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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
520.一蓮托生

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 コユキの言葉に頷く一同の中から辻井道夫が誰へともない言葉を告げる。

「これ急いだ方が良いですよね? 植物や昆虫、動物や魚なんかにも当てはまるんでしょう? 一早く世界中に広げるにはどうすれば良いんですかね? コユキさん?」

 これには問われたコユキでは無く善悪が答える。

「そうでござるなー、魔法を覚えた後二人の知り合いに教えると何段か下の人々から数千万円のお金が振り込まれる、とか言って仲間を募ったりすれば良いのでは無かろうか?」

「馬鹿ね善悪…… それネズミ講じゃないの…… それにその広げ方じゃ五十段目で五千五百億人人間が居なければ成り立たない計算になるじゃない? 世界人口の何倍なのよ、それ? んな話を信じる馬鹿はいないと思うわよ? 小学校義務教育なんだからさ!」

「えっ? でもネットワークビジネスとかって儲かると思っている人がやっているのでござろ? 馬鹿って結構いると思うのでござるが……」

「まあ! ビックリだわん! 都市伝説じゃ無いのん?」

「かもね、兎に角ネズミ講は違法でござる、となれば、地道に少しづつでも広げていくしかないでござろ? んじゃまずここにいる皆からでござるな! 手分けして魔法やスキルの使い方、自分の技の中で一番簡単な奴から試して行くのでござるよ! 僕チンは魔力の奪い方と与え方でござるよ! 取られたり与えられていく内に感覚が分かる人は向いてると思うから主戦力でござるよ、トカゲと牛とまだ生きてる患者さん達を救うのでござる! じゃ、まずは丹波氏、君からでござるよ、今から魔力を取ったり与えたり繰り返すでござるからしっかりと感じるのでござるよ!」

「は、はい! お願いします、き、緊張しますね」

 善悪に手を握られて、緊張のせいか表情が強張った丹波晃にコユキが言った。

「大丈夫よ晃君、最初は出し入れに抵抗感あるかも知れないけど、だんだん気持ち良くなって行くモノなのよきっと! 男同士だしね、グヘヘヘ(下品)」

「? は、はぁ?」

と、こんな感じで皆が魔法訓練を始めたのだが、ここで再び意外な才能を見せたのは引き籠り気味のヒロフミであった。

 何十年間もゲームや漫画ばかり読んでいたお陰だろう、ファンタジー的な世界観に一切疑問を持たずに達成したヒロフミは呟くのであった。

「『水撒きスプリンクラー』、お、出た出た! これは便利だぞ! 畑の水撒きが楽になるじゃないかぁ! む、むむむ、どうしたんだ、メッチャ疲れたんだが…… はあ、はあ」

 境内に向けて手から勢いよく散水していたヒロフミが息を乱して座り込み、そこにコユキが近付いて行き饅頭を渡しながら言った。

「それが魔力切れ、魔力が減った状態よ、お父さん! 皆も気を付けてね、魔力切れしたら一旦休んでカロリー摂取してね! 一定量以上減ると即死だからね、即死! ソック死しないように気を付けてねん!」


 こうしてこの日から三日間、全員仕事そっちのけにしての魔法訓練が開始されたのである。

 朝は早朝から茶糖家の畑の世話、日中は幸福寺の境内で売店の手伝い、夕食後は全員で映画を見たり楽しく談笑しながら、眠りにつく前の三十分くらいをホグワ〇ツ並みの厳しい訓練に費やすのであった。


 四日目の朝、善悪のエスディージーズの劣化版、言ってみればプラスプーン禁止レベルの魔力吸収スキルを身に付けた面々は、魔力お化けコユキからそれぞれ少しづつ吸収した魔力を手から水を滴らせる事で消費させて見せながらニヤリと悪そうな微笑みを浮かべたのである。

 頼もしい、この調子であれば二手に分かれてほうきに跨り、クィディ〇チに興じる日もそんなに遠くは無いのでは無かろうか?

 水量は個人差があり、ポタポタと滴らせる辻井から、高速高圧で射出させて木の枝位は切断できるようになった吹木悠亜まで様々であった。

 取り敢えず今後も連絡を取り合う事になった一同は、三々五々帰路に着いたのである。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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