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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
350.地球の誕生 (挿絵あり)

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

「ごめんね、善悪、うちのチビたちがアスタの授業聞きたいんだってさ! いいかな? いいよね?」

 コユキが言った、善悪は思った、コユキちゃんから見たらリョウコさんもリエちゃんもまだ、子供の頃と同じチビなんだな、姉妹っていいなぁ、なんてゆるゆる思ったのである、だから即答したのであった。

「勿論でござろ? 二人ともようこそでござるよ! 今日はアスタがこの世界の真実について教えてくれる稀有けうな授業でござるから、絶対役に立つ話の筈でござるよぉぅ! ゆっくり過ごして欲しいのでござる! 来てくれてありがとうね、二人とも!」

 何かビリビリとした雷撃を消化しきれない感じで迸りほとばしりながら言う善悪であった、軽く殺せそうな電荷を帯びつつ言われた妹たちは歓迎の言葉に答えるのであった。

「うん、よしおちゃん! 今日は今まで以上に輝いて見えるよ、相変わらず素敵だねぇ!」

「なんかぁ、燃えてるってかぁ、マリマリしててぇ、格好いいよぉ、よしおちゃんっ!」

善悪はマリマリしながら答えたのであった。

「ああ、これね! 午前中に頭のおかしい奴らに帯電させられちゃってねぇ! 気にしないでね、ここからは待ちに待った、痛くない、辛くもない、苦しい事なんて微塵みじんもない、座学だからさっ! 楽しんでいってよおぉ!」

後ろからトシ子が声を掛ける。

「明日は今日の倍はやるぞい、何しろ頭のおかしい奴らじゃからのぉ」

「………………はい」

 直前までの明るさが消失した善悪の顔は土色に変わっていた。
 苦笑いを浮かべたコユキは土塊つちくれと化した善悪の肩をポンポンと叩きながら着席を促すしか出来なかったのであった。
 その他のメンバーも概ねおおむねそれぞれに合った席に着いた事を確認してアスタロト先生が座学の開始を宣言するのであった。

「では今からこの星の成り立ちと次々と訪れた創造神の歴史について説明する事としよう」

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 昨日のコユキによる『無限饅頭』説明会と違い、『聖女と愉快な仲間たち』に関わる殆どほとんどのメンバーが顔を揃えていた。

 コユキや善悪は勿論、アフラ・マズダの七人とスプラタ・マンユの七柱、広縁側には三頭の巨熊が並んで座り、その横には通訳だろう金ぴかカイム、続けて世界中の女子の心をとらえて離さないリボンが良く似合う白猫のキャラクター(仮に『規定』ちゃんと呼ぶことにしよう)が腰を下ろし、さらに隣には善悪の武者飾りだろうか、戦国時代に用いられた当世具足とうせいぐそくが迫力満点で床几しょうぎに腰かけていた、赤を基調に漆黒の面頬めんぽおの奥は闇のように暗く、中々に不気味であった。

 コユキ達の後ろにはトシ子とリョウコ、リエ、禿げた西欧女性のガープが並び、珍しく漆黒の念珠から姿を現したアンラ・マンユ七柱も彼らの背に立っていたのである。
 善悪の座布団の前には一応連れて来たのだろう、赤べこに身をやつしたラビスも静かに首を上下させていた。

 拍手が落ち着くのを待ってアスタロトは皆に問い掛けたのである。

「えー、今我々がいるこの星、地球の誕生について話せる者がいたら挙手して欲しい、どうだ」

この言葉に一早く応えたのはコユキ、ではなくて子持ちの主婦になっても元気いっぱいのリエであった。

「約四十六億年前に出来たんだよね、当時は熱かったって聞いたよ、月も同じ頃に出来たとかCSでやってるの見た事あるし!」

アスタロトに指名されたリエは自信満々で答えたのであった。

「ふむ、良く知ってるじゃないか、だが半分正解、半分不正解、いや不正確と言っておこう」

「えー」

「ははは、そうむくれるな、半分は正解だと言っただろう? これから正確に話していくぞ、いいか?
まずリエが言った四十六億年前に起こった事からだ、その時ある二つの惑星が衝突したんだ、二つの星は大きな方が『ガイア』、直径が半分程の小さな惑星は名を『テイア』と言ったんだ」

善悪がつい呟きを漏らしてしまう。

「その大きい方『ガイア』が地球って事でござるな、母なるガイアとか言うでござるし」

トシ子もつられて発言した。

「うん、アタシの通り名も『ガイア』じゃったしのう、大地って意味じゃろう? 善悪の言う通りじゃろうて」

アスタロトは二人に笑顔を見せながらコユキみたいに答えた、多分昨日覚えたのであろう。

「ブッブッー! 残念でしたー! ガイアとテイアの衝突でテイアは木っ端みじん、ガイアも地殻は勿論マントルにまで小さくない損傷を受けてしまったのです!」

コユキがハテナ顔で聞くのであった。

「ん、でも地球は地球でしょ? 同じじゃないの?」

「じゃあ順を追って説明するぞ? もともとガイアは燃え盛る煉獄れんごくの世界でな、超高温のガスとマグマが噴き出し捲りの非常に活動的な星だったんだ、大きさは今の地球の九割程度でな、そこに火星と同じ位のテイア、こちらは活性も納まっていた岩石惑星が突っ込んできたんだな、そうして粉々になったテイアはガイアの欠損部分を補うかのように取り込まれたんだ、一部の上空でガイアの重力圏、今で言う静止軌道に残された物を除いてな、やがて新たに取り込んだテイアの物質と融合したことで、ガイアは劇的な変化を遂げたんだ、具体的にはテイアの主成分だったケイ素が地表を覆い初期の大地が出来た! 同様にテイアに大量にあった酸素は地球の水素と反応し原初の海を作り上げた、命の一つすらない深く暗い海だ、想像してみるんだな、月による干満もない鏡のように静まり返った巨大な海を、多分不気味だったと思うぞ」

ゴクリ……

 誰かが喉を鳴らす小さな音が静寂の本堂の中に響いた、アスタロトの講義は続く。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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