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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
175.エピソード175 狂乱の迷宮

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 今回の話には、
『1.エピソードゼロ』 と、
『7.薄い本 (挿絵あり)』の内容が関わっています。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います^^
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 彼、彼女? 良く分からないが、インヴィディア、その人が見ていたコユキの記憶と精神は激しい感情に満ち溢れていたようだ。
 これは、私自身の経験、いや、原経験による物なので、コユキ本人の記憶や精神の残り香とは、残念ながらやはり違っているのであろうが……

 兎に角、彼、インヴィディアが数十年後に私、観察者を膝に抱きながら語ってくれた、我が祖母、コユキの嫉妬はこうであったのである。


 舞台はほんの数年前のものであった。
 自分のぐ下の可愛らしい妹、リョウコが彼氏、いや、生涯の伴侶に選んだ男性を我が家に連れてきた日は、しくも、末の妹、リエが最愛の彼を招いたあの日と同じ日であったのだ。

 各々別個に呼び寄せたのであれば、アレほどコユキが追い詰められ、狂う事は無かったかもしれない…… いや、無かったと断言できる!

 まず、すぐ下の妹、リョウコに手を引かれて現れたイケメンは、マサヤ、いやカツミっぽかったのである。(狂乱の迷宮、を参照)

「お姉さんですか、自分はリョウコさんとお付き合いをさせて頂いている者でございます! 以後、お見知りおきをっ! 」

 自衛官らしく、法令遵守を必要以上に気にしているであろうその姿は、自由奔放な(に見えた)マサヤよりも、自分を抑止する事を知った大人の魅力、カツミっぽかったのであった。
 まあ、劣化版ではあるが、カツミっぽい事はカツミっぽかったのである。

 一方、末の妹、綺麗系のリエが連れてきていた男はワイルドさを隠そうともしない泰然たいぜんたる態度で、反して、真人間が持ち得る事は、絶っ対無い悪党独特のヒールっぽい微笑を湛えて挨拶をしたのであった。

「へぇ…… リエのネエチャンにしては随分意外な印象だな? 俺は海外から色んなモンを買い付けして食い扶持くいぶちにしてっから、アンマ接点はねぇかもなぁ? まあ、よろしく頼むぜ、ねぇちゃん! 」

 そう言ったんだ! 言ってしまったのだった!
 その言葉を聞いた瞬間にコユキは思ったのだ、なんだよ!
 こっちがマサヤじゃんっ! マサヤの劣化版じゃねぇか? と。


 ここまで見て来たコユキの経験だけで充分だと判断した、嫉妬のインヴィディアは、自身満々に宣言したそうだ。

 今正にその宣言が私の前で行われるのであった。

「へへへっ! 聖女の嫉妬なんて言っても、凡人のそれと変わんねぇんだな! 安い、安すぎ、プライスダウンにもほどがアンぜぇ! 聖女様よぉ? 」

 そう告げた後、不意に少しだけ影を射した表情を浮かべ、勝手に話し始めたのであった。

「なあ? 他人が悪い? 自分より多くを持つ奴等が悪だ? 自分が欲しくて欲しくて堪んねぇモンを簡単に手に入れる奴がいるのが、口惜しい? そうか、悲しいなぁ、妹達の素敵な旦那たち、アタシにくれよ! って考えたんだろうなぁ、分かるぜ、分かる! 他にもたくさん持っている奴等がいるのに、自分だけは何一つも持つことが許されないなんてなぁ? 分かるぜ! 分かるよぉ! 俺も一緒なんだぜ! 俺もそうだったから、なっ! 口惜しいよな、そうさっ! そりゃ口惜しいに決まってるよな? んで、分かった上で陥る『嫉妬』って奴ぁ、テメェが思うほど安っぽくて、生易しいモンじゃぁねぇんだぜぃ? ちっと、教えてやっか、俺様、『嫉妬のインヴィディア』様が陥った『嫉妬』って奴をよおぉ! 」

 一人でいっぱい話した後、勝手に自身の経験した『嫉妬』の経験をコユキに対して流し込むと決めてしまった、困ったちゃんレベルの我が儘わがままな思念、『嫉妬のインヴィディア』であった。

 続けて、ヤカラ調でこれまた勝手に話し出したインヴィディアは、嫌になる位饒舌じょうぜつであった。

「おい、折角俺様がテメェに教えてやるってんだからよぉ、ちゃんと聞いとけ、そして見とけぇようぅ! 聖女様よ、お? おおぅ? 」

そうオラつくとインヴィディアはコユキに思念を送る為なのだろうか? 一転して言葉をしずめ、無言のままコユキを見つめ続けるのであった。

 流れ込んできたイメージをコユキは動かせぬ体で只々一身に受け止めるのであった。

 こちらは観察対象である、コユキ自身が受け取った想念なので、『経験』を使って私も同時に見てみる事とする。
 そこに表現された物は、一言で言えば、そう、異常なまでの不運……
 それ以外の言葉では、コユキには表現する事が出来ない、そんな物であった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!




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