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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
55.コンカチネイト

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  二人が同時に声を受け取った直後、オルクス君(絶対)は、その白く輝くオーラを小さく、大体一ミリ位であろうか? そこまで収縮させて、力無くコロコロと転がり出した。

 見ていると、先程まで自分が入っていた、野菜の星の怒れる戦士の場所まで辿り着くと、オーラを完全に消して動かなくなったのだ。

 この様子を見守った後、コユキが小さく呟いた。

「眠くなったんでしょうか? 疲れたのかな」

「ん、そうでござろ。 休ませてあげるのでござる」

 そう言って善悪は、優しくオルクス君(永遠)をソフビに納めると、上半身と下半身をコンカチネイトして、言葉を続けた。

「折角だから御本尊の横に連れて行くでござる。 拙者の部屋より広いし人の出入りも多い故、退屈しないでござろう」

 善悪は言いながら本堂へ向かい歩き出し、コユキも頷きながら無言でその後に続いた。

 本堂に着いた善悪は、迷わずに御本尊である大日如来だいにちにょらいの足元に向かって右側、弘法大師こうぼうだいしとの間にオルクス君(可愛い)の入ったソフビを置いて呟いた。

「ここに居れば、如来様と大師様が守ってくれるでござるよ」

 いつにも増して優しい声音こわねであった。

 その後、コユキも一緒に手を合わせ、如来様、大師様、加えて左にまつられた不動明王にもオルクス君(大好き)を守ってくれる様にお願いをした。

 祈り終え、立ち上がるとコユキが善悪に言った。

「先生! アタシのいないときに一人でオルクス君に無理させないで下さいよ。 ゆっくり休ませてあげてくださいね」

 善悪は如何いかにも心外そうな顔で、

「判っているでござる。 と言うよりも、基本的にオルクス君から語り掛けてこない限り、こちらから接触するのは止めにし申さぬか? 何となくまだ弱々しい感じがしたでござる」

と提案をした。

 これにはコユキも否はなかったようで大きく一つ頷いて善悪の意見に同意の声をあげた。

「そうですね。 そうしましょう。 オルクス君には私達しかいないんですもんね。 言ってみればアタシがお母さんで、先生がお父さんって事ですよね。 しっかり、ゆっくり見守って行きましょう」

 善悪も力強く宣言をした。

「ああ、そうでござるな。 これから二人で力を合わせてオルクス君を育てて行くでござる! 一つよろしくでござるよ!」

 言い終えてコユキを見つめた善悪は、ハッとした顔になって見る見る間に真っ赤になってしまった。

 それを見ていたコユキも一拍遅れてその顔を同じく真紅に染めて視線を床に落としモジモジし始めた。

 二人を見守るオルクス君(尊いたっとい)は無言でチ~ンと鎮座したままだ。

 気まずい空気が場を支配し掛けた、その時、本堂の柱時計が、ボゥォーンボゥォーンボゥォーンボゥォーン…… と九時の訪れを報せた。

 神の、いや仏の助けだったのだろう。 

 善悪が赤い顔をしたまま言った。

「お、おうっ、いつの間にかこんな時間でござる、送って行くでござるよ」

 コユキも救われた様な表情で返す、

「うん、ありがと。 です……」

 こうして、激動の一日は漸くようやく終わったかに見えた、見えたのだが……

 善悪に送り届けられたコユキは、いつもの様に家族の生存確認を終えると、窓を開け放し空気を入れ替えた後、流石に疲れたのか眠りに着く為に自室へと歩みを進めた。

 その時、突然もたらされる啓示。

 コユキは約束の場所へと猛ダッシュを始めるのだった。

 同じ頃、幸福寺へと帰り着いた善悪にも、同様の啓示が示されていた。

 啓示を受けた二人が、向かった場所はお手洗い、そう、粗挽き干しシイタケの神託が届いた瞬間であった。

 グルグルグルグルルルルゥゥゥ……

 凶悪な悪意が二人の戦士に容赦なく牙を剥いて唸り声を上げる。

 明日も忙しいのに…… と愚痴る二人の思惑をあざ笑うかのように、彼と彼女の戦いは夏の早起きの太陽が昇り始めるまで続いて行くのであった。

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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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