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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
535.スプリング・エフェメラル

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 無言のメンバーの中から、コユキがいち早く正気を取り戻して叫んだ。

「皆! 黙ってる場合じゃないわよ? 後二回しかチャンスが無いんだから、ううん、今回で滅びの運命を回避するつもりで臨むのよ、次もあるなんて思っていたら絶対成功しないわよ! 不退転の覚悟で立ち向かいましょう! 諦めちゃダメ、絶対! でしょ!」

 バアルがこの声に答えて言う。

「そうだよ、今まではレグバとメット・カフー、それにカーリーだけで考えてやって来たのかい? それとも協力者とかも居たのかな? どうだい、フェイト・ラダ、前回は妾達とこうして話し合ったのかい? その前は? これだけの人数が揃っているんだ、この幸福寺には他にも理解者がいる、色々な分野の専門家達がね! 全員の知恵を出し合おうじゃないか! 今回絶対成功させるために!」

 アスタロトも否は無いようであった、故だろうか大声で言う。

「我も賛成! 今回で成功させようじゃないか! コユキや善悪を失う事は何とも言えない損失に他ならないが…… 負けるのは我慢ならんぞ! 皆で力を合わせて乗り越えて見せようでは無いかっ! どうだっ?」

 編みぐるみ達だけではなくこの場に集った全員が勇気凛凛な風情で両手を打ち付けながら答えたのである。

 フェイト・ラダは言った。

 ここまでは自分達だけで考え実行に移して来た、と……

 そして付け加えたのである、グッナイディアが有るのなら聞かせて欲しい、力を貸して欲しい、と……

 集まった面々は思い思いに自分の意見を返したのである。

 それは、話し合おう、語り尽くそう、言葉を尽くせばもっと上手く行くんじゃない? そんな内容に埋め尽くされていたのであった。  

 コユキが感動したように漏らした。

「み、みんな…… エグッ、エグッ、ありがとう、只ありがとう……」

 リエが大きな声で仕切り始めたのである。

「んじゃあ、ユキ姉、及び善悪ちゃんを救うための幸福寺、最重要ミーティングをここに開会いたしますうぅ! ねぇ、皆っ! どうすれば今回世界を救えるか、忌憚きたんない意見を聞かせてくれないかな? 出来ればユキ姉や善悪ちゃんも助けられる方向でだよぉ! ほらほら、どんどん意見を出してねぇー、グッス、グズグズ、アーンアンアンアン、誰か何か言ってよぉ、もうっ! 死なないでぇー、ユキ姉ぇっ! オーイオイオイオイ! オーイオイオイオイィ、だようぅぅー!」

 リョウコが続けた。

「コユキ、お姉ちゃん! アタシは世界なんかどうでも良いよぉ! そんな事の為にコユキを失いたくはないからさっぁ! んなのどうでも良いじゃんねぇ? 死なないで…… ねえ、今までみたく一緒に過ごして行こうよぉ、グッス、グスグス、エーン、エンエーンエーン、やだよコユキ、お姉ちゃん…… 短くてもみんなで一緒に死んだ方が良いよぉー! ね、そうしよ」

 魂の叫びなんだろうな……

 いつも割と無口っぽいリョウコが言うと説得力が段違いであった。

 黙りこくった善悪の瞳を見つめた後、コユキは泣き叫んでいる二人の妹に言うのであった。

「ありがとうね、リエ、リョウコ…… でも大丈夫だよ、アタシはアンタ等よりズット強いからね! 今は世界中の生き物全部の事を考えなくちゃいけないわ、お姉ちゃんに任しておきなさい! アンタ等は自分と子供達、旦那さんとか、家族の事だけ考えていれば良いのよぉ! 分かるでしょ! ここはアタシと善悪が何とかするから心配しないでねっ! その気持ちだけで十分なのよ、分かったね! んじゃ、フェイトちゃん! 過去のチャレンジ内容を皆に教えてクレメンス! 話してヨロロン!」

 フェイトは過去の失敗例、何とか世界を滅びから救おうとした経験と、やっぱりダメで、リセットし続けてきた話を語って聞かせるのであった。

「ええ、では最初にお話しなければなりませんね…… 三回前の出来事を…… あの時時間を遡及そきゅうした我々が最初に思ったのが、自分達だけではダメだ、新しい神達に救いを求めよう! この一事だけしかありませんでした……」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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