいよいよ終わりだそうだ」

 トシ子と善悪は抜け殻のようにアボ~ンとしている、心なしか口からエクトプラズムっぽい物が浮き上がり今にも出て行ってしまいそうに見えた。
 モラクスなんか、うつ伏せに伏せてピクリとも動かない、所謂いわゆる土下寝ってやつである、アンダーバーと言っても良いだろう。

「なるほど、『弾喰らい』の事ね、順調に破滅のステップ踏んで来ちゃったって訳か~、なはは、まあ、しょうがないね! 取り合えずバアルよバアル! 順序通りサクサクッと滅亡回避してくわよ! こうしちゃいられないってね♪ 『聖女と愉快な仲間たち』再始動よ! 皆、よろしくね」

 コユキが急に復活して高らかに宣言すると、善悪の首に掛けられた漆黒の念珠アンラ・マンユが激しく輝く事で同意を返す。

「そ、そうでござる! 我輩も頑張るでござるよ、コユキ殿!」

「「「「「「「マラナ・タ!」」」」」」」

「「「「「「「御心のままに、マイマスター」」」」」」」

「ああ、やってやろうじゃないか、兄上! トシ子も力を貸してくれるか?」

「モチのロンよ、マイダーリン♪ ウランなんかにゃ負けないゾエ!」

 特段言葉を発する事は無かったが、半透明のゼパル、ベレト、カイムもバーバラガープちゃんと共に力強く頷いていた。
 誰も気がつかなかったが、アカベコラビスも小さく首を縦に振って答えていた。

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