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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
610.宅飲みマナー

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 トシ子がコユキの問いに答える。

「う、あ、あれじゃよ、ひ、一足先に二人でサタンに会いに行ってくるとか言って居った様なぁー? ほら、前の周回では一緒に戦った仲じゃろう? そこら辺の思い出話でもして戦う必要は無いとか何とかのう、は、話しておくとかじゃないかのう」

 コユキが返す、ハテナ顔である。

「前回の事? 覚えていないのに? そもそもオルクス君が居なかったら正確なクラックの位置が分からないと思うんだけどぉー、ね、オルクス君、あれ? あれれ!」

 善悪がコユキに聞いた。

「どうしたのでござる?」

「いつの間にかオルクス君がいないのよ、モラクス君も! かっしいなぁ、確かにここに入れといたんだけどなぁ!」

「そんな物みたいに…… って、僕チンのドテラと作務衣の中に居た五人、パズスやラマシュトゥ達まで居ないのでござるよ! 師匠、拾った時に落として来たんじゃないでござるか! 野良犬にでも連れ去られてしまっていたら事でござるよ! すぐ来た道を戻って探さなくっちゃ!」

「そ、そうよ! 野良犬は兎も角ロット神みたいにそこらで拾い食いでもしてたら大変じゃない! そもそもこのままはぐれたまんまじゃこっちがクラックの位置分かんないじゃ無いのよぉ!」

 トシ子は視線を二人と合わせないようにしながら答えるのであった。

「あー、ダイジョウブジャナイカノウー、ほれ、バアルとか今回でも顔見知りじゃし、オルクス達だってああ見えて強いからのう、クラックだってな、強い魔力が溢れておるんじゃったら近付けば判るわい、アタシやツミコの頃にはそんな便利なスキルなんて無くてもやって来たんじゃぞい、まあ、任して置けばええぞい」

「あのー、悪魔の大物だったら俺達知ってますんでぇ、ご案内させて貰いやすよ? 今日給料出たんでどうせ訪ねるつもりでしたし」

 なんと、虎大と竜也はサタンを知っているらしいでは無いか!

 給料日だから訪ねるとか言ってる所をかんがみると、所謂いわゆるダチ? バディ的な立ち位置なのかもしれない……

『給料日さ、久しぶりに家来て呑まね?』

っぽく、宅飲みの約束でもあるのでは無いだろうか? 

 コユキもそう判断したのだろう、虎大と竜也に向けて笑顔で話し掛けた。

「へぇーアンタ等がサタンとネンゴロになっていたとは驚きだわね、んだけど丁度良いわ、そこまで連れて行ってちょうだいよ、んでアタシと善悪、ってかルキフェルが吸収されに来たって伝えてくれない? 話が早くて助かるわぁ! アンタ等大金星よ、金星ぃっ!」

 善悪も同様に喜んでいる様である、しみじみとした感じで言うのであった。

「そうでござるなぁー、どこかへ消えてしまったと思った兄弟が、こうして拙者達の道をスムーズに導いてくれるとはなぁー、縁は奇な物乙な物、って奴でござろうなぁー、んじゃ早速連れてってぇー、でござる」

 コユキと善悪が喜んでいる一方、何故だろうかトシ子は軽く苦虫を噛み潰した感じであった。

 軽くなのでゴキブリやムカデでは無く、精々ゲジゲジかナナフシ、若しくはゲンゴロウ辺りを咀嚼した位の苦さ加減である。

 結構なグロ顔を無視してクールな見た目にバッテン傷の竜也が、顔の右半分がケロイド状の火傷跡に覆われている兄の虎大に呟くのであった。

「兄貴、約束の物を買ってかないと大魔王様またぞろ怒るんじゃないか?」

 虎大が頷きながら言う。

「あーそうだなぁー、大魔王も子供みたいなとこあっからなーぁ…… すいません姐さん、おやっさん、向かう前に土産を買いたいんですが、ちょっと寄り道してからでも良いですかねぇ?」

 なるほどね、久しぶりに集まって飲むとかだったら有りがちかもな。

『俺部屋提供するし何か良か気な映画探しとくから、酒とツマミ、あと夜食は任せるわ、ヨロ』

的な会話が交わされたことは想像に易い。

 コミュニケーションが苦手なコユキもそこら辺は理解したみたいであった、恐らく漫画かネットで見た事でも有ったのだろう。

 小声で善悪に聞くのであった。

「ねえ、善悪ぅ、アタシ達も何か持って行った方が良いかなぁ(ボソッ)」

 職業柄コミュニケーション能力を余儀なくされてきた善悪が答える。

「うん、二人が何を買うかを見て、被らない様なツマミにも家主のお菓子にもなる物を買うのでござるよ、それとは別に気楽な感じで且つちょっと高めのスイーツとかを買うのでござる、こっちは最初には出さないで置いて、飲み会が終わったタイミングで『あ、そう言えば忘れてたぁ、これも買って来たんだったぁ、どうかな? 皆、お腹に余力有りますかぁ?』的な感じでさり気無く勧めるのでござるよ、こうすれば後々の印象がガラッと変わって来るのでござるからして(ボソッ)」

「了解だわ(ボソッ)」

 ニヤリ×2

 こんなやり取りを経て、イラとルクスリアの息子兄弟に向き直った善悪は笑顔で言った。

「ご、ごほんっ! 勿論構わないのでござるよ! さあ参ろうではござらぬか! はてさて、どこで買うのかな? お魚屋さんかな、はたまたお肉屋さんや総菜屋さん、全部そろったスーパーかコンビニなのか、楽しみ過ぐるぅ―、でござるよぉ」

 竜也が答えた。

「はい、何、直ぐそこですんで…… 予約済みですからお待たせもしませんから、すいませんね」

 兄貴の虎大が続く。

「では参りやしょうか、ささっ姐さん、組長おやっさん、こちらへぇ」

 もう既に隠す気が全く無い感じで虎大は言うのであった、組長って何だよ? 反社かよっ、って話である。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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