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トゥバ族に会いに①【真冬のモンゴル紀行】


深夜の名古屋某所でのことである。

いつものように友人とあぁでもないこうでもないと酩酊しながらとりとめのない議論をしていた時に、文字通りノリで決まった1人モンゴリアへの旅。

労働者階級の自分は金はなかったが即断即決であった。

2020年は自分にとって、ちいとばかし人生レベルのやばい年になる。

国内からの最後の旅、楽しむ要素は捨てて自分をボッコボコのスッコバキにやったろかナって。

まぁ、要は自己投資ですな。


情報収集にいそしむ日々が始まる。

友人たちに、

"ゴビ砂漠にいったら語尾にゴビがつくようになるのか検証しに行ってくるゴビ〜"

などとヘラヘラ触れ回ってはいたが、いまいちピンとくる旅先がない。

ウランバートルは何もない街とのことであるし。
(何もない上、唯一市内観光できた日が元日だったため、コンビニとバーガーキング以外どこも閉まっていて、ひたすら煙草をふかして唾を路上にスピットして、それが凍りつくのを見届けて時間を過ごす惰性を発揮していた)

そんな中、自分の琴線に触れたのが"トゥバ族"という民族。

モンゴリア北部とラシャの国境付近、雪山と針葉樹林が広がる凍てついた土地タイガ地帯で、トナカイを放牧しながら人知れず暮らしているという。

時代と国家の波に揉まれながら、エクストリームな環境でトナカイと共に逞しく生きる遊牧民族


でらイケとるがな。


旅先は決まった。彼らに会いに行こう。

脳内に"いい日旅立ち"のサビが流れ、
歌詞の一部を"地球"と置き換えた気持ち悪い鼻歌を下宿先にて放つ。 

友人に旅の計画を伝えたら、


"それは地球やわ"

とオカモト0.01くらい薄っっっぺらい返事が返ってきた。
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到着ゲートを出た瞬間から早速、高純度のモンゴリアを身体に浴びる。

朝青龍級(というか朝青龍)のモンゴリアン4,5人に囲まれ"Taxi??Taxi??"と客引きにあう。

メルボルンのナイトクラブで黒人にメンチを切られた時のような、こいつらには敵わん...という無力感を振り切り一服のため外に出る。

鼻毛からコーラをグラスに注いだような音がたつ。

気温は-30℃。

鼻毛って凍るんや。。。

体験したことのない自然現象と寒さに高揚する。

燻らせる紫煙が想像を絶する寒さによってさらに大きな煙となり、夜空へ拡散してゆく。

今、モンゴリアにいるのだ。
空港前の喫煙スペースで1人噛み締める。

しかし尋常ならざる寒さ。
カラータイマーが鳴りだしたため煙草の火をそそくさと消し中へ戻る。

しつこくつきまとってきたタクシーの客引きの中で、イチバン朝青龍な朝青龍にウランバートル市内まで運んでもらった。

旅の幕開けは思ってたより濃ゆ〜い。


翌日、カンボジアで学んだ交渉術を駆使し(ドラッグジャンキーみたいにアヘ顔で接するのが一つのコツです)、3000トゥグルグ(120円くらい)で市内中心部から離れたバスターミナルへタクシーで向かう。

トゥバ族が住むツァガヌールという地の拠点になるムルンへ行くためである。

血だらけのアル中が車内にゲットインしてくるというオーパがあったが、バスは時間通り発車した。

バスドライバー、ナイスです。

首根っこ掴んで外にポイッ。

ラム肉はこうも人に筋力を与えるのか。

朝青龍や白鵬が氷山の一角だったと思い知らされる。

バス車内は年末で帰省するであろうモンゴリアンでいっぱい。

家族と会えるからか、嬉しそうな表情をしたモンゴリアン達を観察したり、これからのことへ想像を膨らませとったら意外と20時間すんなり。

人は自分のことを"勇気あるね"と囃し立てるけれども、実のところ自分はただの無計画で無茶な野郎でして。

ムルンに着いてからトゥバ族に会いに行くまで、出発までに少し学んだモンゴリア語だけでいったろうと。(モンゴリアは英語話せる人が少ない)

結局、初の実戦がネイティブスピーカーなもんで全く太刀打ちできなかったっす。

そんなわけで、ムルンに着いて少し途方に暮れていた時。

後ろに座っていたという女性2人組に声を掛けられる。

「あなたは英語を話しますか。」

「はい、話します。」

「あなたはモンゴル人に見えなかったもので。あなたは旅人ですか。」

「はい、旅人です。」

「私たちはフブスグル湖という景勝地に行く。よかったら一緒にどうですか。」

「いいえ、私はトゥバ族に会いに行くのです。お誘いどうもセンキュー。」

「じゃあトゥバ族に一緒に会いに行きましょう。」

一瞬、最後まで1人旅を貫くという考えがヨギーニューウェーブスる。

しかしトゥバ族への最短距離という点を考慮すると、どっちの選択肢がいいだろうか。


かくして、フィリピーナとモンゴリアン女性が仲間に加わったのであります。(加えてもらった) .



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